第13話:「ヒロちゃんは私だけのもの〜♥♥!」恋する生徒会長の物語!


《前編》


【朝 ― ヒロのアパート】


暗い夜道を、一匹の猫が静かに塀の上を歩いていた。

世界はまだ眠っていた。


しかし、やがて空がゆっくりと明るくなり始める。

パァァァッ

まるで誰かが透明な筆で空を塗っていくように、陽の光が街を包んでいく。


ある一軒の小さなアパート、その窓からも朝日が差し込んでいた。


中の狭い部屋――布団の中で、小さく丸まって寝ているのは俺だった。

黒地に白のラインが入ったパジャマを着て、ナイトキャップを被っている。


あのマチンタとの出来事から、まだ一日しか経っていない...


顔に光が当たり、目を閉じたまま俺はもぞもぞと動く。


ピカッ


ヒロ(寝ぼけ気味):「んん...?」


ゴシゴシ

体を起こして目をこすりながら、赤い目でぼんやりと窓の外を見つめる。


ヒロ(あくびしながら):「ふあぁ〜〜〜...」


ふぅ...とため息をついて、俺はつぶやく。


ヒロ(小声):「また...新しい一日か」


棚の上、静かに置かれているアナジェの仮面に目を向ける。

まだ動かぬその仮面を数秒見つめたあと、俺は背伸びをして立ち上がる。


ポキポキ


ヒロ:「シリアル...まだ残ってたっけ?」


カチッ

ドアノブを回してドアを開け、部屋を出る。


【キッチン ― 朝】


ヒロ:「えっとえっと...あっ、あった!」


見上げると、シリアルの箱が一番上の棚に置かれていた。

なんでいつもこんな取りにくい場所なんだよ...!


ギギギ...

椅子を引きずり、流しの前に置く。慎重に登って手を伸ばす。


ヒロ(必死):「うぅ...あと少し...!」


グラグラ...

椅子がぐらついてヤバい!


ヒロ(焦り):「あああっ!落ちるな落ちるなーっ!」


ビクンッ

そして――


ツルッ!


ドガンッ!!


ヒロ(転びながら):「いたたたた...でも...シリアルは...取れた...!」


ヨロヨロと立ち上がり、シリアルをテーブルに置く。

ギィ… 冷蔵庫を開けて、ほぼ空の中から唯一残った牛乳を発見。


ヒロ(ちょっと得意げ):「へへっ...俺ってついてる?」


食器棚から器とコップ、スプーンを取り出し――

カチャカチャ

肘で扉を閉めてから席に着く。


ザザザッ

シリアルを器に入れ、


トポトポ…

牛乳を注ぎ、


モグモグ…

食べ始める。


噛みながら、俺の頭の中には最近の出来事がよぎっていた。


トイレの幽霊に襲われて...アナジェと出会って、

契約して、一緒に現代の世界を回って、

変態な先輩に狙われて――

そしてマチンタ。あの冷たくて恐ろしい魔女...


うぅっ。思い出したくもない。


ヒロ(心の声):

「...少しくらい、落ち着いた日があってもいいよな」


目を閉じて、手を合わせて、心の中でそっと祈る。


ヒロ(明るく):「いただきまーす!」


...


..


.


ヒロ(満足そうに)

「はぁ~、お腹いっぱい…シリアル、いつも通り美味しかった。ミルクも…最高だ…」


その時、ふわっと静かなドアの向こうから――


「ピンポーン!ピンポーン!」


ヒロ(訝しげに)

「ん…?誰だろう…?」


「ピンポーン!ピンポーン!」

また鳴る。俺は慌てて立ち上がり――


ヒロ(大声で)

「わ、わかった!今開けるから!」


ダッシュして玄関へ。


ヒロ(無意識で)

「忘れ物でもしたのか、マ—」


でも、母さんじゃない。


そこに立っていたのは、彼女だった。


ナカムラ(微笑みながら)

「おはよう、ヒロちゃん!会いに来ちゃった♥」


彼女はまるでお姫様のように優雅に微笑み、俺に手を振っている...でも、それも計算された罠のように見えた。


ヒロ(顔を赤らめながら)

「ブレイドヴァスク先輩?!そ、そんな…僕に会いに…朝から…?」


彼女はすっと身をかがめ、両手で俺の顔をそっと包んだ――


「ムギュッ」


その瞬間、青い瞳が俺を射抜いた。

冷たいけれど、美しい…氷の湖に沈むような眼差し。


ナカムラ(くすくすと)

「当然でしょ、愛しい人♥ 私はいつだってヒロちゃんだけのもの…」


ゴクリ...


