第19話 竜宮城へ
ジンベエザメに乗って高速で移動してきたおかげで、青年を乗せて竜宮城へ向かう亀の背中を視界に捉えることができた。
「あ、見つけた!」
「急いで追いかけよう」
カリンはシャボンを操作して竜宮城の方へと移動しようとする。しかし竜宮城への接近を拒むように海流が働いていて、思うように進めないようだ。
「ぐぬぬ…かなりきついね。モモも手伝ってよ」
「ジンベエザメ!俺たちを運んでくれ!」
再びジンベエザメに指示を出し、頭で押して竜宮城の方へ運んでもらう。こうして俺たちはガラスの箱の目の前まで来ることができた。
「さてこれはどうやって入ればいいのかな」
「ジンベエザメに突っ込んでもらうか」
「ダメに決まってるでしょ!カニ使いが、誘拐された人たちがここにいるって言ってたんだから」
ジンベエザメ頼りはもう通じないみたいだ。というかそもそもジンベエザメとの繋がりがなぜかもう切れている。ジンベエザメは俺たちの元から離れて竜宮城の上へ泳いでいってしまった。
おかしいな。鮫だったらもっと長時間持続できるはずなんだが、魔力や体長が大きいと効果が薄れるのだろうか。まだ自分の能力にも分からないことが多い。
「じゃあどうやって入ろうか。そもそもさっきの亀とかどうやって入ったんだ。ガラスを解除して入れるにしても、それじゃあ海水も大量に流れ込んじゃうよな」
「ねえモモ。あれが門ってことはないかな」
カリンに服を引っ張られた俺は、彼女が指しているものを目にした。このガラスの壁に巨大ウツボが埋め込まれている。さっきのジンベエザメ程ではないが、全長10メートルはあり、噛まれたら一撃でシャボンが割れて俺たちが海の藻屑になるだけの脅威はある。それが門だと?
「何を言ってるの、あなたは」
「あ、可哀そうな人を見る目してる!ちゃんと理由があるんだって。ほらあのウツボ、よく見ると鏡の中にまで胴体が続いているでしょ。そしてガラスの向こう側にももう一つの顔があるんだよ」
「ホントだ。珍妙な生き物だな」
このウツボは一つの胴体の両端に顔が一つずつついているようだ。
「それでなんでこれが門なの」
「鈍いなぁ。やっぱモモはまだお子様だね。このウツボの体内を通ってガラスの壁を出入りするってことでしょ」
「どっちがお子様だ!」
城の出入りにウツボの体内を通る必要があるなんて、どう考えても設計ミスだろ!と思ったが、他に門らしきものも見当たらないので、試しにウツボに
この口からカリンのシャボンを食べさせると、こちらのウツボは口を閉じた。そして今度はガラスの向こう側のウツボが口を開け、そこからシャボン玉が無事にできてた。
「ほら見なよ!言った通りでしょ」
「マジか…」
どうやらカリンの奇想天外な推理が当たっていたようだ。ということで今度は俺たちがウツボの体内を通って、無事に竜宮城の中へ入ることに成功した。体内は真っ暗で良く見えなかったし、シャボンのおかげで匂いとかもしなかった。知りたいとも思わないが。
内側のウツボの口から出ると、カリンはシャボンを解除して俺たちは砂の地面に降り立った。わざわざガラスで隔離しているだけあって、やはりこの中には空気が満たされているようだ。普通の扉では開けた時に海水が流れ込んできてしまうので、わざわざ双頭ウツボを門にしているのだろう。
「面白い体験ができたねぇ。そしてここが魔女の館…」
カリンが目を丸くして正面の竜宮城を見上げている。一体いつ誰の手によってこんな大きな城が作られたのか謎だが、その神秘さにロマンを感じる。この中は水がないのに、まるで海中かの如く魚たちは空を泳いでいる。魔女退治じゃなければ、とても楽しい観光になっただろう。
茨の魔女の時のような禍々しいオーラを感じる。やはりここには魔女がいる。
「とにかく先を急ごう。見張りとかに見つかっても面倒だから。犬、さっきの亀と青年の匂いを追跡して」
犬は正面玄関に向かって歩き出す。
「正面から入るのか」
「じゃあ開けちゃおうか」
正面扉は俺たちの身長の数倍の高さがある両開きの扉なので、俺とカリンは「せーの」の掛け声で片方ずつ押して門を開けた。
浜辺で会った亀と目が合う。
「「「・・・」」」
突然の遭遇に全員が沈黙する。
「えーとこれは…」
俺が声を出すと、亀がゆっくりと口を開けた。ビー玉攻撃が飛んできた。
「うわあ!」
「あっぶねえ!」
戦闘が開始した。とっさに俺たちはこの攻撃をなんとか回避と防御をする。弾丸の精密性は低く、回避の先読みといったテクニックを使うことはできないようだが、その数が厄介だ。避けても何発かは当たってしまい、その数発には”纏い”を使ってガードしても、痣が残るくらいのダメージがある。これは長引くと厄介だぞ。
「ちょっと!調子に乗らないでよね」
カリンがシャボン玉を展開した。層が分厚く強度が高いシャボン玉だ。
ビー玉はこれを貫通することなく弾かれて、撃った亀自身に跳ね返っていった。亀がダメージで怯む。
「いいぞカリン!」
「へっへーん。もう見切っちゃったよー」
カリンのシャボン玉でこのビー玉攻撃を攻略できたかに思えた。しかし亀には他の手があった。
亀の甲羅の一部が開き、そこから六角形のガラス板が浮遊して現れる。それが手裏剣のように回転して飛んできて、カリンがビー玉を弾いたシャボン玉をいとも容易く割ってしまった。カリンの髪の先端が少し切り落とされる。
「おっと。鋭利なのは苦手なんですよね」
「犬!俺たちでやるぞ」
カリンのシャボンでは相性が悪いようなので、今度は俺と犬で攻撃をしかける。しかし甲羅から無数に出てきたガラス板が亀の周囲に展開されてバリアとなり、犬の噛みつきも俺の
俺たちの攻撃で亀裂は入ったが、次の一手を繰り出す前に亀のビー玉がそれを阻止しにくる。
「攻守ともに優秀な能力だな」
「やっぱこれだけ強いってことは魔女の式神だよね。浜辺の男の人のことも心配だし、とりあえず逃げながら魔女や誘拐された人の捜索をしよう」
こうして俺たちは門番のガラス手裏剣攻撃を避けて亀の後ろに回り込むと、そのまま竜宮城の奥へと侵入する。
「式神がこれだけ強いなら、魔女本体に別の能力があったとしてもそこまで強くないと思う。そこをつくよ」
「本体を狙う訳か。了解」
亀は他の魚たちと同じように空を泳いで俺達を追ってきている。ビー玉がカリンに効かないと学んだのか、ガラス手裏剣を飛ばしてくる。だがコントロールは悪く、ほとんどが壁や柱にぶつかって粉々に砕け散っている。
「あの破片が目に入ったら痛そうだね」
「俺だったら普通に戦線離脱させてもらうかも」
廊下を走り回り、そこら中の部屋の中を見たが一向に人の姿はない。カリンも困惑しているようだ。
「あれ?カニ男はここに人を送ったって言ってたんだけどな。なんで誰もいないんだ」
「嘘をついている様子はなかったんだけどな」
部屋には飲食物や脱がれた上着など、以前まで人がいた痕跡はある。だが人自体はどこにも見当たらないのだ。
では誘拐された2000人以上の人間はどこに消えたのだろうか。
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