第六章 パロディ、諧謔、冗談、何でもありで何にもないとお思いのあなたへ
第22話 パロディの奇妙なミステリー
―――――
「そう、この事件全体に通底する根本的原理。つまりこの物語のテーマについて探ろうということだ。
そしてそれは先ほどの私の語りによって具象化された。
『パロディ』。
この事件全体が複数の原典を持つパロディなのははじめから示されていた。
リンフォンに始まり――被疑者たちの名前、
そして『外れないが当たらない予言』。
私はこの事件を『神格』による介入現象として推定した。そしてそれを示すように先程、赤い彗星というパロディと共に無貌の神・ニャルラトホテプの姿をちらつかせた。
だが、考えても見たまえよ。『何でもありの偉大なる神格』が『予言』を外すかな?
相手が『ニャルラトホテプ』という人類を弄び、試練を与え、時として理不尽な仕打ちを行う強大な存在が想定されるからこそ、この『至らなさ』についてより一層私は不信感を抱く」
「では一体何だというのです? 結局のところ論理は低迷を見せているではないですか」
「そこで、先程の『パロディ』が活きてくる。パロディなのさ。これは。
予言もニャルラトホテプも今のJOJOも。茶化すために示された物語上の諧謔表現。正に今現在『現実は物語のパロディ』と化している。そして犯人はそのパロディを利用し事件を結末へと進めている」
「人が死んでいるというのに『諧謔表現』というのは甚だ疑問です。そういう非倫理的なものを冗談とするのは『笑えない冗談』というものでは」
「
倫理性は全く問題ではない。何故ならこれは
それだからこそ現状の現象……。無数に表れる並行世界のJOJOクンがギチギチに部屋に詰まっている状況は『パロディ』として説明がつくのだ。そしてこれから発生する事象もね」
「……。それで、パロディだから一体何だというのですか? 諧謔表現で人が死ぬことは分かりました。だからと言って今後の対策やこの事件の犯人に対しての情報は」
法水はその言葉を遮り、答える。
「今まで、出てきたパロディの多くは、例外はあれど『クトゥルフ神話』『ガンダム』『JOJO』『リンフォン』とある程度の『元』が分かり、そしてこれらに絞られている。次に起こる事象は、つまりこれらのいずれかに当てはまる筈なのだよ。
クトゥルフ神話の如く狂気に苛まれる被害者たち、ガンダムの暗示、リンフォンによって起きる超常現象、JOJOのスタンド攻撃。
そして、今、正に次なる『スタンド攻撃』が始まろうというのだよ!」
「「「なに!? 次なる『スタンド攻撃』!?」」」
支倉は周りを見回して言う。
「で、でもそれらしい気配はどこにも……。それに
「いや、まだです。予言は『
法水が更に割って入り、語る。
「筋の良い考察をしているところ悪いが、そこで第三の考察が効いてくるのだよ。
まあ一部第二の考察に引っ張られているところはあるが、そもそもこの状況が『幻覚である』という考察だ」
「この荒唐無稽な状況が幻覚であることは別段否定はしませんが、今までの考察を全てひっくり返しているように思えます、何故第二の考察に引っ張られていると?」
「ジョジョの奇妙な冒険第六部ストーンオーシャン『面会人その⑥』……。ジョンガリ・Aによるスタンド攻撃を退けたかに思えた徐倫だったが、矛盾する事象がつぎつぎに起こることでそれが現実でないことを悟り目覚める話……。それのパロディということさ。ついでに言えば予言の内容も第六部終盤における空条承太郎が向かう末路と類似している」
「既に矛盾というか非現実的状況が……。あ」
全員の視界が溶け出すように歪む。
まさに全員が幻覚を見ていたかのように、世界の輪郭が溶けてゆき、壊れていく。白い液体によって造られていた世界は終焉した。
そして、目を覚ました各々は
「が……。ま……」
法水はその犯人と思しき姿を認めるも、その完全な輪郭を把握することは叶わず、無慈悲なナイフがそこより投げ込まれる。
「うぐお……! おおおおおおお!」
法水を含め、被疑者たち、警官たちは全員白く重い謎の物体に圧され身動きをなかなか取れずにいた。その中で一人、真っ先に目覚めた
「ヘヴィすぎるぜ……! この状況。このままでは間に合わない……!」
彼は、その状況を認めると真っ先に自らを盾として法水を守ろうと動く。
だが
「こ、こいつは!?」
そして時は動き出す。
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