4.婚約解消、そして・・・-3-
「つまりメイドにしてエクレア男爵令嬢のミラと楽しんでいた。それをシェリアザード王女に咎められた事に腹を立てて火魔法を放った!」
「違う!確かに俺はミラとそういう関係にあった!だが、私はシェリーに何もしていない!」
私は私なりにシェリーを愛している!
彼女との結婚を楽しみにしていたんだ!
「それなのに、シェリアザード王女には公爵夫人としての仕事をさせて、男爵令嬢は着飾って自分を楽しませればいいと言っていたな?」
「それは・・・単にミラを口説く為に言っただけで!!」
何人もの女を侍らせる事が男として優れている事の証左なのに!!
何で、何で分かってくれないんだ・・・
睡眠時間は一~二時間あればいい方だ。起きている間は取調官達による、暴言と暴力を伴った取り調べ。
眠らないように水を浴びせられたりしているアーヴェルは一貫して無実を主張するが、自国の王女に生きているのが不思議なレベルの火傷を負わせたのだ。
取り調べる方も必死になるのは当然である。
「アーヴェル。お前の情婦は告白したぞ?」
アーヴェルが自分達の関係がばれてしまったから、シェリアザード王女に向けて火の上位である炎魔法を放ったって
「真面目なタタン公爵夫妻も気の毒に・・・」
取調官の話によると、浮気がばれて婚約者を焼死させようとしたアーヴェルという息子を持ったせいで、タタン公爵夫妻は白い目で見られているのだそうだ。
「タタン公爵夫妻はお前を勘当して、弟君を跡取りに据えると言っていたぞ」
「父上・・・母上・・・」
自分は両親から捨てられたのだという事が分かり生きていく気力を失ってしまったアーヴェルは───完落ちした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(そ、それって完全に冤罪じゃない!)
何故、自分の身体が赤く爛れてしまったのかは、シェリアザード本人も上手く説明がつかない。
何となくだけど幻肢痛のようなもの───というより婚約者と情婦をトカゲ野郎と雌トカゲ共に重ね合わせてしまった事が原因でユースティアの時に負ってしまったトラウマが出現したのではないか?とシェリアザードはそう思っている。
「そ、それで!?アーヴェルとミラというメイドはどうなるの!?」
「当然、火炙りになるでしょう」
「シェリアザード王女!」
話を聞き終えたシェリアザードは二人の火炙りを阻止しようと両親の元に向かおうとしたのだが、ラクシャーサが呼び止める。
「シェリアザード王女の身体に出現したあの火傷・・・あれは一体何なのか?教えていただきたい」
「それは・・・私にも分かりかねます。ですが、今はあの二人の火炙りを阻止するのが先です!」
「姫様!優しすぎます!」
「慰謝料まで貰ったのに、あの二人が火炙りになったら私の気持ちが落ち着かないからよ!」
アーヴェルとの婚約が嫌だったのは確かだが、そこまでは望んでいない。
それに・・・冤罪で処刑されたら私が一生罪悪感で苦しむ事になるじゃない!!!
ステファニーは私を優しいと言っているけど、私は優しくない!!!
私は自分の為だけに、あの二人の処刑を止めるだけよ!!!
「シェリアザード王女・・・どうやら貴女には私の知らない、教え子以外の顔がありそうだ・・・」
ラクシャーサが何か呟いたと思う。しかしそれが聞こえなかったシェリアザードは両親の元へと急ぐ。
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