第40話花火と急展開
屋台を一通り楽しんだ後、俺達は花火の時間に合わせて移動することになった。
皆は花火に合わせて河川敷やら見晴らしの良い高台にやら移動するわけだが、俺は穴場を知っている。
「鈴森、こっちだ」
鈴森の手を引いて境内を抜ける。この裏山は人が少なく、かつ見晴らしがよい。花火を見るには絶好のスポットだ。
山道を通るため足元が少し不安だが、二人で手を繋いで慎重に歩けば大丈夫だ。
「ちょっと、どこに行くつもり?」
「いいからついてこい。花火、見たいんだろ?足元気をつけろよ」
俺は鈴森と共に花火を見るため、山に向かった。
「……へぇ」
自分たちが祭りの熱に浮かされていたとも知らずに。
▼▽
数分程歩くと、林を抜けて開けた景色が見えてくる。街の景色が一望できるこの場所は知る人ぞ知る穴場。ここなら花火が良く見えるはずだ。
「鈴森、こっち」
花火まではあと数分。じきに大きな音と共に夜空に大きな花が咲く。
「……ん?」
待っている間、俺の耳はかすかな足音を捉えた。地元の人間にも少なからずこの場所を知っている人間はいる。それなら別に問題はない。
問題は野生動物だった場合。最近こそ話は聞かないが、数年前は野生動物の被害が出たという話があった油断はしないほうがいいだろう。
耳をすまして林の中を見つめる。一つ、二つと増えていく足音に俺は違和感を覚えた。
「よぉ眼鏡野郎」
その瞬間、俺は血の気が引くような感覚に襲われた。
背後からかかった声に振り向くと、そこには久しく見ていなかったチンピラ先輩の姿。不意打ちの蹴りを腹部にくらってしまい、俺は地面に叩きつけられた。
「風来くん!」
俺の元に駆け寄ろうとする鈴森を数人の男達が妨害する。恐らくチンピラ先輩の連れなのだろう。
人数にして4人。一人で相手するには少々骨の折れそうだ。
「前は随分とやってくれたからなぁ……少しはお返ししねぇとなぁ!」
俺を狙ったチンピラ先輩の蹴りが飛んでくる。腹部の痛みはあったが、大振りなおかげでかろうじて躱すことができた。
間髪入れず、連れの数人が追撃と言わんばかりに襲い掛かってくる。俺は抵抗して一人に蹴りを入れることができたが、残り二人の打撃をくらい、木の幹に体をぶつけた。
肺にたまっていた空気が一気に抜けて、呼吸が浅くなる。呼吸を整える間もなく、俺は殴打を体で受け止めることになった。
「やめて!警察、呼ぶから!」
「呼んだところで到着する頃にはこいつはボコボコだろうなぁ!」
悔しいことに、チンピラ先輩の言った通りだった。このまま戦っていても埒が明かない。どうにかこの状況を打開しないことには俺も鈴森も無事ではいられない。
俺はチンピラ先輩が鈴森に気をとられた一瞬を狙って動き出した。連れの一人を蹴り倒し、囲みから抜け出す。そして鈴森を抱きかかえると、そのまま全速力で駆けだした。
「ちょっと、風来くん!?」
「しっかり捕まってろ!逃げるぞ!」
追手を振り切るために一度林の中を駆け回り、境内を目指して走っていく。今は逃げ切ることが精一杯だった。
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恋人をNTRされた帰り道、学園の『美毒姫』を拾った。俺は彼女の解毒剤らしい。 餅餠 @mochimochi0824
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