第2章:俺だけの迷子星

蓮が逃げ出して以来、悠は蓮の姿を校内で見かけることが少なくなった。



教室にもあまり顔を出さず、屋上にもいない。


悠は蓮が完全に自分を避けているのだと理解した。



蓮の支離滅裂な告白を思い出しては、悠は苦笑するが、同時に、その言葉の裏にあった蓮の切実な感情を思い出し、胸がざわついた。



数日後、悠は図書室で勉強をしていた。ふと顔を上げると、窓の外に、蓮が一人、ベンチに座っているのが見えた。



蓮はいつも通り気だるげな様子だが、どこか所在なさげだ。



悠は意を決して図書室を出て、蓮のもとへ向かった。




悠が近づくと、蓮は驚いたように顔を上げた。


まるで獲物を見つけた獣のように、その鋭い視線が悠を捉える。


蓮はすぐに目を逸らそうとしたが、悠はそれを許さなかった。



「黒崎くん、なんで逃げたの?」




悠の言葉に、蓮は顔をしかめる。そして、小さな声で呟いた。



「…うるせえ」


「何がうるさいの?あの言葉のこと?」


悠がそう言うと、蓮の顔がさらに赤くなる。彼は観念したように悠をまっすぐ見つめ、そして、まるで絞り出すように言った。



「あああ、悠!おい、白石!お前!お前さ、なんでだ!俺の頭ん中、お前でグルグル、もう、宇宙飛行士が迷子になった遊園地みてえだ!お前がいねえと、俺の心臓が、カブトムシの標本になっちまう!なんでだ!なんでお前は、俺の、俺の…洗濯機じゃなくて、俺の、俺の、魂の、ひび割れた茶碗なんだよ!」



その言葉は、前回と同じく支離滅裂で、感情が爆発していた。蓮の目に、再び「やってしまった」というパニックの色が浮かぶ。


悠はまたしても呆然とするが、その言葉の混乱ぶりに、少しだけ笑みがこぼれた。


蓮は、自分の感情をコントロールできず、またもや頭を抱え、今度こそ顔を真っ赤にして、何も言わずに悠の前から走り去った。



悠は、蓮の背中が遠ざかるのを、今度は少しだけ穏やかな気持ちで見送った。


わけがわからない言葉の羅列。


それでも、蓮が自分に対して尋常ではないほど強く感情を揺さぶられていることは、嫌でも伝わってくる。


蓮は、僕が好きなのか。



その考えが頭に浮かんだ時、悠の胸もまた、密かに熱を帯び始めた。

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