その時、あの日の記憶が一気に蘇った――


ナカムラ(囁くように笑って)

「ふふふ…ヒロちゃん、すごく可愛い…♥」


彼女は優しく髪を撫でる――


「ナデナデ」


そして、玄関で靴を脱ぎ――


「カポッ」


―静かに、まるで儀式のように。


ヒロ(緊張して)

「せ、先輩…部屋…散らかってて…」


ナカムラ(甘く)

「大丈夫よ…私が全部キレイにしてあげるから♥」


彼女は俺の肩に手を置いて――


「ポスッ」


そしてじわりと引き寄せる。

その感触は、まるで…ふわふわの羽毛に包まれているみたいだった。


二人でソファへ。ナカムラは俺の腰をそっと抱き寄せて離さない。

その微笑みは優しい――しかし、どこか過剰にも見えた。


ナカムラ(穏やかに)

「座って、ヒロちゃん。」


「ポンポン」


彼女の膝を軽く叩く音。


ヒロ(照れながら)

「せ…先輩…こんなの…恥ずかしい…」


ナカムラ(断言するように)

「二人の間に恥ずかしいことなんて何もないわ、愛しい人♥」


ナカムラは自然に俺を引き寄せ――


「ヒョイッ」


そのまま膝の上にヒロ押し込むように座らせ――


「モミモミ」


肩をゆったり揉み始める。


ヒロ(顔を真っ赤にして)

「え…えっ、なん…あの…」


胸に触れる感覚が伝わってくる――


「ムニムニ」


ヒロ(声が震えて)

「せ、先輩…?」


ナカムラ(微笑んで)

「どうしたの?ヒロちゃん♥」


ヒロ(混乱しつつ)

「そ、その…先輩、なんで今日来てくれたんですか?土曜日なのに…」


ナカムラ(ゆっくりと)

「今日は仕事の予定がキャンセルになったの。だから…ヒロちゃんと過ごしたかったの♥」


――その言葉と同時に、彼女の抱擁が今まで以上に強くなる。


「ギュウウッ」


ヒロ(息を飲む)

「ひ、一日って…ご両親…知ってて…?」


ナカムラ(静かに微笑む)

「私は親がいないの、ヒロちゃん。もう…いないの。」


その言葉は、世界を凍らせた。


ヒロ(小声)

「そ、そうだったんですか…?」


ナカムラは突然、強く抱きしめ――


「ダキッ」


その表情は緩いまま…でも、瞳には虚無の色が見えた。


ナカムラ(静かに、でも冷たく)

「いいのよ…あなたのせいじゃない。愚かだったのはあの人たちよ。」


ヒロ(震える声で)

「そ、そんな…どうして…?」


ナカムラ(囁くように)

「家族なんて形にすぎないわ…ヒロちゃんと私がいれば…それで十分なの♥」


彼女は俺の顎をそっと掴み――


「クイッ」


そして、強く目を合わせる。

その瞳には――執念と愛が混在していた。


ヒロ(動かず、困惑して)

「...はい。」


俺は逃げようとした…でも…


ヒロ(小さな声で)

「そ、その…顔、離して…?」


ナカムラ(優しく)

「もちろん、愛しい人♥ でも…」


額にキスされる。


「チュッ」


そしてまた髪を撫でられる――


「ナデナデ」


ナカムラ(囁くように、でも楽しげに)

「ふふ…ほら、ヒロちゃん、本当に柔らかくて可愛い♥」


次の瞬間――強く抱きしめられて…頭がまた胸に沈む。


「むぎゅぅ〜」

「むにゅっ!」


ヒロ(パニック気味に)

「せ、先輩…その…胸が…!」


ナカムラ(甘く囁いて)

「どうしたの?欲しいの…?」


その声に反応して、俺の体が…!


「ぴくんっ!」


突然、彼女が俺の耳元に唇を寄せ――


「レロォ…」


恐怖と混乱で――


ヒロ(即座に)

「い、行きます!トイレへ!す、すぐ戻りますから!」


足早に逃げ出す――


「タタタタタ!」


...


..


.


鏡の前に立つ俺。

静けさ。自分の吐息だけが響く。


スー…ハー…




ヒロ(思案気に):

「ブレイドヴァスク先輩にはどうしたらいいんだ…?

追い返せるかな…?

