第20話研究員B回復計画
私は悶えた。
極真面目に繰り出された名前の攻撃力が高かったからだ。
「ど、どうしたんですか?」
「い、いや? 魔神機? それは絶対見てみたい……期待してしまうよ」
「そうですか?」
「いやそりゃそうだろう? みたいよ。ああ、でも数は多くないんだったね」
「アルマ王国に存在するのは魔神機アルマギオンと、その器となる魔人機があるのですが…」
「「ましんき」と「まじんき」? 二種類の兵器があると? 性能は、今の口ぶりでは違うのだろうね」
「はい。天と地ほど。魔神機は神の力を宿しています。たった一柱で、国を守護する守護神なんです」
研究員Bの語り口はそこだけとても流暢で、楽しそうですらあった。
彼女の心中にあるのは憧れか、崇拝か。
しかしその気持ちが強いからこそ、時々落ちる影は濃い。
誘拐されたからPTSDか何かかと思いきや、そう言ったことでは無かったということなのだろう。
誘拐は結果でしかない。おおよそ魔神機とやらがらみでなにか問題があったように見えた。
「ほほう。いいね、いつか現物を見たいものだが、それはまだいいか。ふーむ、それよりも優先すべきことがあるようだね。主に君の事だが」
私はひとまず大変気になるが魔神機については脇に置く。そして研究員Bを見た。
「……私ですか?」
いきなり話を切り替えられて、きょとんとしている研究員Bだが我が楽しいラボ内で辛気臭い顔をされてはいただけない。
「そうだとも。私のラボで白衣に袖を通した以上、根拠がなくとも不敵に笑い、誰が相手であろうと大胆不敵に行きたまえ。自己中心的なのはマットサイエンティストの嗜みだ」
「それは……どうなのでしょう?」
「やってみると中々楽しいぞ? こう……解放された気分になる。実力が伴えば、自信は最期についてくるね」
「自信ですか?」
「そうだとも。言ってしまえば自己肯定だよ君。養う方法は、成功体験しかない。ここまではいいかな?」
「は、はい」
そうして私は目に入った海パン姿の研究員Aの水遊び現場を指差した。
「見たまえ、あの能天気さを。人とは最初はあのくらいの気楽さで生きていけるのだ。だが気がつけばあれやこれやと考えすぎて、気持ちに重みが増してゆく。それ自体は自然なことだが……失敗は重さだけは十倍だ。なにより気分が良くない」
「……は、はぁ」
「君は賢いのだろう。だが今の君は……ハンディキャップ分アレ以下だ」
「……アレ以下!?」
おや? なんだか今までで一番ショックを受けているような? まぁ気のせいか?
なんにせよ研究員Bからは、深い悩みを抱えた人間特有の重苦しさがぬぐえない。
そう言う重苦しさはフットワークに直結する。
熟考の代わりに失うのは素早い最初の一歩と最後の鋭さだ。
一般人ならそれもいいだろうが、残念ながらここはマッドで邪悪な研究所だった。
「君に必要なものは不敵な笑みと一つの成功だ。まずは君自身を強化する。そののちミッションを君に頼もう」
「ミッション」
「そうとも。あるサンプルを手に入れてもらいたい」
魔法について、魔石について詳しく知るためには良質なサンプルが必要不可欠。
そしてそれらを手に入れるためには現地住民の協力は自分でやるより効率がいい。
「安心したまえ。そのための装備は進呈しよう。ここに来るスケルトンの群生地を発見してね。中でも強力な個体を捕獲してきてほしいのだよ」
「……それは」
私の提案になぜか研究員Bはいきなり蒼白になっていた。
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