悪魔令嬢は聖女じゃなくて妖精姫でした 籠みたいな王宮から逃亡したいわたしは蝶々になって大空へ飛び立ちます 行く先々で伝説を残すかも? 旅の軌跡は花の魔法陣 もふもふにゃんこ侍女付き
26てふてふ🦋わたしは世間知らずな度胸の持ち主?
26てふてふ🦋わたしは世間知らずな度胸の持ち主?
昨晩からラソワちゃんのお家ですっかりお世話になってしまってる。
ラソワちゃんのお父さんでもあるシルク織物工房トカーニの工房長を始め、お母さんやお祖父様、お祖母様に妹さんたちご家族総出で歓迎してくれた。
くわわ畑の熊さん話がひと足早く伝わっていたらしい。
ここでも聖女様じゃないからと、さらにかいつまんで説明することに。
おおむね納得はしてくれた。
わたしの妖精の衣が熊さんの攻撃で破れてしまったわけだけど、絹糸で補修してくれたのはお父さんだった。
お手を煩わせてしまってすいません。
皆さん、妖精の衣に大興奮なご様子で、補修する役割を取り合うほどだった。
誰が補修するかなかなか決まらないので、夢で見たじゃんけんを提案したら一発で決定。
勝ったお父さんはうれし泣き。
ラソワちゃんは号泣して、負けたご家族は血の涙を流す勢いで悔しがってた。
じゃんけんはもしかしたら危険な勝敗の決定方法かもしれない。
終わった補修の具合を見てラソワちゃんがかわいくないって嘆いていた。
技術はすごいんだろうけど、たしかにシンプルでかわいさはないよね。
わたしの一存でラソワちゃんを指名した方が良かったかな?
大不況で厳しいだろうに盛大なご馳走の山だった。
山の幸だけに幸せ。
熊ネギーや山アスパラガススとか山菜。
いろんな種類のきのこに胡桃などなど。
猪や鹿に川魚や山鳥のお肉。
ハーブや高級品のバターや黒胡椒を使った郷土料理の数々。
おいしかったあ。
お肉が好きなにゃんこ獣人のチャチャなんて大喜びだった。
タンポポンのハチミツ漬けなんてものもあってウルちゃんの喜びようがすごかった。
ハチミツはウルちゃんが行商したメリーハニーだったしうれしいよね。
それにしても本物の熊さんじゃないのにウルちゃんはほんとにハチミツが好きなんだなあ。
ウルちゃんのかぶってる熊さん耳フードもまるで喜んでるようだったよ。
「ここで蚕が育ってるのかあ」
そんなわけで朝ごはんをいただいた後、蚕を育てている洞窟内に到着してた。
洞窟の中はあたたかさを感じるくらいなのに、なんだか寒気を感じるくらいに陰鬱としている。
みんなはそんな風には感じたりしてないのかな?
一緒にいるのはラソワちゃんにウルちゃんにチャチャ。
朝一番にきたこともあって作業する人はまだいない。
そして熊さん親子がずっとついてくるのよ。
洞窟は広いからこの子たちも入ってこれたんだけどね、なぜかは分からないけど洞窟の中の匂いを嗅いでいるのかくんくんと鼻をひくつかせている。
特に悪さをするわけでもないので放っておいた。
「うわお。
ほんのり明るくてほんとにあったかいね。
これなら岩盤浴とかできそう」
岩を触るとかなりあったかい。
洞窟の中はたしかにあったかくてじめっとしていて風もほんのり感じる。
洞窟の岩肌にあちこち生えている苔が柔らかい光を放っていた。
うん。夢で行った温泉施設の岩盤浴みたい。
あとでラソワちゃんに教えてみよう。
「これは魔法の灯りではにゃいのですにゃ。
とっても不思議ですのにゃ〜」
「うちも入らせてもらうんは初めてやんなあ。
チャチャちゃんは見ただけで分かるやんなあ」
「うにゃ。
チャチャは魔法の感知もできますのにゃ〜」
かわいいにゃんこひげをぴんぴん引っ張ってる。
そこで感知するのかな?
