第4話 鳥屋敷
だから、帰りはいつも坂道をずーっと下らなきゃいけないの。でも、途中にある教会とか、ちょっと外国の景色みたいで、私はすごく好き。
大通りに出ると、すぐそばを、茶色の路面電車がガタンゴトンって音を立てながら通りすぎていった。
「この町は坂が多いから、地下鉄を作るのが大変なんだって。だから代わりに、路面電車やバスが発達してるんだって」
うさぎさんって、そういう豆知識をよく知ってる。
「ふーん、この町ってちょっと、ふしぎだね」
だけど、なんかそれもこの町っぽくて、いいなって思う。
路面電車の屋根には、ときどきハトとかムクドリが止まってて、それを観察するのもちょっとした楽しみなんだよ。
◆ ◆
大通りを歩いていると、ハジメが言った。
「そういえば、ナツキがよく通ってた”鳥屋敷”、なんか最近、カラスの巣みたいになってるみたいだよ。ボロボロなんだって」
「えーっ! それ、本当?」
「うーん、どうかな? クラスの誰かがうわさしてたのを、ちょっと聞いただけだから」
わたしは、なんだかソワソワしてきた。
みんなは”鳥屋敷”って呼んでるけど、それは、路面電車の駅の近くにある大きなお庭つきのおうち。いつ行っても、いろんな鳥が庭の木にとまってる。
だから、そこは、わたしのお気に入りの鳥観察スポット!
もちろん、写真を勝手に
それで、家に帰ってから、覚えてきた鳥のすがたとか鳴き声をノートに書くの。
それって……ちょっと、メモ魔のハジメっぽいかな?
「でも、この前のお休みに行ったときは、カラスなんて一羽もいなかったよ」
そう言ったとき、ふと、創立記念日に校庭で見た、あの不気味なカラスの「カアッ!」って声が、頭の中によみがえった。
胸のあたりが、なんだか、ぎゅってしめつけられる――
「わたし、”鳥屋敷”に行ってみる!」
「えっ! 今から?」
「うん。ここからそんなに遠くないし、ちょっと見るだけだから」
私のとなりに歩いていたフユキは、少しだけ考えてから、
「ナツキが行くなら、ぼくも行く!」
「えーっ、ぼくとうさぎさんは、今日は習いごとがあるからムリ」
「明日じゃダメなの? みんなで一緒に行こうよ」
うさぎさんとハジメは、めちゃくちゃついて行きたそうな顔をしてた。でも私は、
「ダメ! 今日、行かないと気になって眠れないもん」
——そんなわけで、”鳥屋敷”に向かうのは、私とフユキのふたりだけになった。
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