いや、そんなの失礼すぎる…

それに、先輩は簡単には帰らなさそうだし」




ガシガシ

頭を掻きむしる。


ヒロ(つぶやき):

「うぅ…どうすりゃいいんだよ…あぁ…

アナジェーーーー?

アンジェがいないと…俺、どうすれば…!」


目を閉じ、大きく息を吸ってみる。

落ち着け、ヒロ。

焦るな…


ドクン…ドクン…


ヒロ(少し強気に):

「よし…行こう。落ち着いて、冷静に…!」


ガチャッ

ドアを決意を込めて開ける。




廊下に一歩踏み出す。


ヒロ:

「…!」


クルッ

振り返ると…そこに居たのは――


ヒロ(動揺):

「せ、先輩?!なんでここに…?!何してるんですか?!」




彼女は俺の部屋の中、片付けられてないものをチェックしていた。

カサカサ…


ナカムラ(甘い微笑み):

「ちょっと散らかってないか確認してただけだよ、ヒロちゃん~」


でも…明らかに空気が重い。息苦しい。

ズシ…




視線が棚の方へ。

「アナジェの仮面」はやはりそこにあった。

ドクン!


ああ、見つかってない…

助かった…。




少し前に入られてたら…

まだ間に合う。

うまく隠さなきゃ…。




ヒロ(緊張しながら):

「そ、それは…先輩、気にしなくて大丈夫です!

僕一人で片付けられますから!ぐはは…」


アハハ…

ぎこちない笑い。照れ隠しだ。




ナカムラ(穏やかに):

「私がやってあげるよ、ヒロちゃん。

一人で頑張りすぎちゃダメだよ?愛しい人~」


彼女は屈んで、俺を包み込むように抱きついてきた。


ギュウッ…




背中に感じる柔らかさ…

ムニッ…


甘く深い香りに包まれて、体がふにゃっととろけそう…

心地よく、心臓がバクバクしてきた…。




ヒロ(内心):

「ダメだ…これって罠だ…!」


理性を保とうと振り絞る…




ヒロ(小声で、必死に):

「せ、先輩…お願いですから…

僕に部屋を片付けさせてください…お願い…」




彼女は即答せず、

ただ、深い呼吸…

ハァ…ハァ…


鼓動が伝わってくる。

ドクンッ ドクンッ…


この抱擁の中で、

俺がいつか“食べられて”しまいそうな気がした…。




ヒロ(取り乱しながら):

「せ、先輩?!大丈夫…ですか…?!」


彼女は少し離れて…

けれど笑顔は明るすぎて不気味だった。




ナカムラ(にっこりと明るく):

「大丈夫よ、ヒロちゃん!

せっかく片付けたがってるなら、

その間、私、リビングで“特別な何か”作って待ってるからね~♥」


彼女は優しく俺の頬にキスをした。


チュッ…




身体がゾワッと震えた。


ヒロ(震えて):

「は、はい…わかりました…」


手が自然に頬を触る。

ポンッ…


彼女は腰を上げ、

ドアを開け静かに出ていく。




パタン…


廊下から足音が聞こえてくる。

コツコツコツ…


ゆっくり、でも確実に迫ってくるその音が怖い…。




ヒロ(ささやくように安心しつつも):

「あぁ…ようやく息ができる…

これで安心して…部屋を片付けられるよな、な?」


…そうなるといいけど。


...


..


.


ヒロ:

「よしっ!全部キレイにして整ったぞ…!」

──ふぅ〜…

アナジェの仮面をもっといい場所に隠せたし。


さて…

先輩が今度は何してるのか見に行こう。


部屋を出て──パタン。


スゥ〜…

…ん?

なんだ、この匂い…


あったかくて、落ち着く感じで…でも、なんか妙に誘惑的な…!?


ヒロ(焦りながら):

「まさか、また…!?」

足早にリビング・キッチンへ向かうと──


パァァァン!!


魂が身体から抜けかけた。


ナカムラ:

「ふふ〜ん♪ ふんふん〜♪」

鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜてる。髪はポニーテールで結ばれてる。


──でも問題はそこじゃない。


彼女の格好は…


エプロンだけ。


ヒロ(絶叫):

「な、なんだその格好はああああああ!?!?」


ドキィィン!!

慌てて顔を手で覆う──バッ!

…でも遅い。もう視界に焼き付いてしまった。


目に入ったのは…

布越しにくっきり分かる胸のライン──プニッ

しなやかな腰のくびれ…そして…


お尻。完全に露出。


ナカムラ(笑いながら):

「え?これのこと〜? うふふふ…」


彼女はエプロンの端をつまんで、ペロッとめくる。

…先端、見えた!?!?


