エピローグ その名を知る者は、もういない



 


とあるむら

もなきおかに、ひとりの旅人たびびとこしろしていた。


 


「なあ、じいちゃん。むかしって、“神様かみさま”がいたの?」


 


神様かみさまか。いたとも。……いや、いた“とされていた”とうべきかのう」


 


少年しょうねんは、かがやかせてじいちゃんにつづける。


 


「そのかみって、どこいっちゃったの?」


 


「さあなぁ。ある突然とつぜんいなくなった。

 そしてな、そっからが……本当ほんとうに“自由じゆう時代じだい”のはじまりだったんじゃよ」


 



 


おかうえ

かぜけるその場所ばしょに、ちいさな石碑せきひがある。


 


は、きざまれていない。


だが、そこに手向たむけられるはなえず、

たずねるものもなく、それでもれることのないしずかな場所ばしょ


 


まるで――だれかの“意思いし”だけが、そこにのこっているかのように。


 



 


そして、かぜなかで、かすかにこえひびいた。


 


『……えらつづけろよ。おれがいなくなっても――

 おまえたちの“世界せかい”だろ?』


 


それが、かつて“かみころしたおとこ

ルシアス・エルバートの、最後さいご言葉ことば


 


いまでは、そのものは、もういない。

けれど、かれえらんだ世界せかいは、たしかにここにある。


 


 


──かぜ今日きょうも、やさしくいていた。


 


【 完全完結 】

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『最強だったけど隠してたら、なぜか全員が俺を崇め始めた件』 まさやん @makunnnn

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