第40話 真実の香り

 サンシャインポート一階。総合案内所では、ガラス越しに受付のスタッフと話すことができる。

 ここは迷子センターも兼ねていて、カウンターの奥にある扉から、子供の声が漏れ聞こえている。迷子になった子供のための部屋があるのだろう。


 案内所のそばにはソファとテーブルもある。そこに、背中を丸めて慎さんは座っていた。お土産のお菓子の入った袋が足元に置かれている。

 慎さんは、やって来る僕たちに気がつき立ち上がる。


「君たちか……。雫は見つかったかい?」


 僕は首を横に振る。慎さんはその反応を予期していたように「そうか」と頷き頭をかいた。見つかったら連絡が来るだろうし、期待はしていなかったのだろう。


「あの、少し聞きたいことがあって」

「何かな?」


 どう話すべきか迷う。泉さんが「確かめたいこと」……どう切り出すべきか悩む。

 泉さんが、間合いに入るように一歩前へ出る。気圧された様子で、慎さんは半歩下がった。


「アスレチックルームに行く前は、お土産屋で買い物をしていたんですよね?」

「ああ、そうだけど……」


 慎さんは戸惑っていた。質問の意図がわからないのだろう。


「そのあとは、まっすぐ娘さんたちに会いに?」


 慎さんはこくこくと頷く。


「アスレチックルームについたのが十四時三十分。買い物が二十分。その後アスレチックルームに向かう……」

「……間違いないよ」

「なるほど。では確かめさせてもらいますね」


 そう言うや否や、泉さんは足元のお土産の入った袋に手を伸ばした。

 そして、当然のように菓子箱を取り出していく。


「ちょ、ちょっと君。なにしてるんだ?」


 慎さんは怒っているというより困惑しているようだった。泉さんは無視して空っぽになった袋をひっくり返す。


「何探してるの?」

「レシート」


 ああ、時間を確かめたいのか。捨ててる可能性もあるが……そうだったらゴミ箱もひっくり返しかねない勢いだ。幸い、そうなる前に袋の中から一枚の紙がはらりと落ちてくる。


「あった」


 けれど泉さんが手に取ったのは別の紙だった。もう一枚、お菓子の箱の裏に張り付いていたようだ。

 まじまじと観察し、わざとらしく首をかしげる。


「変ですね。ここには、購入した時間は十四時四十分とありますが」


 慎さんは頬を引き攣らせた。

 僕も驚く。四十分ということは、十分のタイムラグがあった? でも、なんでそんな嘘をついたんだ?


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