第12話 「だいたいわかった」

 新たな指令を仰せつかった。


 久野巧について調べること。

 泉さんの命令を果たすべく、僕は翌日動き回った。

 彼のクラスである二年A組に聞き込みに行き、司書の先生にも話を聞いた。


 結果、わかったことは以下の通りだ。

 正確に言うと、久野巧はこの学校の生徒ではない。なぜなら、すでに退学になっているからだ。理由は出席日数が不足していたこと。不登校自体は一年生の後期から始まっており、二年生になってから本格的に来ない日々が続き、つい先日退学が決まった。


「それと……退学になったのは、一昨日」


 つまり、事件が発覚した日だった。

 これには驚いた。展示コーナーの件が、ますます彼と関係しているように思えてくる。


「……なるほどね」


 お昼休み。集めた情報を、教室で泉さんに報告する。泉さんはお弁当を食べながら黙って僕の話を聞いていた。

 そして咀嚼し終えると、呟く。


「だいたいわかった」

「え? わかったって……なにが?」

「犯人」


 僕は目を見開く。もう事件の謎が解けたのか? 情報を集めた僕は、何も解けていないのに……。


「えっと、ごめん。全然わかってないんだけど……。結局、この久野巧さんって人が事件にどう関係するの?」


 僕だって、もう無関係をは思っていない。一ノ瀬先輩の反応もそうだし、退学したのが事件が発覚した当日というのも気になる。


「……説明は、一回でいいよね」


 泉さんはあくびを噛み殺しながら返事をした。今は話す気はないようだ。


「それより、図書委員の当番表貸して」


 いきなり話が変わる。けれど、彼女のこういう対応には慣れっこだった。僕はおとなしく彼女の命に従い、鞄からカウンター当番の書かれたプリントを取り出し、手渡す。

 泉さんはそれを一瞥すると言った。


「雛子君、今日の放課後、カウンター当番ね」

「え? 僕の担当は今日じゃないんだけど……」


 放課後の当番は、確か君島先輩と一年生の誰かだったはずだ。


「この一年生の人と代わってもらって。あと、今日はカウンターから絶対離れないで」


 理不尽かつ意味不明な命令だった。だが、何か意図があってのことなのはわかる。それに、答え合わせはそう待たされずにすみそうだ。


「間宮先輩たちに伝えて。閉館の時間になったら、図書室に集合」


 泉さんはいちごオレを飲み干し、口を拭って言う。


「――真実を教えてあげる」

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