「妖精の苔ってわたしたちは言ってるけどね。
おかげで火を使わなくてもいいから安全なんだ。
万一、繭に燃え移ったら大変だからねー」
ラソワちゃんが指し示すところを見る。
まぶしと言われる養蚕用具、格子状に小さく仕切られた小部屋に入って蚕が糸を吐き出しながら繭作りを始めてる。
湿気が強いとはいえ、これに火がついたらあっという間に燃えちゃいそう。
妖精の苔のおかげで安心だ。
まぶしに移動される前の蚕は、卵からかえったばかりの小さいのから、大きく成長したのまで段階ごとに大きな箱の中でむしゃむしゃとくわわの葉を食べている。
羽化したカイコガが産卵するためのスペースもあった。
蚕さんたちには感謝の気持ちでいっぱいです!
「妖精の苔?
妖精の糸とかもあったみたいだし、妖精に縁がある場所なのかな?」
「よくぞ聞いてくれました!
ここはちょっとした伝説があってさ。
わたしたちには聖地なんだ♪」
「おお。伝説に聖地なんてとってもすごそうだね!」
「すごいんだよー。
ここには妖精が住んでいたっていう伝説があるんだ。
ほら、シルが着てるその衣は妖精の糸でできてるって言ったでしょ」
「うん。メリーおばあちゃんも言ってた」
「でしょ。
昔々、そのまた昔。ヴィラ王国が建国される前のこと。
とても悪ーい魔のものが凶悪な魔獣とともに、ここに住む人々を苦しめていました。
困った人たちは英雄の登場を待ち望んでいました。
そこに現れた一人の英雄と聖なる癒しの力を持った聖女様!
この二人は悪い魔のものから民を守るために、精霊様の御使いである妖精王と妖精姫に力を借りることにしたのです!
妖精の助力を得た二人は見事に悪い魔のものを封印することに成功!
結ばれた二人はヴィラ王国を興して1000年の繁栄を築いたとさ!
知ってるでしょ?」
「おとぎ話かな?
それは初めて聞いたかも?
妖精の助力なんてあるんだね」
「あれ? そうなの?
妖精が聖剣とか聖獣とか祝福を授けて色々助けてくれるんだって。
うちの集落ならみんな知ってるんだけど」
「女神様じゃなくて精霊様なんだね?」
「そうだよー。
外の人たちは女神様を信仰してるんだよねー。
このあたりは精霊様を崇めてるのが当たり前かな」
ふむふむ。
ここでは女神様じゃなくて精霊様が定着してるんだね。
王宮も庭園もその頃の建造物で、王宮庭園の中心にある女神像も元は精霊様を模したもの。
そういえば入学パーティーでもルイが1000年の繁栄を約束するとか言ってたなあ。
「うにゃ〜。
地方に残る伝承が素敵ですのにゃ〜」
「伝承だけじゃないよ。
なにを隠そう!
妖精の助力の一つというのが妖精の糸のことなんだ!
ここに住んでいた妖精からもらった聖なる糸で、わたしのご先祖様が聖女様の衣を作ったの。
それがシルク織物工房トカーニの始まりなんだよー」
「おおー。それはロマンだねえ。
妖精なんてすごいのがいるんだね!」
ん? 妖精? 精霊様の御使い?
一人の英雄と聖なる癒しの力を持った聖女様?
あれ? どっかで見たような?
大昔の危機がいままた起きているんじゃなかったっけ?
ハッピーエンドになるためのとっても重要な存在。
聖女様はその存在を追いかける。
えーとー。もしかして?
ルイとソフィアちゃんが追いかけることになる存在はここに住んでいたっていう妖精のことかな?
「うはは〜。
うちも前にラソワちゃんから聞くまで知らんかったやんなあ。
メリーばあちゃんにも聞いてみたことあるけど大体あってるらしいやんなあ」
「妖精さんはもういないのかな?