ヒロ(真っ赤になりながら):

「せ、先輩!なんか着てくださいってば!それ、反則だろ!!」


ナカムラ(挑発的に):

「じゃあ、ヒロくん…どれがいいの?」

──スルッ…

エプロンをさらにずらしながら、腰をくねらせて言う。


「ご飯?お風呂?それとも……」


「──わ・た・し♡」


ピクッ!


ヒロ(叫び):

「な、なにいってんの!?いますぐ何か着てってばあああ!」

(手で目を隠しながらも…)


なんで見ちゃうんだ俺ぇぇぇ!!


ナカムラ(にやり):

「恥ずかしくて選べないの?ヒロちゃん♡」


ゾクゾク…

ゾワッと背中に走る寒気…でも悪くない。


ヒロ(心の中):

「アナジェ、助けてくれぇぇぇ!!」


ヒロ(泣きそう):

「よ、よんたくめで『服を着る』って選択肢ないの!?」


ナカムラ(囁き):

「残念だけど、ないのよ。あなたが選べるのは…」

「私だけ──♡」


ペロリッ


指の隙間から見える…あの危険すぎる笑顔。


彼女が近づいてくる──スッ…

そしてしゃがんで、体を押し付けてきて──


ムニュッ!


ヒロ(ほぼフリーズ):

「お、おっぱいの感触が……!!」

甘くて…あったかい香り──


クンクン…


ナカムラ(耳元で):

「どうしたの?ちょっとくらい、見てもいいんじゃない?」


ゾワァ…


ヒロ(恥ずかしさ爆発):

「や、やめてください先輩!マジで恥ずかしいからぁぁ!」

(顔を背けようとするも、手首を掴まれて──ギュッ!)


ナカムラ(興奮気味に):

「そうやって抵抗するところが…たまらなく愛しいの♡

もっともっと、欲しくなっちゃうじゃない…」


ヒュッ!

いきなり引き寄せられ──


チュバァッ!


ヒロ(苦しげ):

「んんっ…!?」


抱きしめられた。

腰と髪を優しく、でも強く押さえられ──


チュルッ…!

舌が絡まってくる。


この感触…この音…


混乱してるのに…


……気持ちいい。怖いくらいに。


ヒロ(必死):

「んむっ!せ、先輩っ…や、やめて…!」


ようやく彼女が離れる。


二人の唇の間に、**ピチュッ!**と銀の糸が。


ヒロ:

「はぁ…はぁ……」


ナカムラ(真っ赤な顔で、息を切らしながら):

「はぁ…はぁ……ヒロちゃん…

もっとほしいの。あなたを…全部、私だけのものにしたいの♡」


その目が──

ハートになってた。


キラキラ…


ヒロ(心の叫び):

「もうムリだあああああああ!!」


助けを探して周囲を見ると──

鍋がグツグツ煮立ってる!


ヒロ(叫び):

「りょ、料理があああああ!!」


ナカムラ:

「……えっ?」──パチンッ(まばたき)


後ろを見ると、鍋が今にも吹きこぼれそう。


スッ…

彼女はすっと離れて、


おでこにキス!


ナカムラ(優しく微笑んで):

「じゃあ、ヒロちゃん。ソファで待っててね♡」

髪を優しく撫でられる──ナデナデ


……動けない。


ヒロ(心の声):

「彼女は…本当に狂ってる。

エロいし、挑発的だし、危険すぎる……」


でも──


優しい。

気が利くし、あったかい。


そして何より…


なんか、嫌いになれない。


彼女がここにいる理由もわからないけど──


一緒にいると……なんか、悪くない。


...


..


.


《後編》


【昼食後 ─ 午後】


ご飯、カレー、それにちょっとした野菜…。

──最後の一口まで、しっかり平らげた。


ヒロ(満足気に):

「はぁ〜!本当に美味しかったよ、先輩!」


これはお世辞じゃない。

…もしかしたら、母さんのより美味しいかも。


ナカムラ(心の声):

『ほ、本当に褒めてくれた…!?きゃあああ!け、結婚式の予約しなきゃっ!?』


ナカムラ(顔を赤らめて):

「う、嬉しいです…♡」


彼女が立ち上がる。

──俺は即座に目を逸らした。


ヒロ(心の声):

(ま、まだエプロンだけだし…っ!)


