第21話初任務に行こう
「……なんで俺まで?」
ぼそりと呟いた元盗賊の男を研究員Bもとい、カミラは思わずギロリと睨んだ。
「……ドクターの命令です。拒否権があるとでも?」
「いや、わかりますけどね! やりますよ? でも、方向から言ってここって冥府の古戦場だろぅ! 死んじゃうよ!」
「……うるさいですね。私だって盗賊と一緒に行動なんて嫌なんですから」
「辛辣! なんだお前、偉そうに!」
「そっちこそ。なに普通に研究員をやってるんです? さっさと逃げればいいでしょう?」
「逃げられるわけないだろぅ? 出来ればとっくにやってるっつーの。だいたい……そんな生意気言っちゃっていいのか? こっちはドクタークレイ様に戦闘員の命令権もらっちゃってんのよ? おおん? お痛たが過ぎるといたずらしちゃうぞ?」
「……それなら私もあなたの首に埋め込まれた爆破装置のスイッチを貰っていますが?」
「なにそれ!? そんなのいつの間についてたの!?」
「二人ともうるさいデス!」
「無駄口たたくなデス!」
「ドクターのために頑張るデス!」
「「はい……」」
ちなみに随行する複数の巨大鎧に乗ったクーシー達がこの場での最高指揮官である。
カミラ達が向かっている場所は、冥府の古戦場と呼ばれていた。
遥か昔に妖精と人間が戦った戦場跡だと言われているが、詳しい資料は残っていない。
一体どれだけの戦場であったのか? 未だに怨念が土地全体に漂っている呪いの地ではアンデッドが生まれ続け、生者を引きずり込む魔境となり果てているのだとか。
見渡す限り生命の息吹が感じられない岩場はついさっきまで森の中を進んでいたとは思えないほど閑散としていた。
そしてそんな場所に今から入ろうとする自分達は、おそらく間抜けの部類なのだろう。
「……うぅ。なんか寒気がすんだけど……戦闘員! 絶対俺から離れるなよ!」
叫ぶ研究員Aの盗賊男は怯えて震えていたが、逃げださないのは意外だった。
カミラは渡された不思議な道具についたモニターを見て、指示されている方向に進んでいた。
「さっきから何見てるんだ?」
「魔力を見る道具だそうです。強い光の映る方に進めば強いスケルトンがいるそうですけど……」
「いやそれって……一番やべぇ奴がいるってことなんじゃないの?」
「そうですよ。そのヤバい奴を捕まえに来たんです」
「嫌ですけどぉ!? なんでお前、平気な顔してるの!」
驚いて引いている盗賊男だが、カミラだって平気であるはずがない。
ただ、自分の目で見た事実を支えに、指示に従っているだけだった。
「そんなの……先日の襲撃のクーシー達を見たからでしょうか? あの鎧なら対抗できるのではないですか?」
カミラはふわふわと浮かびながらついてくるクーシー達の大鎧を見る。
まったく理解の及ばない技術で組み上げられた未知の鎧は、ひ弱なクーシーに無双の力を与えていた。
そして自分にも、ドクタークレイから与えられたものはあった。
「……ああ確かに。まぁ俺もビビっちゃいるが。こいつらがいりゃあ。どうにかなる気がしてる」
そう言って盗賊男が見るのは黒光りする戦闘員達だ。
明らかに元の盗賊の時より強そうな一団は、確かに強そうだった。
幾分か口に出しただけでも落ち着くことはできたが、無駄口を叩いていられたのは、出るべきものが出る間のわずかな間だけだった。
「なんかいっそう寒くなったような……うお!」
盗賊男が悲鳴を上げて転んだらしい。
何をやっているんだかと、カミラが振り返ると―――盗賊男は白骨の腕にくまなく全身掴まれていた。
「……タチケテ~」
「で、出ましたか!」
それを皮切りに次々に地面が割れて、白骨の腕が飛び出てくる。
盗賊男はか細い悲鳴を上げて、カミラは与えられた腕輪に視線を向けた。
今までの人生で、訓練の経験は嗜む程度しかない。そして実戦は初めてだ。
「あの方から渡された物が、果たしてどれほど通用するか……」
戦う覚悟を決めたカミラだったが……しかしすぐに何かが飛んできて目の前のスケルトンたちに覆いかぶさるときゅっとまとめて引きずられていった。
「えぇ?」
カミラは慌てて振り向く。
するとそこには投網のようなものでスケルトンをごっそり捕まえた、クーシー達の姿があった。
「電磁ネット射出完了デス!」
「大漁デス!」
「ちょっと味見してもいいデス?」
「食べるところなんてないでしょう? ……ダメだと思いますよ?」
どうやらクーシー達にとって、もうすでにスケルトンは恐れる対象ではないらしい。
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