第21話 再会

「うん?君達は知り合いなのかい?」

「は、はい。」


 アネットが頷く。彼はアネットを見つつ、グレールに向き直るとお辞儀をした。


「ご挨拶させてください。お初にお目にかかります。私はジネット・ローレル。ぜひ生徒会に入らせていただきたくこの場に参りました。」

「丁寧な挨拶をありがとう。私はケイネス・グレール。生徒会長をやっている。生徒会に入会希望か。いいね。ただ希望者全員を入れるわけではないから、希望動機など色々聞かせてもらいたい。」

「問題ありません。」


 それから、ジネットは入会希望の理由や手伝える時間帯等を聞かれていた。彼いわく動機としては実績作りらしい。そういえば彼は当主になりたがっていた。優秀さを示すための実績作りとしては有効だろう。


「ふむ。正直でよろしい。中途半端な事を言われるよりよっぽど好印象だ。ちなみに魔法はどれくらい使えるのかな?」

「人並には。学年の平均は超えていると自負しています。」

「ふむ。それはいいね。じゃあ少し試験をしてもいいかな。我々は生徒同士のいざこざを止めなければいけない時があるからね。そんな時、生徒に怪我をさせずに止めなければいけないんだ。」

「なるほど。構いません。」


 グレールは立ち上がると手を突き出した。突き出した手の目の前にサッカーボールくらいの水の塊ができる。


「この魔法を消してしてほしい。もちろん私や周りに被害を出さないようにだ。ああ。もちろんこの部屋にいる間は魔法を使ってくれて構わないよ。何かあったら周りが助けるから。」

「わかりました。」


 ジネットは少し考えるとグレールに向けて手を突き出す。すると手のひらから小さな火が複数現れた。そして彼は火を水の塊に向けて打ち出した。火は水の塊にぶつかると、水は少しずつ蒸発していく。彼はそれを繰り返した。だいぶ時間はかかったが、全ての水を蒸発させるとジネットは手を下した。


「これでよろしいでしょうか。」

「うん。魔法のコントロールが素晴らしいね。合格だ。」

「ありがとうございます。」

「あの・・・。私は?」


 アネットが伺うようにグレールを見た。そういえば話している途中でジネットが来たので中断されていた。本来はアネットも試験するはずだったのだろう。それに対しグレールは楽しそうに笑った。


「いや、君はやらなくてもわかる。最初の紙を防いだのだからね。それに君もグレールと同じやり方はできるだろう?」

「できますけど・・・。」

「ならいいだろう。」

(確かにアネットはできるでしょう。でも火を使う以外にも色々やり方はあるわ。それにあれじゃ咄嗟の時の対応としては遅すぎるわね。眠った後、アネットに色々教え込まないと。)


 水の魔法を解除するのに火の魔法を使うなんて危険だ。少しでも暴走したら人に火がついてしまう。それにジネットも試験だから慎重にやったが、実際はトラブルが起きた時、すぐに止めなければいけない。だからあんな手段では遅すぎる。水を凍らせて砕く。魔法制御を奪って水を消す。水を分解する等、やり方は色々ある。眠った後にアネットに教え込ませないといけないなと私は決意する。


「じゃあ、新しく入ることになった2人に生徒会について説明しないとね。まずは所属するメンバーを紹介しよう。まずは1人目。彼はリーサル。2年生だ。」

「リーサルだ。副部長をやっている。」

「そして、もう1人。シャーリーだ。」

「シャーリーです。書記をやっています。」

「「よろしくお願いします。」」


 アネットとジネットは2人に向けて頭をさげる。リーサルはぶっきらぼうだったが、目つきは普通なので悪い人ではないのだろう。シャーリーは優しそうなお姉さんタイプといった感じだ。纏う空気が優しい感じがする。


「去年度の3年生が抜けたから今は私を含めて3人しかいなくてね。今の3年生は私だけ。残りの2人は2年生だ。今はこの3人しかいない。だから新しい人が入ってくれるのは嬉しいよ。残りの2人は君達と同じ1年生だ。先に試験を受けて合格している。」

「ガーネットです。」

「エミリーです。」


 1年の2人が挨拶した。2人に対してもアネットとジネットは挨拶する。

 それから生徒会の仕事について説明を受けた。生徒会といってもやることは、生徒同士のトラブルの仲裁、教師の手伝い、そして学園祭等のイベントの企画・運営が主な作業らしい。特に難しい事もなさそうだし、ゲーム上で起きたトラブルやイベントをアネットに事前に教えてあげれば、問題なくやっていけるだろう。

 後は生徒会特権の注意事項についてだ。この学園では、自衛以外で魔法を使うのは基本禁止されているが、生徒会は特別に使用を許可されている。ただ濫用したり、いたずらに人を傷つけた場合は、生徒会から強制的に除名されるし特権もなくなるとのことだ。


「細かくは随時説明をするけれど、ひとまずはこんな所かな?何かあるかい?」

「生徒同士の仲裁というのは?具体的にどうするのですか?」

「他生徒から苦情の多い生徒がいたら注意しに行ったり、言い争いをしていた時に仲裁する感じかな。中には頭に血がのぼってしまって魔法を使う人もいるから、その時は力づくで止めなければいけない。」

「なるほど。」

「やむを得ない場合は怪我をさせてもいいのですか?」

「出来れば怪我をさせてほしくないけどね。周りに被害をだすくらいならしょうがないかな。ただやりすぎは禁止だよ。」

「わかりました。」

「他にもないかな?」


 グレールは周りを見渡す。するとガーネットが手を上げた。


「生徒会の活動は毎日あるのですか?」

「基本的には毎日だね。ただ事前に伝えてくれれば休んでくれて構わない。そこは遠慮しないでくれ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「他は大丈夫かな?」


 誰も反応がないのを見るとグレールは手を叩いた。


「よし!!じゃあペアを決めよう。主な作業は毎日の見回りだからね。ローレル君とセレナーデ君がペア。ガーネット君とエミリー君をペアにしたいけどいいかな」


 アネットとジネットが顔を見合わせる。


「私は・・・。彼が良ければ構いませんが・・・。」

「自分も問題ないです。」

「よし。じゃあ最後に教師達の窓口になっている人を紹介しよう。イベント運営の際に相談したり、何かあった時に報告したりする先生だ。ついておいで。」


 グレールに連れられ、アネット達は皆で職員室へ移動した。職員室の部屋をノックし、応答があった後、グレールは扉を開けた。


「失礼します。アグネス・カーラ先生はいらっしゃいますか?」

(!!)

「アグネス・カーラ・・・。」

(ノゾミさん?ジネットさんも様子が変ですけど何かありましたか?)


 私とジネットがその言葉を聞いて固まる。アネットはそれを見て不思議そうにしていた。アネットは私がジネット話した人物名を忘れてしまっているのだろう。アグネス・カーラは私が彼に伝えた人物名の1人だ。入口の近くにいた先生が回答してくれる。


「カーラ先生ね。席にいらっしゃるわよ。」

「ありがとうございます。皆、行こう。」


 全員でカーラ先生の元に移動する。そこには20代前半だろうか。美男子といえる中性的な見た目の男が座っていた。ゲームの中で嫌という程見た相手だ。


(アグネス・カーラ・・・。攻略対象の1人・・・。彼が窓口なんて・・・。)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る