第23話 女子会(特訓)
2日目が終わってアネットが眠った後、アネットと私はいつもの場所で魔法の練習をしていた。ジネットがグレールにやらされていた水の塊を消すというのもさっそくアネットにやらせた。とりあえずジネットと同じ方法で消すことはできた。だが水を凍らせたり、制御を奪ったりするのは難しいようだった。私から見たらまだまだだ。
「アネット。生徒会に入ったからには今まで以上に魔法の力が求められるわ。今後の訓練は激しくするわよ。」
「お、お手柔らかにお願いします。」
アネットは激しくという言葉に気後れしているようだった。それを見て私は吹き出す。
「安心なさい。今日1日で終わらせるつもりはないから。私もまだまだ未熟だけれど、いざとなったら私が出ればいいのだし。でも貴方が自分でやりたいと言って始めたのだから、自分で対応できるようにしないとね。強くなりたいんでしょ?」
「はい!!頑張ります!!」
アネットは力強く頷く。ここで言う訓練とは基本的には魔力のコントロールと魔力眼を維持するものだ。魔力のコントロールは、体内と外にある魔力をコントロールし、素早く魔法への変換をできるようにする。魔力眼については、魔力眼を長時間維持するため、魔力を眼に集め続ける訓練だ。地味だが確実に強くなる訓練だ。2人で訓練を続けていたが、私はふと気になって辺りを見回す。
「そういえば、前々から気にはなっていたけれど、この世界にも魔力はあるのよね。」
「そうですね。結局この世界って何なんでしょう。最初に来たときは死後の世界だと思いましたが・・・。」
2人して首をかしげる。眠った後にくるこの世界には魔力があり魔法は使える。この世界でどれだけ魔法を使っても翌日疲れていることもない。さらには強制的に目覚めさせられるまで訓練し放題だ。ゲームで言うのであれば、ストーリーとは別にある訓練場といったところだろうか。だがこのゲームでは引き継ぎ要素はあっても訓練場みたいなものはなかった。
私は頭を振り、魔力のコントロールに戻る。こういうのは考えていても答えは出ない。2人の魂が交わった事によるボーナスステージだと思えばいいだろう。おかげで表に出ない私でも、ここで魔法の訓練も出来るし、色々なことを試すことができる。
「考えてもしょうがないわ。特訓を続けましょう。」
「そうですね。」
2人で暫くの間魔力のコントロールを行った後、少し休憩をすることにした。そこで私はアネットに講義をする。今回はアネットが魔法を訓練する上での目標についてだ。
「アネットが魔法を使う上での最終目標は、1日中魔法を展開し続けることよ。」
「1日中ですか・・・。相当レベルが高いですね。」
「もちろんそうよ。あくまで最終目標だからね。私もまだできないと思うわ。ところで、常に魔法を展開するって言うと何を思い浮かべる?あ、身を守る方法で考えてね。」
「ええっと・・・。風の魔法を周りに展開させるとかですか。」
「少し違うわね。それでも何かあったときに防げるけれど、風の魔法だと風の音が鳴り続けちゃうでしょ。それだとうるさいわ。方法は魔力で壁を作ること。」
「魔力で壁を作る?」
「ええ。見てて。」
私は魔力を操るとそれを自分の顔の前に展開した。そしてそれを指でつついてみせる。指は壁を貫通せず弾かれる。
「魔力は世界に漂っているし、自分の中にもある。それを操ることで魔法を発動させるけれど、魔力自体もエネルギーとなる。言わば力の源。それを纏めるだけでもぶつけたり壁にすることもできるわ。無属性魔法というべきかしらね。」
「へ〜。よくご存知ですね。」
「まあね。これを自分の身体の周りに展開させられれば不意打ちされても攻撃を防げるわ。こんなふうにね。」
私は目の前に魔力の壁を作る。そしてそこから少し離れて、今度は氷の塊を生成した。それを魔力の壁に向けて打ち込む。氷の塊が魔力の壁にぶつかり大きな音を立てる。だが氷の塊は魔力の壁を貫通せず、地面に落ちていた。
「おお〜。」
「密度の濃い魔力の壁を纏えば攻撃されても基本的には問題ないわ。ただ、注意点としては範囲の広い魔力の壁を作ってしまうと誰も貴方に近寄れなくなってしまうことね。」
「確かに・・・。」
「理想は自身の身体とほぼ変わらないサイズで展開させ続けることね。そうすれば近づかれても魔力の壁があると認識されないし、いざとなれば魔力の壁を拡大させることで周りの敵を吹き飛ばすこともできる。」
「なるほど・・・。そういえばノゾミさん。1つ気になっていたことがあるんですが・・・。」
「なあに?」
「ノゾミさんはその知識をどこから得ているのですか?私の身体に入るまで魔力は認識できなかったですし。でも今では私が教わるくらいの魔法使いじゃないですか。」
「前世の知識ね。前世では魔力はなかったけれど、そういう概念はお話としてでてきたの。」
前世の漫画やゲームでは様々な魔法が使われたお話があったのだ。そういうのを読んだり遊んだりするのが大好きだった。アネットが主人公だったゲームが一番好きで、それをひたすらやりこんでいた。だからこの世界の魔法については特によく知っている。
「ノゾミさんって別の世界に生きていた方なんですよね。」
「そうよ。」
「それなのに、私の事をご存知で恩があるっていうのはよくわからないんですけど・・・。」
「ふふっ。秘密。」
この世界が私のいた世界ではゲームとして存在していたというのは秘密だ。別に言っても悲しみはしないかもしれないが、自分の人生が他人に見世物とされていると知ったら良い気はしないだろう。
「さあ、この話はおしまい。訓練に戻りましょう。次は魔力で壁を作る事を始めましょう。」
「はーい。」
アネットも聞いても答えてくれないことがわかったのか、それ以上は追求してこなかった。アネットには余計な事を考えず、自分の幸せに向かって突き進んでほしい。その露払いをするために、私ももっと魔法を使いこなせるようにならなければ。私は気持ち新たに魔法の訓練に取り組むのだった。
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