ほんとにいるなら大不況をなんとかするために聖女のソフィアちゃんに手を貸して欲しいよね?」
「おじいちゃんたちにも聞いたことがあるけど、ずっと前からいないみたい。
正直ほんとにいたっていう証拠はないのー。
でも妖精の苔とかあるし、きっといたんだよ!
妖精の糸で刺繍がしてみたい!」
「ラソワちゃんはほんとに刺繍が好きなんだね」
「もちろんだよー!」
昨晩、寝る前にラソワちゃんの作品を見せてもらった。
職人技が光る伝統的な芸術品もあれば、とても可愛らしい女子ウケしそうなかわいい刺繍もあった。
それにしても、養蚕の現場が心躍る!
洞窟の中に広がる蚕の飼育場。
人の手によって改良された蚕の歴史が儚くも美しい!
もはや自然に帰ることのできないこの子たちは悲しくもあるけれど必死に生きている姿には心にくるものがある。
感謝の念を感じずにいられない!
なんだけど?
「くわわの葉っぱも少ないし、蚕の数も少ないね?」
「昨日も言った通りなんだけど洞窟の中の環境が安定しないんだ。
一年中、安定してあったかかったのに寒くなっちゃうこともあって蚕が育ってくれないの。
このままじゃ全滅しちゃうよ。
わたしもここのみんなも生まれたときからこの子たちと生きてきたでしょ?
そんなの辛いしさみしいよ」
なんとかしてあげたいなあ。
なんで環境が悪くなっちゃったのかなあ?
以前に思ったことを考える。
瘴気が獣を魔獣にする事実。
瘴気が土中に悪影響を及ぼすかもしれないという仮定。
この洞窟でも瘴気が悪さをしているかも?
どうやって?
空気中?
それとも?
岩の中だったとしたら見えないよ?
なんて悩んでいたら?
ずっとくんくんと匂いを嗅いでいた熊さん親子が突然、岩をガリガリと爪でかき始めた。
「うにゃ!?
にゃにかいますのにゃ!」
二頭の熊さんが爪で岩をかくたびにたくさんの小さな青黒い粒々がブワッと飛び出す。
なんとなく魔獣化したときの熊さんに感じた禍々しい青黒さと似てる。
どういうこと?
「うそ! あんなところから!?」
「あれは間違いなく瘴気やんなあ」
「あれが瘴気? 初めてみたよ!」
「チャチャも初めてですのにゃ!」
わたしもチャチャもずっと王宮暮らしで世間知らず。
そんなの見る機会なんてなかったしね。
「あれってまた熊さんにとり憑いたりするのかな?」
「きっとするやんなあ」
「うにゃ!? どんなときでもウルスス様はのんびりですにゃ!」
ハチミツは持ってきてないよ!?
ウアくんがここまでこれる道のりじゃなかったから荷牛車もない!
つまりハチミツはとりに行かないとない!
「ええ!? こんなところで暴れたら蚕が大変だよー!」
「ラソワ様、そんにゃこと言ってる場合ではにゃいのですにゃ!
みにゃさん、逃げるのですにゃ!」
わたしの手をつかもうとするチャチャの手をするりと避ける。
爪でかかなくても岩から飛び出してくる黒い粒々が熊さん親子にまとわりついていく。
茶色の毛が青黒くなって、裂いたように感じる黒々した縞模様が全身に広がっていく。
これが魔獣化する瞬間!
「シル!? なにを考えてるの!?」
「シル様、のんびり観察してる場合じゃにゃいのですにゃ!」
「間近にまで近づく度胸がびっくりやんなあ」
虫を観察するために至近距離まで観察する子どものときの癖が出てた。
チャチャにずるずると引っ張られて引き離されていく。
もっとじっくり観察したいのになあ。
観察することで色々分かることもあるんだよ?
どうしてもダメ?
「ダメに決まってますのにゃ!」
なにも言ってないのにチャチャにダメだしされた。
わたしの心の声が聞こえるのかな?
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