第2話 

やってしまったわ。


休日、約束の時間に帰宅。

玄関を開けて数秒、不自然な静けさ。

靴をそろえながら、最近の自分を振り返る。


仕事が。趣味が。友人が。

言い訳は、逆効果。


さて。


ひとまず荷物とアウターを所定の位置へ。

手洗いうがいをしに洗面所へ。

暗いリビングの奥にちらり、と視線だけ向けてみる。

ソファーの上には丸くなった黒い物体。


ごめんね。

心の中で呟いて。

タオルでしっかりと水気を拭き取ったら、いざ。


冷蔵庫を開けてごそごそ。

食器棚の左上を開けてごそごそ。

久しぶりのメンバーを召喚。


ボウルに卵を割り入れて。

たっぷりの砂糖と牛乳。

カシャカシャと軽快な音が静かなリビングに響いていく。


黙々と作業して早小一時間。

洗い物を進めながら、一足先に香ばしい香りを堪能する。


もぞり。

視界の端で、微動だにしなかった物体が動き始めた。

彼の珍しい顔が見られるまで、あと少し。

私は口元が緩ませる。


おはよう。

今日はどんなコーヒーを淹れようかな。




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僕と君の話 美桜 @momiom

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