結真とメルティア その1(改)
「セリフ。」、を削除しました。内容は変わりません。
真白結真(ましろ ゆうま)は20歳の大学生
週末の土・日はバイトで屋上戦隊「スカイハイナンジャー」のひとりカエルムブルーを演じているのだ。アクションは人並みの運動神経でなんとかなっている。
(子供のキラキラした目っていいよなぁ)
ステージに立ち、まばらな子供たちを見ながら昔に思いを馳せていた。
(僕もいつかは某ライダーや某レンジャーになれるって信じてたな……)
****
「オイ、レッド勝手に突っ込むんじゃない!」
「打ち合せ通りにやれって?」
「声がでけぇよ」
「子供が泣くじゃろがい!」
「出たな!怪人!!」
「くっそ!ぐわははは……」
「行くぞ変身だ!!」
『5人揃って屋上戦隊スカイハイナンジャー』
「あれ?なんかブルーがいないぞ?」
「会場のみんなブルーを呼んでくれ!」
(返事はない)
(こどもは5人くらいしかいない。しかも、ひとりは泣いている。)
(あいつぁ!どこ行きやがった!?)
****
「……さては、お前がさらったか!?」ビシッと怪人を指差すレッド。
「……お、おう!ブルーは俺たちがさらったぁ」
「なんて卑怯な!変身前を狙うなんて!!」
(……チクショーなんで、俺のせいになってんだ……結真め許さんぞ!!!)
――ブルーには代役が立てられ、なんとか今日のステージは、終わった。
****
おっと今日の演出はド派手だな?赤と緑と青のリボンかよ? おお?勝手に身体に巻き付いてきた。
キタキタキタぁ♪これカッコエエ奴じゃん?テンション爆上がりだぜ!!
今日の主役は俺だ!「カエルムブルー参上!」決めポーズも決まったぜ!
――って、ここどこ?――
空も高く緑も豊富、太陽が眩しい、風が心地よい、空も蒼くて雲も白い。緑も鮮やかで春めいて、草木の花々も色とりどりだ……香りがほのかに舞って、「スーハー、スーハー」うん、空気がうまい。
東京じゃないみたいだ。
(ちがーう!そうじゃない)
(確か、僕は屋上にいたよね?何でこんなところに?)
(……ここはどこで、僕は何故こんなところに来てるんだろう?それに、僕はブルーのアクトスーツのままか。)
****
ひとりで、あれこれ悩んでいると……
突然、それは起こった。
「グエェグギャァグエグエグエ」なにかの吼え声が重なって、こちらへ近づいてくる。
ガサガサガサ、草木が揺れて、何かがこっちへ向かってくるようだ。
僕は身構えた。(逃げるために)
見るからに狂暴そうな小柄な緑色の醜い人?が、あっちこっちからワラワラと駆け込んでくる。
奇声が飛び交い、僕の周囲をパニック状態で逃げ惑っている。
もう駄目だ!僕は必死に顔を腕で覆い隠す。
「ドン」とぶつかって倒れた小さな緑色の醜い人は、僕とぶつかったことなど、全く意に介してないかのように、こちらを見る事も無く、すくっと立ち上がると、必死の形相で走り去った。
僕の本能がなにかに怯えている。
動かなきゃと思ってるのに、身体が動かない。当たられた拍子に尻もちをついて、僕は立ち上がることもままならなかった。
その横を何人もの同じような緑の醜い小さい人が駆け抜けてゆく。
そして、その後を追うようにして、醜悪で狂暴そうな灰色の体毛に覆われた巨人が棍棒と緑の小人を持って現れた。それも三人も。
「グシャリ」と嫌な音を立てた。
そちらを振り向くと片手で緑色の小人を握り潰している。
その体液を浴びるようにすすったかと思うと、無造作に亡骸を放り捨て、咆哮を上げて再び緑の小人たちを追い回し始めた。
巨人のひとりがこっちに向かって迫って来た。
僕はようやく重い手足を動かして逃げる。
大声をあげながら――
「だ、だれかー!た、助けてくれー!助けてー!」
心からの叫びは、波紋のように森に広がった。
先程までの穏やかで、心安らぐ平穏な風景は、一瞬にして地獄へと変わっていた。
****
……それを、遥か上空から冷徹な眼差しで見下ろす、翡翠のように透き通った双眸があった。
結真は、今度は自分が狙われているという恐怖から、足元を見誤って何かに引っ掛かって、ふたたび転がってしまっていた。青いアクトスーツのまま……。
その結真に向かって、血にまみれた棍棒が振り下ろされんとしていた。
まさにその時。
「グギャァ」
もんどりうって巨人が吹き飛んだ。
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