どこまでも深く潜る物語だと思いました。「帝」という名の海底都市の重苦しさに、最初は息が詰まりそうになるのに、不思議と目が離せなくなるのです。赤字の何でも屋カイン、紅い毒巫女ミランダ、そして仲間たち──誰もがそれぞれの哀しみや矛盾を抱えつつ、夜の街や牢獄、白亜の塔を進む姿に、ふと「自分もそこにいるのでは」と錯覚してしまいます。
中でも、機械にしがみつくキレモア教主の姿と言葉「世界の滅亡はまだ早すぎる」は胸を刺しました。生きることへの執着と、滅びゆくものへの祈り。その狭間で、彼らが何を選ぶのか、続きを読まずにはいられません。
独裁、予知、逃避、再会……あらゆる要素が見事に絡み合い、読後もしばらく心に残り続ける物語です。