第49話 首輪付きの自由
俺はホテルに戻され、
もう一泊することになった。
「んでもって、お前らなぁ。」
ホテルで待っていたのは、
ロボットたちだった。
「ソウジヲシマス!」
「分かったから、
先に風呂行って飯食わせろ!
しかも、
お前昨日キレイにしたヤツじゃねぇかよ!
昨日やったヤツはお預けだ!」
俺はロボットの群れをかき分けながら、
風呂場へ向かう。
つっても、あの風呂なんだよな。
俺の記憶にある風呂がいい。
さすが風呂桶もシャワーもないからな。
我慢してあの三十秒を味わう。
これは感染症対策だとわかってても、
キツすぎる。
俺はフラフラになりながら、バスローブを着た。
「カバンにある服出して着替えよう。
今ある服は洗濯しなきゃな。
洗濯はどうするんだ?」
俺が部屋に戻ると、
配膳ロボットたちが机一杯に食事を持ってきていた。
昨日のヌガーもあれば、ゼリーもある。
見知らぬフレークやドリンクもあるな。
デストピア飯だが、
ちょっと楽しみだ。
「飯、運んでくれてありがとう。
さっそくいただこうか。」
俺はカバンからジッポライターのような端末を取り出し、
席に着いた。
とりあえず、ドリンクを試そう。
「……とろみ飲料だな。
誤飲防止か。
喉ごしは良くないが、味は旨い。
なんかの出汁だな。
スープだ、コレ。」
この端末は情報端末だった。
ドリンクを傾けながら色々操作してみると、
バネロのように映像がいくつか身体の周囲に浮かび上がった。
「液晶なし。
空中に浮かぶ表示フレーム。
憧れるぅ。」
次はフレークを試そう。
「……食感はいいな。
サクサクしてる。
味は旨いけど、素朴。
赤ん坊が食う白いせんべいみてぇ。」
端末は使用者が決めたパスワードでロックされていた。
カバンから一緒にパクった紙巻きタバコを持ってくる。
「存在を忘れてて、良く調べてなかったからな。
コレ、タバコじゃないのか?
……分からんから、置いとこ。
パスワードは、
『PassWord』……っと。
開いたわ。
無用心なヤツめ。」
情報端末を適当に動かし続けると、
なんとなく使い方が分かってきた。
空中に浮かぶ表示フレームを指で振れるとアクティブになる。
操作は指でなぞったり叩いたりすればいい。
「ライターにしか見えなかったわ。
これはバラさず使わせて貰おう。」
まだ通信は生きてる。
前世のタブレット端末みたいに、
契約者死亡で止められる可能性はある。
「集められるだけ情報を集めよう。
ただ、デマとか誤解には気を付けなきゃな。」
俺はヌガーを片手に端末を操作する。
「やっぱり『境界』は強い地場の範囲か。
『オメガ』たらなんたらがまだ生きてるから、
日によって変わるみたいだし。」
地図を見ると、
『境界』がリアルタイムで赤い範囲として表示される。
この赤い範囲が常に動いている。
「やっぱり流行りの化粧品だの服だの、
前世の感じは残ってるな。
……アダルトサイトがユリユリしてらぁ。
まぁ、そうだろうとも。」
女性同士の恋愛事情に詳しくはないが、
俺の夢のためにそう言うパターンの性事情は詳しく調べた。
男女どんなパターンでも重要なのは、
肌感、体温、心音、呼吸音、体臭。
この五つをリアルに作らなければ、
性交渉中本能的に拒絶される。
具体的に言えば、
オモチャを使ってる感じになる。
顔とかスタイルはこの五つの次だ。
前世ではこの五つのハードルがかなり高い。
イロモノとして好む人はあれど、
それ以外の人もターゲットにするなら大事だ。
「コイツらの整備をしてて、
使えそうな技術がいくつかあったし。
早く作り始めたいね。」
俺がゼリーを自分の方へ引き寄せていると、
足元のロボットたちがざわめく。
急かしてるようだ。
足をつつくなって。
「このゼリー食ったら整備してやるから、
もうちょっと待ってくれ。」
ロボットたちは納得したのか、
俺の前に列を作って待ち始めた。
「配膳くん、コーヒーもお願いね。
あ、お前、昨日の整備でいたな?
傷で分かるわ。
お前はまた今度だ。
つーか、コーヒー持ってきてくれよ。」
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