第3話 水曜日の教室

 水曜日の放課後ほうかご、五年一組の教室。


「……で、このタイムカプセルの写真は、どーんと学級新聞のいちばん上に大きくのせよう! 取材はもうバッチリさ」


 そう言って新聞の下書きを指さしたのは、ハジメこと、村田むらたはじめくん。 黒ふちの丸いメガネがよく似合ってて、『記録こそが命』っていつも言ってる。ズボンのポケットには、毎日の出来事できごとを書くメモ帳が入ってるの。


「デジタルイラストとか動画も入れて、タブレットで共有して、クラス全員で見られるようにしたらどうかな?」


 もの知り顔で笑ったのは、宇崎うざきまひろちゃん。みんなからは、宇崎をもじって“うさぎさん”って呼ばれてる。


 クールな美人で、テストもかけっこもいつもトップ。そのうえ、クラスでいちばん背が高い。だから、小柄なハジメはちょっと気にしてるみたい。


「でもさー、中学生になったら、グンと背が伸びる子、多いよ。ハジメだって、だいじょうぶだって!」


「ナツキは、のんきすぎるんだ。ぼくの背が伸びても、うさぎさんも伸びたら、けっきょく負けじゃないか」


「う~ん、身長って勝ち負けの問題かなあ?」


 そんな会話を、うさぎさんは涼しげな笑みで見守ってた。余裕しゃくしゃくって感じ。


 でもね、私、知ってるんだ。うさぎさんって、じつはハジメのこと、すごく応援してる。きっと、幼なじみってだけじゃない気がする。


 そのとき、廊下ろうか側の窓から、ひょっこり顔を出したのは、弟のフユキだった。

  私と同じくらいの背で、髪は短め。私は五年生の中じゃ、背丈は、たぶんふつうくらいで、肩までのボブ。 ふたごだけど、男の子と女の子だから、そんなにそっくりってわけじゃないの。


「ナツキ、まだ終わらないの? 一緒に帰ろうと思って、さっきから待ってるのに」


「え? 先に帰ればいいのに」


 フユキはふくれっ面。 その顔を見て、『しまった』って思った。ちょっと冷たかったかな。


 フユキはとなりのクラスなんだけど、いつも私にくっついてくる。もっとクラスの子たちと仲良くすればいいのにね。


 そんなことを思っていたら、うさぎさんがガタンと席を立って、


「そろそろ帰ろっか。学級新聞の仕上げは、ハジメにまかせた! ハジメならぜったいに上手くまとめてくれるし」


 うさぎさん、うまいなあ。 そう言われたら、ハジメががんばっちゃうの、ちゃんと分かってるんだ。


 こうして、私とフユキ、うさぎさんとハジメの四人は、いっしょに校門を出た。

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