第13話 家族とも距離感

 授業で嘘を書いたあと、他の科目でレポートを提出するようにいわれた。


 レポート提出の期限は来週。余裕を持たせるためにも、土日には終えてしまいたいところ。


「達、夕食できたわよ」


「わかった。すぐに行く」


 家族との会話についても、必要最小限にとどめている。余計なことをいって、喧嘩の種をまくのは避けたい。 


 沈黙を貫いたまま、母の作った料理を食べ進めていく。


「大学はどうなの?」


 頭の中で話すことを整理してから、問題の起こりそうにない部分だけを話した。


「特に問題はないけど・・・・・・」


 簡単なやり取りが終わると、テーブルは再び沈黙に包まれる。会話NGという、縛りをかけているかのようだ。


「うちはお金に余裕がないから、留年しないようにしてね」


 一回でも留年すれば、退学を余儀なくされる。4年間で卒業するのは、絶対条件である。


「ああ・・・・・・」 


 会話に神経を使っているからか、料理の味はほとんど感じられなかった。無味無臭さながらの夕食を、満腹感を満たすためだけに食べていた。


「前髪をいい加減に切りなさいよ。顔を見せないようにしている男なんて、絶対に避けられるよ」


 他人から避けられるために、前髪をあえて伸ばしている。就職活動をスタートさせるまでは、のばしたままでいるつもりだ。


「あんた、一度くらいは彼女を作ってみなさい。視野を広げることは、将来の役に立つと思うよ」


「気が向いたら・・・・・・」


 彼女を作るよりも、独身で終えてしまいたい。対人関係を極端に避ける男は、そのようなことを考えていた。


「おねえちゃんは陽気に過ごしているのに、あんたはどうして陰気になってしまったの」


 姉は陽気なのではなく、能天気の究極体になっているだけ。あんな人間にはなるのは絶対にごめんだ。

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