ナカムラ(自然に):

「ん〜…そろそろお風呂に入ろうかなぁ〜♪」


お、お風呂…!?

で、でももちろん一人で行くんだよな!?

そ、それが普通の感覚だよな!?!?


ナカムラ(ウキウキで):

「もちろんヒロちゃんも一緒だよっ♡

いっしょにお風呂入りましょ〜!」


ヒロ(フリーズ):

「……やっぱり普通に終わるわけないか……」


ガーン!!


...


..


.


【バスタブ ─ 午後】


今の俺は──

女の子の膝の上で、全裸。

相手も全裸。

湯気立つバスタブの中で、隠せるのは両手と……羞恥心だけ。


「ジュワ〜…」


い、いや…最悪なのは…

背中に感じる…彼女の大きな胸…!


あ、あぁぁっ!圧力がヤバい!!

どうすれば!?

いや──こんな状況で俺に何ができるんだよ!?


ナカムラ(艶っぽい声で):

「そんなに恥ずかしがらなくていいのよ、ヒロちゃん♡

これから慣れていくんだし……もっと頻繁になるから♥」


「ドクン…!」


彼女の手が俺の胸に触れる。

優しく、でも明らかに誘惑するように──


ヒロ:

「あ、ああぁっ……!」


「ピクッ」


う、うっかり漏れた声!?

彼女に乳首を軽くつままれて──!!


思わず手で隠す!

顔が熱い!!燃えそう!!


ナカムラ(甘えながら笑って):

「ふふ〜ん♡ 可愛い〜♪」


そして──彼女は俺をさらに引き寄せた!


「ムギュウウッ!」


胸、背中、ぬくもり……

全方向からの包囲網!

もう完全に抱き枕扱いだ!!


ヒロ(必死):

「せ、先輩!ちょ、ちょっとだけ離れてくれませんかっ!?」


ナカムラ(甘え声で):

「やだぁ〜♥ ヒロちゃんとくっついてたいの♪

学校じゃいつも逃げるくせに〜?」


そう言いながら、優しく俺の頭を撫でてくる。


「ナデナデ…」


ヒロ(苦しげに):

「わ、わかってます…で、でも、もうちょっと健全で…

社、社会的にセーフな方法で過ごせませんかね!?」


彼女はそのまま撫で続ける──


ナカムラ(小さく笑って):

「や〜だ。こっちの方が好き♡」


…だろうな。知ってたよ。

だって彼女は、ナカムラ・ブレイドヴァスクなんだから…


でも…

なんで?

なんでこんな俺に…?


ヒロ(恥ずかしそうに):

「そ、それより先輩…

なんで、俺みたいな人間を好きになったんですか…?」


「俺、背も低いし…強くもないし…お金もないし…」


「ポチャ…」


彼女の腕の力が少し緩む。

湯面が静かに揺れる。


沈黙。


ナカムラ(真剣に、優しく):

「私は、ヒロちゃんがヒロちゃんだから、好きなの。」


「誰かになろうとしない、あなた自身が好きなの。」


……言葉が出ない。

俺自身?それってどういうこと?


ヒロ:

「ど、どういう意味…?」


ナカムラ(穏やかに):

「ヒロちゃんはいつも優しい。

たとえ相手がそれに値しない人でも。」


「誰かのために頑張って、笑って…

自分が苦しくても、誰かを気遣える。」


ヒロ:

「で、でも…それって普通じゃ…?

俺だけが特別なわけじゃないし…」


……なんで俺なんだ?

もっとカッコいい男もいるし、強いやつも人気者もたくさんいる。


俺は──

ただの俺だ。


未来もないし、

才能もない。

愛される価値も、きっとない。


ヒロ(心の声):

「だったら俺の幸せなんて…

あげちゃえばいいじゃん。大事な人の幸せのために…」


「ギュッ!!」


ナカムラ(力強く):

「そんなことないっ!!」


急に強く抱きしめられた!

胸も、腕も──全身で俺を包み込む!


