第12話 幸恵と話をする(みのり編)

「みのりはあの男の人と知り合いなの?」


「ううん、大学に入学するまでは知らなかったよ」


 小学校、中学校、高校は別々で、大学になってから初めて顔を合わせた。性別=男ということだけがわかっている。

 

「どうして、声をかけていたの?」


「あの人を一目見たときから、心はおおいにときめいているんだ・・・・・・」


 前髪で顔を覆いつくしているところから、他人と完全に違うオーラを出しているのを感じた。あそこまでやる人は、これまでに出会ったことはなかった。


「みのりは少数派に引き寄せられるんだね」


 万有引力の法則でりんごが地面に落ちるように、少数派にターゲットを絞っている。変えようとしても、絶対に変わらないところといえる。


「そうだね。多数派には興味ないかな」


 多数派=面白みに欠けるというイメージを持つ。機会と過ごしても、ストレスをためていくだけ。


「みのり、アプローチするつもりなの?」


「うん。絶対にするよ。最終的に嫌われたとしても、後悔はしたくないんだ。やることをやって、前に進みたいの」


「みのり、素直に応援するよ。うまくいくといいね」


「ありがとう・・・・・・」


「やり取りを聞いているときに感じたのは、対人スキルの低さかな。小学生よりも、低そうに思えたんだけど」


 話の脈略がおかしい部分もあった。コミュニケーション能力はかなり低いと思われる。


「独りぼっちでいる時間が長いといっていた。対人経験は皆無なのかもしれないね」


「みのり、どうしていくの?」


「攻略法はわからないけど、自分なりにやってみるよ。小細工についてはやらないつもりだよ」


 小細工を施しても、距離は開いていくだけ。ありのままでいるのが、一番いいと思われる。


「みのり、遊びに誘ってみたらどうなの?」


「挨拶するのも難しいのに、遊びに誘ったらどうなると思う。彼の体に生えている、毛は全部抜けてしまうよ。それに、段階をいきなり飛び越える女は、非常識レッテルを張られるよ。ある程度のレベルまで話せるようになってから、遊びに誘おうと思っているの」


「交友関係も少なそうだし、ゆっくりでよさそうだね」


「あんまりゆっくりしていたら、誰かに取られるかもしれないよ。ある程度のスピード感は必要じゃないかな」


 高校時代はあまりにスローペースだったため、第三者に先を越されることとなった。二人はラブラブであったため、チャンスが訪れることはなかった。

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