第2話

「やる気がねぇなら辞めちまえ!!」


「じゃあ辞めてやるよ!!」



2年前に俺はこの一言で会社を辞めた。

売り言葉に買い言葉とはわかってるが我慢ができなかった。

こっちだって少ない給料で頑張ってたんだ。手取り9万ぽっちで年の昇給が千円、ボーナスも寸志レベルとか今考えてもおかしい給料だった。


それを5年間も働いてるんだぜ?

親にも友達にもさっさと辞めて他の会社で働いた方が良いって言われたけど、当時の俺は頑なに聞き流していた。


そこでどうしても働きたかったわけでもない。ただ惰性に生きていただけだ。大学に行ってまで勉行したくないと思い、高校卒業してすぐ働いて勤めた先がブラック。

辞めたとしてすぐ別の会社で働ける訳じゃないと思っていたんだ。


わからないなら聞けっていうのに聞いたら聞いたで、忙しい、あとで見る、なんでこれがわからないの、とこっちを蔑ろにされるだけだった。


だからある日ぷっつんと切れてしまった。



辞めたことに後悔はないがこれからどうしようかと思っていたが親に頑張ったんだからゆっくりしてくれと言われてしまった。

俺はその言葉に甘えて再就職することなくニート生活をするのであった。


幸いさいわ働いてた頃は給料が少ないからあまり使わないようにしていたので貯金は100万ほどあった。


仕事がなく時間があり余った俺はVTuberの配信を見たりアーカイブを見たり、推しのイラストを描きながら毎日を過ごしていた。


イラストは描きあげてすぐSNSで上げていった。

最初は少ない反応だったが徐々に反応が増えていった。

そんな生活を3ヶ月ほど過ごしていると俺のもとにイラストを描いてくださいといった依頼がやってくるのだった。


俺は驚きつつも受けることにした。貯金が100万といっても食費や生活費、その他諸ですぐ消しとんでしまうからだ。

3ヶ月ですでに貯金の半分が無くなっていた。



依頼の内容は周年記念の一枚絵を描いてくれとのことだった。

原案とかすべてこちらに任せるとのことだったのでいくつかの案を出し、相手方にラフを見せ、ブラッシュアップさせていきながらイラストを完成させたのだ。


これがどうやらバズったらしい。


配信に俺のイラストが載り、そのイラストで作られたグッズが販売された。配信中に俺の名前が上がり、俺のSNSに注目が集まり、フォローする人達が増えたのだ。


それ以降一枚絵だったり、新衣装のデザインだったり、多種多様に依頼がやってきた。


それら全ての依頼を拝見し精査し、無理のない範囲で依頼を受けまくった。


だいたい1週間に1枚のペースで描きあげていた。


俺も知らなかったが、どうやら1週間に1枚というペースは早いらしい。ニート生活をしてるから時間だけはあるのだ。それをイラストに注ぎ込むことでこの早さになってると俺は思う。

こうして俺はイラストレーターとして有名になっていた。



こうしてニート生活……ニート生活なのだろうか?を1年半ほど過ごしたある日のことだった。




1通のDMが俺のもとに届いた。

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