第4話 忌まわしき天才
「──またのお呼び出し、お待ちしております」
そう言って、自宅へと送ってくれたタクシーは目の前から去っていった。そのまま私は自宅のドアに鍵を刺して、自宅へと入る。
外に出たのは久しぶりだが、少し前までは時々スーパーとかも行っていたため、特に問題はないのだが……横に誰かいるんですけど?
「お邪魔しまーす」
「……なんで、あたりまえのようにはいってきてるの」
思わずため息が出そうになるのはグッと堪える……いや、なんで堪えた?
その疑問が出た時にはもう詩音は、リビングの床にちょこんと座っていた。
(あ、そっか。元々話があったんだったね)
それを理解した私を、先ほど出た疑問を棚に上げて、詩音の前に同じように座る。
「「……」」
どちらも言葉を発さない……話があるのはあっちなので、私は待っているのだが話してくる気がまったく感じられない。
仕方ない。私の昔の話でもするか。
「……私って、てんさいだったんだよね」
いつもより日本語の発音が上手くできている気がする。これもこの後輩のせいだろうか。
「……知ってます」
「なんでもできたんだよ」
「……それは、凄いですね」
詩音は言葉を途切れ途切れにしながら、私の話に相槌を打つ。
「……でもさ、それゆえに私はすてられたんだよね」
「……そう、なんですね」
「せっかくだし、その話をしてあげる」
──私は小学1年生の時に、windows10が搭載されているごく普通のノートパソコンを親から譲ってもらった。「もう私たちが使うことはないし、灯が遊ぶために使っていい」とのことだった。
初めてpcに触れた私は、今まで生きてきたものはなんだったのかと思うほどの衝撃を受けた。そこから私は、学校に行っては帰ってきてpcを操作するという、ある種のルーティーンができていた。
しかし、私は見つけてしまった。【株】というものに。
幸か不幸か、私はこのpcに
そこで、自分が個人的に推していた
「──さあ、久しぶりに株でも見ましょうかね」
……この時の私は小学6年生。前に株を確認したのがだいだい1年前。
そのためかなり久しぶりの確認になる。しかし、ここを境界に私の人生を完全に変わってしまった。
「MVIDIAどうなってるか、な……?」
私はその株価を見て、驚きの声を上げた。株価が数倍、いや、数十倍にも膨れ上がっていた。私が買った時は約3.5ドル、日本円でいうと約380円。100株買っているため、約38000円。そして目の前に表されている数値は……96.57ドル。日本円でいう約14190円。しかも100株買っているので約1419000円となる。
「え……?へ……?」
計算は一瞬で終わった。
──でも、その数字を理解するには、少しだけ時間が必要だった。
「と、とりあえず放置しておこう……」
私は怖くなって、思わずそのままの状態でpcを閉じた。
「……ちょっと待って、そういえば配当金はどうなってるんだ?」
私はまた、pcを起動して、口座を確認してみる。
そして、そこでも私を驚きの声を上げることになる。
「え?……12万……いや、123万円!?」
私の口座には、1年生の時から送られてきていた配当金が全て入っていた。その数なんと、123万円。いち小学生が持ってはいけない金額であることは、一目瞭然だ。
当時の私もそれには気づいていたのだろう。そのため、今日のことは完全に記憶から消去することにした。
しかし、ことはそんなに簡単なことではなかった。
この時からちょうど1年後、私が中学1年生へと上がった年だ。そして、私の全てが変わった日でもある。
「──え?」
「どうかされましたか?」
銀行員と私の母がなにか会話している。私は相変わらず、中学1年生が読むとは思えない、難しい洋本を読んでいた。
「あのー……非常に申し上げにくいのですが……
お子さんの銀行に約150万円にも上るお金が入金されています
」
◇
みなさんこんにちはカフェオレです
天才ゆえ畏怖されるというのはこういうことを言うんでしょうね。
※1コマンドプロンプト
→キーボードで文字(コマンド)を入力してコンピュータを操作するためのツール。初心者には少し難しく、pcに詳しい人とが使うソフト。かくいう私もよくわかっていない(使っているpcがMacというのもあるけど)
※2PayPar
→本作では「PayPar」と表記していますが、実在する超有名オンライン決済サービス「PayPal」が元ネタです(怒られたら名前変えます)
※3GPU
→画像や映像の処理を行うための専用パーツ。CPU(テキストや演算処理)とは別で、主にグラフィックやゲーム系の処理を担当する。
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明後日21時次回更新
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