「丘」という象徴の描き方がとても綺麗で、強く心に響く作品です。
主人公はとにかく「快楽」だけを得て生きていたいと考える人間だった。苦しいことや辛いことなんか回避して、ただ楽しいことだけがあればいいと感じている。
そんな彼は、部活動に勤しむ学生たちが「丘」に登ることで毎日体を鍛えている姿を目にする。そんないかにも苦しそうなことをして、彼らは何を求めているのか。
心の片隅でそのことを気にしつつ、彼は成長していく。もちろん、快楽だけを追求する姿勢は変わらず、どんどん「悪いもの」へとのめり込んでいく。
「幸せとは何か」、「真に人生を豊かにしてくれるものは何か」
そんな問いが、「丘」という象徴を使って、とても綺麗に描き出されていました。
「ひたすら快楽だけを求めている主人公」と、「あえて苦難な選択をすることで、その先にある『何か』を掴もうとしている人々」という対比。
やがて彼が迎える結末。快楽だけを追求した先で頓挫し、「もう一つの道」である「丘」によって人生を再生しようとしていく。
テーマ性が濃く、本編を通して自分の日常や人生を見直してみたくなります。辛いと思っていても、やはりあえてその道を選ぶことの意義は何か。
より充実した人生を送るために、苦難と快楽について考えるきっかけを与えてくれる作品です。