2章模倣騎士

おっさん、説明する

教室の空気に、締めの一打が要ると感じた俺――戦士科クラス担当、教諭の桐谷は、黒板をコツンと叩いた。


ガヤついていた教室が、わずかに静まる。喧騒の余韻が、空気にまだ残っている。


照人をはじめ、模擬戦を終えた生徒たちは疲れと高揚の余韻の中だ。今なら、ちゃんと聞く。


「――まずは、模擬戦、お疲れさん。よくやった。

そのまま流れで、ひとつ大事な話をする。明日から始まる“クラン勧誘期間”について、だ」


クラン。

こいつら1年にとっては、まだピンと来ていない言葉かもしれない。

だが、学園生活において、それはただの「部活動」なんて軽いもんじゃない。

“生き残りをかけた選択”にすらなる。


「まず、クランってのはな。ざっくり言うと“冒険者の小集団”、あるいは“戦闘チーム”だ。学園ではそれを正式に“認可団体”として運用している。理由は簡単。強くなるには、個人じゃ限界がある。だがな――」


俺は手を組んだ。


「――条件さえ満たせば、誰だってクランを“作れる”。上級生だろうが、1年だろうが関係ない。力と信用さえあれば、な」


どよっと空気が揺れた。

中には「自分で作る気か?」と隣とヒソヒソしている奴もいる。まあ、いい。


「クラン設立の条件はひとつ。“派生職”のメンバーが最低5人以上。これだけだ。つまり、一定以上の戦力があるって証明が必要なんだ」


照人や天野あたりが真剣な目つきになったのが、分かる。


「そして当然だが、クランの掛け持ちは不可。入ったからには責任を持て。仲間と足並みが揃わねぇ奴は、どこにいたって浮く。クランの中じゃ、なおさらだ」


一呼吸置いて、板書を始める。

黒板に大きく、アルファベットを書き連ねた。


[クランランク制度]

・Aランク(3クラン)

・Bランク(6クラン)

・Cランク(12クラン)

・Dランク(24クラン)

・Eランク(40クラン)

・Fランク(無制限)


「クランには“ランク”がある。学園が公式に認める階級制度だ。Fが一番下、Aが最上位。Aランクなんてのは、もう“精鋭中の精鋭”だな。プロを目指す上級生でも、そこにたどり着けるのは一握りだけだ」


「各ランクには人数制限もある。Fランクは最大10人。そこから一段階上がるごとに、5人ずつ増えていく。つまり、Aランクなら最大で35人構成だ」


教室がざわつくのも当然だ。

Fランクで始めたとしても、上がるには実績と時間と信頼がいる。


「このランクが何を意味するか――それは“待遇”に直結する。続きは次の話でじっくり話そう。だが覚えておけ。“クラン”ってのは、名乗っただけじゃ意味がない。“育てる”もんなんだ」


俺は手元の資料を閉じて、生徒たちの視線を受け止めた。


「明日から、上級生たちが動き出す。勧誘、接触、誘い文句、時には挑発もあるだろう。お前たちがどう選ぶか――それが、これからの戦い方を決める。……甘くねえぞ」



「――で、だ。ランクが上がると、どうなるか」


黒板の下にもう一段、待遇一覧を書き足した。

教室の空気が、今度はピンと張り詰める。

誰もが、黒板を食い入るように見つめている。


[ランク別クラン待遇]

・Aランク:35人まで。最上級施設。学園代表として活動。

・Bランク:30人まで。専用棟+予算+学園認可ミッション優先。

・Cランク:25人まで。クラブ区画に専用棟あり(共有設備あり)。

・Dランク:20人まで。プレハブクラブ棟の一室を貸与。

・Eランク:15人まで。空き教室1つ使用可能。

・Fランク:最大10人。施設なし。完全自力。


「Fランクはまあ、立ち上げ直後の“フリークラン”だ。特に施設も支援もない。部室どころか、集まる場所すらない。ミーティングは中庭か、空きベンチってとこだな」


少し笑いが起こる。だが、ここからが本題だ。


「Eランクに上がると、まず“空き教室”が一つ使えるようになる。それだけでも大きい。書類の保管、作戦の相談、居場所ってのは、戦力になる」


「Dになると、クラブ棟のプレハブの一室が与えられる。ここから先は“クランが一目置かれる側”になってくる」


「C以上になると、専用のクラブハウスが与えられる。屋内訓練場、戦略ルーム、魔術装置の設置すら可能になる。しかも、学園が優先して支援物資やミッションを割り当てる」


「B以上は……そうだな。もう“学生”の範疇じゃねえな。外部依頼を請け負い、事実上の半プロだ。Aクランに至っては、遠征・交渉・魔導機関との接触まで担う。ぶっちゃけ、俺ら教員でも手が届かない特権を持ってる」


書いた板書をしばし見せる。誰も喋らない。


「……学園には“クラブ区画”ってエリアがある。Cランク以上のクランはそこに拠点を持てる。売店や食堂にも顔が利く。学生証を通せば割引も入る。こういう“小さな待遇”の積み重ねが、地力になるんだ」


俺は黒板に背を向け、生徒たちを見渡す。

照人も、天野も、皆がそれぞれ何かを考えている顔だった。


「いいか、もう一度言うぞ」


「クランは“誰にでも作れる”が、“育てるのは地獄”だ。仲間が必要だ。派生職が5人以上。信頼と方向性が一致した、戦える奴らを集めろ」


「もちろん、地獄みたいな苦労もある。けどな――楽しめ。これはゲームじゃないが、“自分が主人公”って感覚を持てるのは、こういう組織に属した時だ」


少し冗談めかして笑ってやると、教室の空気が緩んだ。


「以上で説明は終わりだ。明日からは、上級生の“勧誘”が始まる。声をかけられたら、そのクランがどういう方針で、何を目指してるのか。ちゃんと聞け」


「選ばれる側、でもあり、選ぶ側でもあるんだ。……いいな?」



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作者のためのマスクデータ

遊部 照人(あそべ てると)

遊び人成長率(Lv10/10)

ATK:F

VIT:G

AGI:E

TEC:D

INT:G

REG:G

LUK:C

(獲得経験値10%UP)


ミームナイト成長率(Lv12/20)

ATK:D

VIT:F

AGI:D

TEC:B

INT:F

REG:F

LUK:C

(戦闘時ヘイトによりステータスUP最大15%)


天野 縁(あまの えにし)

戦士成長率(Lv10/10)

ATK:D

VIT:D

AGI:E

TEC:E

INT:G

REG:F

LUK:F

(装備によるスタミナ低下軽減(小))


鎧武者成長率(Lv4/20)

ATK:C

VIT:B

AGI:E

TEC:D

INT:F

REG:E

LUK:E

(重量装備によるスタミナ低下軽減)


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