☆エピローグ もういくつ寝ると☆


 夜の七時に差し掛かった頃、亜栖羽からの、スマフォのコールが鳴った。

「はいっ、もしもし亜栖羽ちゃんっ?」

『もしもし オジサ~ン♪』

「ホ…」

 亜栖羽の明るい声に、無事に帰ったと、心の底からホっとする。

『あ、GOさんっ、メリー・クリスマスっす!』

『福生様…めりぃ・くりすますに御座います…』

 スマフォの画面には、イヤリングとネックレスを着けている亜栖羽の他に、仲良しのミッキー嬢と桃嬢も映っていた。

「二人とも、メリー・クリスマス♪ パーティー、楽しんでる?」

『はいっ♪ 今日から冬休みですしっ♪』

『開放感で いっぱいです…♪』

 三人は今、亜栖羽の部屋でクリスマス&冬休み突入パーティーをしているのだと、亜栖羽からは先に聞いている。

 今夜は三人で亜栖羽の部屋へ泊まり、後はこのまま、いわゆるパジャマ・パーティーへとなだれ込むらしい。

(亜栖羽ちゃんのパジャマ…♡)

 とか想像をすると、強面鬼面(こわもてきめん)が、まただらしなく蕩けて崩れる。

『あ、GOさんっ、聞きましたっすっ♪』

「? なに?」

『亜栖羽さんへ…イヤリングとネックレスを、プレゼントされたそうな…うふふ♡』

「え、あ、ぅん…♡」

『えへへ~♡』

 亜栖羽と育郎の関係を知っている、親友の二人なので、亜栖羽も話したのだろう。

『GOさんっ、センス良いっすよね~っ! ハッキリ言ってビックリですっ!』

『とある男優様いわく…殿方が女性へ下着をプレゼントされるのは…着せる為でなく脱がせる為なのだとか…はふぅ…♡』

 裏表の無い感想を述べるミッキー嬢と、やはり妄想を捗らせる桃嬢だ。

「そ、それよりもみんな…これから気温が下がるから、風邪 引かないようにね」

『『『は~い♡』♪』♪』

 パーティーの邪魔になるのも申し訳ないので、育郎が通話を終えようとしたら、亜栖羽が呼び止める。

『あ、オジサン♪ 来週って、もうお正月ですよね~♪』

「ああ、そうだよね。早いよねぇ」

『それで なんですけど~♪ みんなで初詣で~♪ に行くんですけど~、オジサン、お時間 取れますか~?』

「初詣で…っ!」

 聞いた瞬間に、亜栖羽の振り袖姿が頭を占めた。

(…亜栖羽ちゃんの振り袖姿…どれ程までにも愛らしい 和風天使…天女様になるのかなぁ…♪ きっとキラキラ愛らしくて…日本に生まれた幸運を神様仏様に感謝してもしたり無いくらいの――」

『GOさん、妄想が言葉になってるっす』

「――ハっ!」

『福生様の頭の中では…振り袖姿の亜栖羽さんを、帯くるくる~と…はふぅ…♡』

「いっいやっ、まだしてませんっ! ぁ…っ!」

『そんなに素直にっ! GOさんっ、流石っす♪』

『えへへ~♪』

 という会話を暫く楽しんで、七時半を過ぎた頃に、通話を終えた。

「亜栖羽ちゃんたち、楽しそうで良かった♪」

 人生初の、家族以外の女性へのクリスマス・プレゼントと、お誕生日プレゼント。

 亜栖羽が風邪を引いて驚いたり心配したりもしたけれど、いつもの元気な笑顔で、心の底から幸福感を感じた年末。

 ベランダから空を見上げると、年の瀬の黒い空は、薄白い雲が静かに流れている。

「…もうすぐ、来年かぁ」

 年が明けたら、亜栖羽たちと初詣で。

 でもその前に、今年最後の一週間を、亜栖羽ともっと楽しみたい。

 それに、なにより。

「あ、亜栖羽ちゃんが…大勢の前で、キスしてくれた…っ♡」

 そう想うと、冷たい冬の夜風でさえ、育郎の巨体を吹き抜けると温風になる程の、深い喜びであった――。


      ~「好きじゃ無くって愛してる! ~年末編!~」 終わり~

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好きじゃなくって愛してる! ~クリスマス編!~ 八乃前 陣 @lacoon

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