エピローグ 和也

 梅雨の合間の、良く晴れた日。湿気も少なく空いているとはいえ、いつもは蒸している電車の中も快適だった。

 順調に進む企画に、俺は心地よい大気に包まれている、そんな感じだ。

 そうそう、今日おもしろいことがあった。

 初めて同じ名字の人と出会った。と言っても僕の名字は、母の再婚で途中からの名字なのだが。

仕事でだ。

 大きな仕事になるはずなので、僕も緊張してたが、このサプライズで一気に和んだ。

 ただ漢字は旧字体を使ってた。変わった名字の人はこだわるのだろう。義父が拘らなさすぎると言えば、その通りだと思う。

 特に気難しい人でもなさそうなので、このまま順調に成功してほしい、というか、成功させないとね。


電車を降り、気分がいいのでコンビニにスイーツでも買おうかな、足取りも軽い。


奥さんと息子と僕の三つ。

義父ならきっと

「コンビニで定価で買うなんて偉くなったもんだ。スーパーに行け、手間を惜しむな」

と嫌味を言うだろう。そうだな、嫌味義父に久しぶりに電話でもしてやるか


「もしもし 父さん。久しぶり、和也です。ああ 元気だよ。でね、今日ね…

                            寿吉家の始まり

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