第11話 戦いの後、そして新たな影

 ヴァルハラによる星都銀行と警視庁のメインネットワークへのサイバー攻撃は完全に停止した。上海のヴァルハラ拠点も制圧され、日本の重要インフラと経済の危機は回避された。403の地下本部には、激戦を終えた後の静けさが戻っていた。


 林は、ディスプレイに映し出される正常に戻った星都銀行のネットワーク図と、警視庁の安定したシステムを眺め、深く息を吐いた。隣では、速水がキーボードに突っ伏して眠りこけている。葉加瀬もまた、眼鏡を外して目を閉じ、疲労困憊といった様子だった。


 その時、オフィスの扉が開き、武藤が戻ってきた。彼の服は多少乱れていたが、表情はいつもの飄々としたものに戻っていた。


「やあ、お疲れさん。星都銀行のシステムは無事だったようだな」


 武藤の言葉に、葉加瀬がゆっくりと目を開け、眼鏡をかけ直した。


「キャップ……ご無事でしたか。東京の司令塔、どうやって……?」


 葉加瀬の問いに、武藤はにやりと笑った。


「ああ、少々手荒な真似もしたが、無事に全員確保した。向こうの司令塔は、まさか廃墟の雑居ビルに単独で乗り込まれるとは思っていなかったようだな」


 武藤はそれ以上語ろうとせず、奥の自席へと向かった。林は、武藤が単独でヴァルハラの司令塔を制圧したという事実に驚きを隠せなかった。


 数時間後、上海からの元村からの報告が入った。


「ヴァルハラの上海拠点を完全に制圧した。指揮官の身柄も確保し、全てのデータを回収した。日本の重要インフラへの攻撃を企てた動機も、全て解明できるだろう」


 元村の声は冷静だったが、その奥に安堵の響きが感じられた。


 事件は解決した。林は、この一連の出来事を振り返る。わずか数週間前まで、自分は普通の捜査一課の刑事だった。それが今、警察の組織図には載らない「403」の一員として、国家レベルのサイバーテロと戦い、それを阻止した。


 翌日、403の地下オフィスは、いつもの日常を取り戻していた。速水は、ヴァルハラから回収した膨大なデータの解析に取り掛かり、葉加瀬は、星都銀行のシステムに残された微細な痕跡のクリーニングを行っていた。反町はトレーニングルームで汗を流し、片岡はまるで何事もなかったかのように冷静に銃器のメンテナンスを行っていた。


 林は、自分のデスクで、今回の事件の報告書をまとめ始めた。まだ慣れないスマートグラスを装着し、ディスプレイに表示される情報を整理していく。


 戦いが終わったからといって、すべてが平穏になるわけではなかった。これからも戦いは続いてゆくだろう。

 ヴァルハラのデータの解析が終われば、新たな巨悪が浮き彫りになるやもしれん。

 彼らの戦いは、はじまったばかりだ。

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403電網捜査隊 上伊由毘男 @skicco

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