プロローグ 3 調査報告(改)

「セリフ。」、を削除しました。内容は変わりません。


◇調査報告◇


 「何?確かにターニャの崩壊遺跡に聖域のような空間があるという報告は、数件あるが半裸の女性が祈りを捧げていた。なんてお前ら幻でも見たんじゃねーのか?」


 ククルカンの冒険者ギルドの長は、疑わし気な目で俺らを眺めながら胡散臭そうにそう投げかけた。


 「しかし――研究所の人間が4人も見てる――か。集団幻覚?嘘?そんなことをしても一文の得にもならねぇか」


とんと合点がゆかぬ素振りのバヌトゥクだったが、頭を振ると


 「まぁ……なんだな?そのあやしい美人さんを取り逃がしっちまったのは失態だったな?」と、何故かどや顔で問うて来た。

 

 半信半疑になるのも判る。俺だってあの光景を見てなきゃ、きっとギルド長のように、いぶかし気な顔になってたろうよ?


 「タ-ニャの崩落跡を探索する他のチームにも、見かけたら丁重に保護するように伝えとくで良いかぁ……」ポリポリ頭を掻きながら、そうつぶやいた。


 「あぁ、お前らAチームはこれからはクエストをこなしながら、その女性も探すようにな?これは好機チャンスを逃がしたお前らへの汚名返上のチャンスだからな」

 これまた何故かしたり顔でどや顔だ。


 ギルドへの報告の帰り道で、研究部のリーダークレアはこう言って慰めてくれた。


 「あら?私たちも一緒にその捜索には付き合わせてもらうわよ?”マナ汚染による集団幻覚の可能性もある”なんて言われちゃったら、どうしても”彼女はいた”って証明したくなるじゃない?」


 「ね?良いでしょ?特捜野郎さん」コロコロと笑いながら帰って行きやがった。


****


 ターニャの崩落遺跡から帰還して三週間が経った。Aチームからの白い眼を気にしながら、私たちは色んな史料を持ち帰ったわ。


 Aチーム曰く「そんなガラクタまで持ち帰るんか?大層なこってすなぁ」とか。


 のんびりしてたから、ずた袋に目いっぱい詰め込んでやったわ。

 「運んで頂戴ね?」って素知らぬ顔して言ってやったわ。(フフン)


 まぁ、実際はそんなガラクタ、ポイポイ捨てちゃうんだけどね?

その中の一部から、「変質したマナの痕跡」が検出されたっていうのよね。


 「一応は調べたのよ?その報告書がコレね」私は持って来た報告書をバヌトゥクに広げて見せた。


 しばらくして「わかんねよ。ンなもん。」と報告書の束を机に放りだした。


 まぁ(匙を投げるだろうなぁ)とは、最初から思ってたけどね?


 ――以下、報告書の抜粋――


 ……観測されたマナ波動は、通常の起動反応と一致せず、むしろ複数の異なる年代に由来する波長が重なっていた。

 特に、紅色タイプの残留マナに関しては、約千年前の記録と酷似したマナスペクトラム核を持つ。

 本件について第三魔導研究班は以下の仮説を提出

 「当該地点において、時空構造が局所的に“薄く”なり、特異な波動干渉により三つの異なる“今日”が重なってしまった可能性がある」

 

 一部ではこれを“次元振じげんしん”と仮称し、時空の“共鳴現象”の一種と位置付ける意見もある。


 なお、この現象が引き起こされた際、同地点にて“何か”が観測されたとの報告あり。


 詳細は現状では情報不足のため未解析。

 ……現在は“偶発的な誤作動”と処理され、一時的な観測ミスとして封印保留中。


――以上――

報告者:クレア主任研究員


放り出された、報告書の束をクレアはトントンと揃えながら思いを馳せた。

(あれが幻だったなんて、誰が信じるものですか――)

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