第二の人生

あらすじ

第二の人生（だいにのじんせい）

中野恵太（なかのけいた）＆アルト

中野恵太、三十五歳。かつては全日本ファイナリストとして名を馳せた社交ダンサー。だがある大会中、パートナーが重傷を負う事故を起こし、彼の踊り手としての人生は唐突に終わりを告げた。それ以来、音楽を聴くと体が硬直するトラウマに悩まされ、ダンス界を去った彼は、今は郊外の工場で淡々と日々を生きていた。

そんな灰色の日常の中、ふとした雨宿りで入った古びたビルの一室から、かすかなワルツの旋律が聞こえる。誘われるように扉を開けた先で、彼は一人の女性と出会う――名をアルト。元舞台女優で、事故により片耳を失い、光を失ったように見えた彼女は、しかし踊ることで生きようとしていた。彼女は言う。「私と組まない？　“第二の人生”って、言葉があるでしょう？」

反発しながらも惹かれ合うふたり。踊りの再出発は、恵太にとっても、アルトにとっても、心の再生の旅だった。最初はまともにステップすら踏めなかった恵太が、アルトのまっすぐな情熱に動かされ、やがて再び音楽に心を委ねるようになっていく。

やがて彼らの前に立ちはだかるのは、かつて恵太とペアを組んでいたインストラクター・高瀬玲奈。彼女との因縁、過去の自分との葛藤、そして再び挑む全国大会。ふたりは世界レベルのコーチ・ミハイルの厳しい指導のもと、己の限界と向き合っていく。

本作は、過去を背負うふたりが、社交ダンスという芸術を通じて自分自身を取り戻していく物語である。ただの再起ではない。これは「愛とは何か」「信じるとは何か」を問う、人間の再生の物語である。

かつてすべてを失ったふたりが、心と身体を通して新たな道を切り拓いていく――。

そう、これは「第二の人生」なのだ。