第6話 知らない、後日談



「……私、先輩と同じ中学校に通ってたんです」

「そう……それがどうしたの?」


 私と同じ中学校というのには驚きだが、別におかしいことではない。たまたま、同じ地域だったというだけなのだから。


「先輩が、いじめられていたの知ってたんです」

「いや、あのがっこうでしらない人のほうがすくないでしょ」


 今、会話にあった通り私は中学時代にいじめられていた。なにやら、「感情が少なすぎて気味が悪い」とか「美人すぎて怖い」とかが理由だったらしい。

 それを言い始めたのが、学年の中でも群を抜いて1軍だった男女グループだったためか、その噂──嘘では無いので噂ではないかもしれないが──は一瞬で学年、そして学校全体に広まった。


「知ってたのに……私は、先輩が、なにもできなかったんですよ」

「あのときは、みんなさからえるような空気じゃなかったでしょ?」

「それは、そうですけど……」


 ん?ちょっと待て。今こいつは、って言ったよな?ということは、私がいじめられていないときには、なにか行動を行ったということなのだろうか。


「ねえ、いじめられているときはってどういうこと?私がいじめられてなかったときはなにかしたってこと?」

「……それについて、話したかったんです。先輩が転校した後の後日談について」





 雨宮詩音SIDE


「──先輩が、転校した……?」


 友達から、聞こえた言葉に私は動揺する。

 頭の中がぐちゃぐちゃし、思考がまとまらないまま、勢いで友達の両肩を掴む。


「先輩が転校したって、本当なの……!」

「ちょ、ちょい……落ち着いて詩音」


 少し取り乱してしまったようだ。


 私は友達の肩から手を離し、膝の上に丁寧に置き直す。


「ご、ごめん……それで、その話本当なの?」

「……気の毒かもしれないけど、本当よ。2年の学年主任にも確認した」


 その言葉を聞いた瞬間、息が詰まる……しかも、気持ち悪さと吐き気で、頭がクラクラしてくる。

 私はどんどん視界が黒に塗り替えられていくのを自覚した。


「あ、私むり、か…も」

「あちゃー、来ちゃったか……おっけ、保健室運んどくよ」


 心の中で優しい友に感謝する。

 そして、視界の全てが真っ黒に塗り替えられたその時、私は意識を失った。






 先輩が転校したという話を聞いてから、だいだい1週間後。私は友達と、とある会議を開いていた。


「ということで!今から先輩の名誉挽回会議を始めます!」

「「「わーーい」」」


 棒読みで拍手をする友達3人。

 その中一人、浮かない顔しているアラサーの処女がいた。


「なんで先生である私がこんなふざけた会議に参加することに……?後!私のプライベート事情を、当たり前のように暴露するな!!アラサーの処女で何が悪い!」

「先生うるさいです」

「先生、そんなことしてるから30になっても独身なんじゃ無いですか?」

「だから、経験人数0人なんじゃないですか?」

「お前らさぁ……悪口の攻撃力高く無い?」


 そんな感じでぼやいてるアラ処は、詩音たちの担任であり、1年の学年主任でもある楠木くすのき志保しほ先生だ。ここで、歴史好きの人は「もしかしてあの楠木?」となるかもしれないが、ガチでその楠木の家系らしい。でもその家系が先生で、途切れしまうとは……楠木正成さんご愁傷様です()


 まあ、そんなことはないので落ち着いてもらって(他にも子孫はいるはずだから)……とりあえず会議を始めようと思う。


「まあまあ、落ち着いて先生……タイトルコール?はふざけてたけど、内容はありえないほど真面目だから」

「まず、そのノリがふざけているのだが……そうだな、確かに神代さんの名誉挽回というのはとても大事なことだ……あいつが噂されていることの9割は、完全に作り話だからな」


 今回の先輩名誉挽回会議でまだ助かることが、「神代先輩の噂の9割は作り話」だということだ。これらに関しては、事実を伝え、作り話だということをみんなに認めて貰えばいいだけだ。


「えー?作り話なら、普通にそう言えば良くね?」


 やっと真面目の空気になってきた中、一人その空気を壊すギャルがいた。そのギャルの名を奥村おくむら羽衣ういという。名前とは真逆の、全ての言動が積極的な、亜麻髪露出多めアクセマシマシ巨乳陽キャ白ギャルだ。


「もう言ってるに決まってるでしょ。転校しちゃったってことは、それじゃダメだったってことよ」


 その意見に、難しそうな本を読みながら答える者の名を、川崎かわさき里香りかという。


「里香ちゃん、その本なんて言うの?」

「『フォルス・ウィングス』っていうロマンタジーだよ」

「ロマンタジーとは……?」


 テストはもちろん毎回9割以上の成績を維持し、それに満足せず、いつ、どこでも勉強している超真面目ちゃんである。


「……確かにね。まあ、こんな会議をしてる時点でなんとなくわかっていたけど」

(((わかってるなら言うなよ)))


 この時、ギャル以外の4人の心が通じ合った瞬間であった。

 そんな空気の中、横から急に誰かの声が聞こえてきた。


「ねえ、早く会議進めてくれない?私、妹が待っているから」


 透き通った目で4人を見渡しながら文句を言うこの者の名を、桐谷きりたに飛鳥あすかと言う。中学生にてモデルデビューしている、美人である。綺麗なロングの黒髪に、透き通った綺麗な目。日本人離れしたスタイルの良さ。全てが完璧の美人である。


「というか、飛鳥は相変わらずシスコンだねー」

「……否定はしない」


 飛鳥がシスコンであることを初めて知った先生は口を開けて驚いているようだが、一旦放置して……詩音が「はいはい」と言いながら手を叩き、他の4人の視線を一つに集めた。


「まあね!ということでもう一度タイトルコールするから、そこからはちゃんと会議しよう!!」

「ええ、それでいいと思うわ。ちゃんと仕切り直してちょうだいね」


 詩音は大きく息を吸って、腹から声を出す準備をした。


「すぅーーー……ということで!今から先輩の名誉挽回会議を始めましゅ。あ、やべ」

「「「そこは噛むなよ」」」


 詩音以外の4人の心がまたもや、通じ合った瞬間であった。



 ◇



 みなさんこんにちはカフェオレです。

 みんなめんどくさそうですけど、みんな友達(生徒)の好きな先輩のために自分の時間を使う、いい人たちです。


 読んでくださりありがとうございました!

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 次回更新3日後(多分守る)






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