【リライト】牛捨樹さま『上野恭介は呪われている』異界行き電車に乗って編 第二話目
【原作品タイトル】『上野恭介は呪われている』 異界行き電車に乗って編 第二話目
【原作URL】https://kakuyomu.jp/works/16818093073275914427
【原作者】牛捨樹さま
【原文直リンク】https://kakuyomu.jp/works/16818622176441335313/episodes/16818622176441798911
【リライト者コメント】
牛捨樹さまの至極の異界街とゾワゾワホラーに、テレビショッピング参加させていただきました(?)。なぜか意味不エアコンCMにツボってしまい...笑
こういう、次元ごと怪異に巻き込まれる系、めちゃ好きです!これぞゴーストタウン。
自分では絶対考えられないキモっっち悪い(褒めてる)クリーチャーで、キャアア無理無理こんなの書けない、と思いましたが、意外と書いてるうちに楽しくなってしまいました。笑
口悪い奴が好きなので、神田くんには色々ツッコんでもらいました……彼の無事を祈ります🥹
==▼以下、リライト文。============
「何なんだこりゃ……」
俺は呆然と立ち尽くしていた。普通の街にて、変な生き物に遭遇したことは多々あるが、変な街に遭遇したのは初めてである。
幽霊がいるとされる袋小路は、電話で確認したと言うのに、店の先にそんなものはなく、代わりに民家が立ち並ぶ狭い路地が続いているだけだ。俺は曲がり角を戻って、もう一度書店の看板を確かめる。
が、何故か俺はさっき見た筈の看板を認識できなかった。
「…………?」
字が読めない。
確かに日本語だった筈なのに—————線の並びが解らない。点と点が繋がらない。視覚から入ってくる情報が、脳内から知識を引き出せずに渋滞している。
この文字は何だ? そもそも文字か? 図形なのか? 混乱しているうちにそれはとうとう簡単な図形の組み合わせにしか見えなくなってしまった。
『続いて紹介するのはこちら!』
突然響いた音声に、ビクッとして振り返ると、個人経営の電器店がある。しかし、さっきここを通った時は、書店の隣に電気屋なんてなかったはずだ。
その店に人の気配はないが、ショーケースの中に入っているモニターは赤や白に早変わりした後、パッとテレビショッピング映像が映される。
『おお〜来ましたね〜!本日の目玉くりぬき鮮血商品!』
『はい。佐藤さん、毎年エアコンと飛び散った内臓の清掃、大変じゃないですかあ?』
『そうなんですよ、もう業者さんに頼んでも、ヘドロが溜まるばかりで』
『そんな時に、この全自動排除エアコン・
……何だこの違和感は。画面の映像は至極普通なのに、やたらとテンションの高い二人のショッピングアナウンサーから発せられる言葉が、まるで彼らの爽やかな笑顔に合っていない。
『自動フィルターチェーンソーでお手入れらくらくらくらっ首!エアコン最深部を覗くと最深部もまたこちらを覗いています!清潔な空気がまさに切り裂くように瞬間冷凍!消費磁力は従来の呪符の、なんと40%!』
『ええ!呪符20枚でこの肺活量!?』
『はい、日本百足協会に認められたエアカッターとして怨みを勝ち取りました!』
『何と!!』
いや、意味がわからない。何だ、俺の方が狂っちまったのか?幽霊がらみかどうかはまだ断定できないが、これは明らかに異常だ。
そう考えると、駅からずっと誰にも会わなかったというのに、あろうことかそれを不審に思わなかったのは、俺に気づかせないためだったのか。
……この町に入った時から罠にかかってたっつーことか。
舌打ちしながらポケットへ突っ込んだスマホに手を掛ける。誰かに連絡した方が良さそうだ。
【す、すすス、ご、いぃいい, 欲し欲し欲し欲し欲しい】
……は?
持っていたスマホを落としそうになった。隣に、いつの間にかいた。
途端、異臭が鼻腔を襲う。堆肥のような、いやそれだけでは済まされない、死んで腐っていく獣の肉を目の前に突き出されたかのような。
「————ッ!?」
声が出なかった。全身に鋭い悪寒が走る。
宙ぶらりんになった、中年男性の死体。足はなく、顔はテレビに向けられているが両の目玉が無い。その真っ黒な眼窩、口、鼻、耳から、黒いヘドロのようなものがボトボトと溢れている。
【ほしいいいいいい コレほしいいいいい】
ちょん、ちょん。
皮膚と肉の溶けかかった真っ黒な指先で、電気屋のテレビの画面を指す。耳に毛虫が入ってくるかのような、悍ましく粘着質な声。
俺は、それの異臭にぐっと息を止めながらも、静かに後ずさった。手や足が小刻みに震えそうになるが、必死に冷静になろうとする。
【買ってえええええ コレ、買って買って買って】
目の前の死体がガサガサと揺れた。
いや、何か変だ。あの死体、自分が喋っていると言うより、まるで何かに動かされているような—————
死体から目を逸らさないようにしながら少しずつ後退りしていくと、ぶら下がった死体の後ろに何か光沢を帯びた物が見えてくる。
( 何かが居る……!)
なるべく音を立てずに後ろに下がると、やっとソレの全体像が見えて来た。
死体をぶら下げているのは、全長でいえば三メートルくらいの大きな百足ムカデのような化け物。
長い体をL字に折り曲げており、前半分で死体をぶら下げ、後ろ半分で地面を這っている。何本もある足は通常の百足よりも太く鋭く、光沢を帯びている。そんな鋭い足を何本も死体に突き刺して動かしているらしく、化け物ムカデが足を動かす度に死体からボトボトと黒い塊が落ちていく。化け物ムカデは他の足に比べて長い触手のような物を伸ばして死体の喉に突き刺すと、それで死体の口をぱくぱく開けさせた。
【やっすううううううううううううイィぃぃぃぃぃ】
安くねえよ!!ムカデが人間のフリしてテレショップすんなクソが!!!
事態の異様さ、そしてムカデの気色悪さに、思わず心中でツッコむ——————が、ムカデの後ろ半身、大きな針が付いた尻尾のような部分がカラカラ音を立てながら持ち上がり振動しているのが見えた。おそらく攻撃の予備動作だ。
【買って 買って、カッテ、涼しいの、カッテ】
俺は咄嗟に近くにあった小さい鉢植えを引っ掴んでクソムカデに思い切り投げつけた。
「テメェにエアコン要らねえだろ土に帰れ!」
鉢植えがぶつかる瞬間、ムカデはぶら下げた死体を素早く動かし盾のようにして鉢植えを防いだ。一方、死体の方は顎部分が損壊し、中から泥のような黒い塊がボトボトと大量に溢れ落ちた。
「……汚ったね」
俺は思ったより素早いムカデの動きを見て、意を決し背中を向け全速力で逃げ出すことにした。
冗談じゃねえ、こんなことならエアコン効いた部屋でジャ○プ食ってポテチ読んどけば—————
クソ、あの変なテレビショッピングのせいで俺の頭の語順さえ狂ったわ。
どうかあの妖怪プロパガンダ番組に脳内侵食されないようにと願いながら、俺は細い路地を走った。あいつをブッ殺してやるのは今じゃない。情報にしても装備にしてももっとこちらの準備を整える必要がある。まずは脱出ルートを探して—————
『続いて紹介するのはこちら!』
「え」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます