第32話 言わなきゃな
しばらく時間が経ち、ようやく二人は満足したのか歌を入れなくなった。今俺たちはポテトフライなどをつまみながら会話をしていた。
しばらくの間は学校の話をしていたのだが、
風花の一言で話題が俺の体調の話になった。
「そう言えばさ、遥斗くん、最近けっこう体調悪い日が多いけど、大丈夫?」
「そうね。日曜のデートも来れなかったし、月曜日も火曜日も早退してたよね。私も気になってた」
「ごめん。心配かけて……。たしかに、ここのところは、普段より調子悪かった……かな。」
「遥斗くんって確か、お父さんとお母さんが海外に行ってるから、一人暮らししてるんだよね? ご飯とかちゃんと食べれてる?」
「まぁちゃんと食べてはいるよ。そこまでちゃんとした料理を作っているわけじゃないけど」
「だったら今度私たちが料理を作りに行ってあげるよ。私も風花もよく家のご飯作ってるから、色々なメニューを作れるよ! 作り溜めして冷凍しておけば、時間がない時でも食べられるしさ」
「えっ? 二人が来て作ってくれるの? ありがたい話だけどさ、さすがにそれは申し訳ないよ!」
「遠慮しないでよ! 凛ちゃんと最近話してだんだけどさ、健康の第一条件はなんと言っても食生活だよ!! 私たちだったらしっかり栄養バランスを考えた食事も作ってあげられるからさ! 今度作りに行かせてよ!」
風花と凛花はまっすぐな瞳でこちらを見つめてくる。その表情から俺のことを本気で心配してくれている気持ちが伝わってきて、胸がジーンとしてしまった。
(前から分かってはいたけどさ、二人は優しすぎるよ。ほんと、俺にはもったいないぐらいの人たちだ……)
あまりに感動してしまい、涙が込み上げできそうになってしまった。さすがに我慢したけど、二人の優しさが底なしに嬉しかった。
「ありがとう。前から知っていたけどさ……。風花も凛花もめちゃくちゃ優しいよな。二人と付き合えてほんとに俺は幸せ者だよ」
「好きな人に優しくするのは当たり前じゃん。それに、遥斗くんが元気だと私たちも嬉しいもん」
「そうね。遥斗くんが休みだと私も風花もガクッとテンションが下がるわ。遥斗くんにはいつも健康でいてもらいたいわ」
「ありがとう」
二人の優しさを受けて、俺はより自分の正体を明かさなければいけないと感じた。
(話をするんだったら今だな……。よし、ちゃんと話そう)
正体を明かすことに対して、まだ心の中に色々な不安はあった。でも、風花と凛花なら絶対に分かってくれるという信頼感が俺を突き動かす。
俺は勇気を出して口を開いた。
「あのさ……」
しかし、俺がそう言いかけたとき、突然部屋の電話が鳴り響いたため、凛花がすぐに受話器をとった。
おそらく3時間パックの終わりを告げる電話だろう。時計を見ると21時15分を指している。入店してから丁度3時間だった。
「時間だって。延長するか聞かれたけどもう遅いから断ったわ。あっという間だったね」
「はぁー! 楽しかった! もうこんな時間なんだ!! そろそろ帰らなくちゃだね!!」
風花は満足そうに笑うとスマホをやハンカチなどの荷物をカバンの中に入れて行く。
俺たちはすぐに部屋を出ていった。
(しまった。もっと早く話せば良かった。遅すぎたな……)
1番重要な話ができなかったことに落ち込んでいると、風花の声が聞こえてきた。
「遥斗くん。ご飯作ってあげるの今週の日曜日からでいいかな? 今週の土曜日は少し忙しくてさ」
「大丈夫だよ。ありがとう」
(今日は言えなかったけど、明日か明後日には言おう。こうなったらもうテレビ電話とかでもいいかもしれない。本当は健康な俺が、料理なんて作ってもらうわけにはいかないからな)
俺は今日伝えることは諦めた。明日の夜にでもテレビ電話で伝えるつもりだ。
凛花と風花とは立川駅の改札で別れた。
二人とも、離れる間際まですごく楽しそうだった。
電車に乗り、席に座ると時間は21時27分だった。この前長官から話があった通り、昨日までは魔物の出現率がとても高かった。
そのため、もしかしたら今日も途中で任務に行かなければならなくなるかと朝から危惧していたけれど、結局この時間まで仕事が入らなかった。
予定通りデートができて良かった。もしかしたら魔物の出現が多い時期が終わったのかもしれない。
そんなことを考えていたら眠くなってしまい、俺は意識を失っていった。
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