第14話 行動リスト

 日記から抜粋したロザンナの1週間の行動を古い順に並べた。

 関係ないと思われる物は省いた。


 お茶会。

 夜会。

 馬での遠乗り。

 買い物と服の採寸。

 慈善事業と午後3時から王城。

 教会でお祓い。

 お祓いの翌日、暗殺未遂。


 こんなの誰が見ても一目瞭然。

 へぼ探偵でも何が怪しいか分かる。

 お祓いが、原因だろう。

 それしかない気がする。


「馬鹿ですの? 脳みそないとしか思えませんわ。お祓いが関係してるって、誰でも分かりましてよ」

「もちろん、調べたさ。教会でお祓いしてくれたのは大神官。もちろん、他の神官もいる場所でだ。未婚の女性が男とふたりきりなどという状況はない。神官の誰かが懸想した可能性も調べた。全員シロだ」


 そりゃ、調べるよな。

 ツンデレーヌの知識では、教会に行くのはかなり多い。

 お悩み相談とか、カウンセリングみたいな感じだ。

 あと、治療だな。

 不運なできごとが起こると、お祓いをする。


「ロザンナさん、何でお祓いしたのかしら?」

「不吉な物を見てしまって」

「それはどういう物かしら?」

「何かが動いて、はっきりとは見えなかったんです。後で思い返したら、気のせいな気がしてます」


 気になるが、はっきりと見えなかったか。

 まあ、ちらっと何かが動いたって気がすることはあるよな。

 特に外では。

 何かが揺れるとか、影が偶然できたとか。

 野生動物って、こともある。


「それは外ですの?」

「はい」


 うーん、第一印象では、凄く怪しいんだけどな。

 でも、あり得ない話ではない。


『可愛い子ぶって、気に入らないですわ。きっと、ヒューリー様に私怖いとか言って抱き着いたに違いありませんの』

『ツンデレーヌなりの事件の考察はないのか?』

『どうせ、あばずれが色香を振りまいて、男が狂って暴走したのですわ』

『恋愛関係の動機はあり得るかも』


 でも、動いた何かって、普通に考えたら、密偵だよな。

 ロザンナはこのことを他の人に喋ってるはず。

 となると、密偵って線は消える。

 大多数の人間に知られた時点で、口封じの意味はない。


「その不吉な物を見てから、お祓いに行くまでに、誰かに話しましたの」

「はい、はっきりと覚えてないですけど、5人ぐらいには喋ったと思います」


 ロザンナの性格なら、そうだろうな。

 密偵の線はないか。

 でも、保留にしておこう。

 あと考えられるのは、何かを拾ったとかの線だな。


「事件の少し前に、何かを拾ったという記憶はございませんの?」

「ありません」


 この線もなしか。

 秘密の計画を聞いたとかいう線もあるな。

 だが、ロザンナなら、他人に喋ってるよな。

 聞かれたと思ったが、実際は聞かれてないっていう線もある。


 密偵と恋愛関係、これ以外だと、昔の恨みとかだな。

 昔に遡るのは骨だ。

 時間的に足りない。

 魔導師になって、処刑が伸びるらしいから、とりあえずこのリストを潰そう。

 それで駄目だったら、昔の記録を調べる。


「ツンデレーヌ、お前、賢くなったな」

「ああ、俺も驚いてる」


「賢者の石なんて、眉唾だと思ってた」

「誰だってそう思うよ」


 俺もそう思う。

 憑依も信じられないけどな。

 都市伝説みたいのなら、霊が乗り移ったって話はあるけど。

 憑依の方があり得る話か。


「失礼ですわね。わたくし、今も昔も馬鹿ではございませんのよ」

「馬鹿だった。今は賢いのは認める。魔導師のことが詐欺だとしても、それを考えつくなら、賢いと認めざるを得ない」

「そうだな。あれを馬鹿と言わず何を馬鹿という。今は悪辣だ。まるで、魔物王。食ったのは、賢者の石じゃなくて、魔物王の卵じゃないだろうな」


「誰が詐欺師で魔物ですの。あまり失礼なことをおっしゃると、どうなっても知りませんわよ。ヒューリー様、机の引き出しの底が二重になっていますわよね。何を隠しているんですの」

「ぐっ、何でそれを?!」


「魔導師の手は長いのですのよ」

「机のことは、誰かに聞いたのか? 王城は魔法が使えないのだぞ」


「庭なら問題ありませんわよね」

「いや、魔法の魔力も弾く。例えば火球を撃つと、王城の結界に当たれば、かき消される」


「火球を燃やし続けるには、魔力が必須ですわ。ですが、音は違いますのよ。発生すれば、魔力は要らないですわ」

「くっ、魔導師を舐めていた。お前、化け物になったな」


「ええ、賢者の石を飲みましたからですわ」

「この場で、殺した方が良いような気がしてきた。だが、大人しく殺されたりしないんだろうな」

「ほほほ、魔法無効化の結界を破る手段など、いくらでもありますわ」


 はったりだけど。

 うん、魔導師になって、王家に仕えると、王城は危険地帯になるな。

 魔法が使えないと、ツンデレーヌは無力だ。

 短剣の一刺しでお陀仏になる。

 魔法無効化の結界を破る魔法を即急に作る必要がある。


 ええと、魔道具か魔法か分からないが、この結界は魔法に干渉してるんだよな。

 ジャマーみたいな原理かな。

 ジャマーを打ち消すのは、シールドだな。

 電波だと、電波吸収素材。

 魔力吸収素材があれば解決。

 ええと、体内の魔力は乱されてない。


 これは、所有者の法則だな。

 魔法を放つと、投げ捨てたことになるのだろう。

 だから、干渉できる。


 となると、身体強化系は、結界の中でも使えるのか?

 無詠唱でやってみた。

 駄目だ。

 魔法にした時点で所有権が消えてる。


 魔力吸収結界の魔法を作ろう。

 あれっ、魔力って何?

 そんなのイメージできない。

 素粒子?

 エネルギー?

 科学では説明できない。

 よって、イメージできない。


 難事件だな。

 魔力解明事件。

 即急に必要だが、時間が掛かるみたいだな。

 殺されないように気をつけよう。


 魔法無効化があるってことは、少なくても魔力が何か分かっている人がいるんだな。

 秘術だろうか。

 きっと、教えてはくれないのだろうな。

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