第13話 推理/「真実を教えてあげる」
窓から射す夕日の光が図書室の中を照らしていた。
室内には、僕のメッセージで集まった、間宮先輩、君島先輩、一ノ瀬先輩の三人がいる。
間宮先輩は腕を組み、二の腕を神経質に指先で叩いている。君島先輩は曖昧な笑みで皆の様子を眺めていた。一ノ瀬先輩は珍しくぼんやりした表情でどこか遠くを見ていた。
本来は閉館後に図書室に残ることはルール違反だが、今回は鍵を閉める係は僕と君島先輩であることを利用し、少しの間私的に利用させてもらうことにした。一応、司書の先生にもきちんと許可は取ってある。
「ごめん。お待たせ」
そう言って、泉さんが図書室に入ってくる。彼女は「あとひとつ、調べたいことがある」と言って、放課後になるとさっさと学校を出ていってしまった。
五分遅れだったが、来てくれて助かった。こっちは集めた手前、待たせている間、気まずいといったらなかったのだ。
遅いよ、という僕の非難をかわす様に、泉さんは三人の前へ出る。僕もそのあとを追いかけ、三人の様子を見れる位置についた。
「一応言っておくけど、私は別にあなたが言った言葉をそのまま信じるつもりはないわよ」
遅れたことへの𠮟責の代わりに、間宮先輩が厳しい口調で言う。
「わかっています。みなさんが納得できるような推理をするつもりです」
そう言ってコホンと咳払いし、泉さんは滔々と話し出す。
「まず、前提を確認しましょう。今回の事件は放課後の図書室で起きた。事件の内容は展示コーナーが荒らされたこと。開館中はほかの生徒が多数おり、騒ぎは起きていないことから犯行は行われていないと考えられる。発覚したのは翌朝。発見者は、早朝に図書室に入室した君島先輩、続けてやってきた間宮先輩のふたり。鍵は放課後にかけたあと翌朝まで開けられていないと考えられることから、犯行が可能な人物は、閉館後に見回りをした一ノ瀬先輩と雛子君。もしくは翌朝の君島先輩と間宮先輩と考えられる。……ここまではいいですね」
泉さんの言葉に、僕たち四人はうなずく。先輩方は、泉さんの力量をはかるように泉さんを見つめている。
「私は、調べた結果、四人の中から犯行可能な人物をひとりに絞るのは不可能だと断定しました。証拠はなく、四人には等しく展示コーナーを荒らす機会があった。アリバイや証拠から犯人を見つけるのは不可能です」
「なによそれ。いきなり敗北宣言?」
「いいえ。ですから私は、ひとつの謎に注目して考えることにしました」
「謎?」
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