ヒロ(驚き):

「せ、先輩っ…!?」


ナカムラ(真剣に):

「私にとっては、ヒロちゃんが特別。

唯一無二の存在なの。」


「誰にも、それは代われない。」


まっすぐに俺を見る。

その目には、感情が溢れてた。


本気だった。


彼女はまた俺の髪を撫でてくる。

やさしく、丁寧に──


「ナデナデ…」


ナカムラ(笑顔で):

「愛って、地位とかお金で決まるものじゃないの。」

「感じる心で、決まるの。

周りがバカだって笑っても…関係ない。」


彼女がさらに近づく。


ナカムラ:

「私はね、ヒロちゃんみたいな“ちっちゃくて可愛い彼氏”が大好きなんだよ♥」


……


音もなく、湯気の中に静寂が落ちる。


聞こえるのは、湯の音だけ。

でも、そのぬくもりが──

俺を、包んでた。


ヒロ(小さく):

「…あ、ありがとう…」


一滴の涙が、ほほを伝って湯の中へ落ちる──


「ポトン…」


彼女は黙ったまま、

前髪で目元を隠していたが──


ナカムラ(急にテンションMAX):

「うわああんっ!ヒロちゃん可愛すぎぃぃぃ!!

よーしっ、体ぜ〜んぶ洗ってあげるぅ〜♥♥♥」


「ブンブン!ムギュウウウ!!」


全身を抱えられて、振り回される!!

胸の感触まで…ヤバい!!


ヒロ(心の声):

「こ、これ以上は…俺の刀がっ……!

こらえきれねぇぇぇぇぇ!!」


誰かぁぁぁ!!

アナジェ、今こそ出てこいよおおお!!


...


..


.


【夕暮れ ─ ヒロの家の前】


ブレイドヴァスク先輩と一緒にお風呂に入って、

──いや、正確には “抱きしめられ過ぎて魂が抜けかけた” が正しいかも。


そんな濃密な時間を過ごして、ようやく一日が終わろうとしていた。


空は柔らかな夕焼けに染まり、

まるでオレンジと金の水彩画が広がっているようだった。


──俺の家の玄関前。


彼女は落ち着いた様子で腰掛け、

ハイヒールのストラップを整えながら帰り支度をしていた。


ナカムラ(にこやかに):

「うん、よし…!」

スタッ(立ち上がる音)


ヒロ:

「ま、またいつでも遊びに来てください、先輩!

先輩は…いつでも歓迎です!」


(も、もちろん……次はもうちょっと “マイルド” でお願いします…)

(もし母さんが今日の全部を見てたら…俺、たぶん家追い出されてた…)


ナカムラ(くすくす笑いながら):

「ふふふ…そんなにまた私の愛が欲しいのかしら、ヒロちゃん?

今度はもっと…刺激的な格好で来ようかしら〜? あなた専用に♡」


ピクン!


も、もっと刺激的な格好って!?

あのエプロン姿は、まだ “準備運動” だったのか!?


ああああぁぁぁぁ…

もう穴があったら入りたい…!!


ヒロ(必死にごまかす):

「い、いえっ!?そ、そんなことないですからね!?

ほ、ほら…ただの友達として…また会えれば十分です!!」


(友達…そ、そう…友達だし……たぶん……)


ナカムラ:

「ところでね、ヒロちゃん…ちょっとこっち来て?

あなたに “特別なもの” をあげたいの♡」


チョイチョイ(手招き)


……まるで猫を誘うような仕草で俺を呼んでくる。

そして──俺は、まんまとその猫のように近づいてしまった。


ヒロ(警戒気味に):

「な、なにを……?」


彼女は静かにしゃがみ込む──スッ…

そして、両手で俺の頬をそっと包み込んで──


チュッ…


キス。


今回は──

舌も、唾液も、激しさもない。


ただ、彼女の唇が…俺の唇に触れただけ。

柔らかい──


──シンプルで、あたたかくて、

優しいキスだった。


彼女がそっと離れたとき──フワッ

その瞳はほんのり潤み、

笑顔は穏やかで、少しだけ頬が紅く染まっていた。


ナカムラ(微笑んで、照れながら):

「じゃあね、ヒロちゃん。また月曜に学校で会いましょ?」


彼女は軽やかに立ち上がり──スラリ

指先で俺にキスを投げてきた──チュッチュッ


そして、夕焼けに照らされた歩道を

静かに歩いていった。


俺は、その場に立ち尽くしていた。


ピタ…(時間が止まったような静寂)


反射的に、唇に指を当てる。


まだ…温もりが残ってた。


(俺……今のキスが、嫌じゃなかった)

(先輩のキス……嬉しかった)


そしてふと思った──


これって、よくないことなのかな?

俺がこんな風に流されていったら、

彼女を不幸にしてしまうんじゃないかって…


わからない。


でも──


俺の心は……


ドキン…ドキン…


──たしかに、動いていた。


それが、少しだけ……


怖かった。

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