第26話 シウファの父カイラム
「マ、マヒト。父のカイラムです」と大男を紹介する。
ゴリゴリにいかつく全く容姿がシウファに似ていないのに驚いた。
「カイラムや。よろしゅう婿殿」
「き、気が早いよお父さん。か、彼氏だから」
「彼氏と言えば未来の婿殿やろ。なあ婿殿」
ガハガハと大声で笑いながら、分厚く大きな手で俺の背中をバンバンバンと叩いた。
心臓と肺と胃の位置が変わるのではないかと思うほどの衝撃が加わる。俺はその勢いに押されよろめく。
「おいおい婿殿。そんなにヒョロヒョロで大丈夫かいな。まあええ。明日からワイがシゴいたるわ」
またガハガハと大きな笑い声を上げながら、家の中に入って行った。
「も、申し訳御座いません」とシウファが頭を下げる。
俺は「大丈夫だから」と言いながら背中を押さえる。
そんな俺の姿を好奇心に満ちた4つの目が見つめている。
「ねぇちゃん」
「ねえさま」
「「この人だぁれ」」とシンクロする。
「このお兄ちゃんは、わたしの恋人よ」
「ねぇちゃん」
「ねえさま」
「「やっと結婚するの」」とまたシンクロする。
「け、結婚はまだしないのよ。仲が良いだけだから」
「「なぁんだ」」
「そんなことより、二人ともちゃんとマ、マヒトさんにご挨拶をして」
「僕はノクス。よろしくマヒト」
ノクスは友達が帰っても最後まで公園で遊び続けているやんちゃ盛りの生意気な小学生といったところだ。
「ネ、ネクタでしゅ。よ、よろしくおねがいしましゅ」
ネクタはシウファの幼女版といった感じで、目鼻立ちも良く似ている。
それに初対面で緊張しているのだろう、話し方もそっくりで俺は思わず笑顔になってしまう。
「よろしくな。ノクス。ネクタ」
「おうっ!」
「ひゃい!」
早く早くと言ってノクスは俺の手を引き、ネクタがシウファの手を引いて家に招き入れてくれた。
シウファの父親が大きいからか、室内はかなり広く天井が高い造りになっている。
置かれているソファやテーブルに椅子のサイズはまちまちだが、全体的に統一感がありセンスの良さが窺える。
それに室内は温かく優しい匂いに包まれていた。
奥から「ノクス。ネクタ。こっちに来て手伝ってちょうだい」と声がする。
「「はぁい」」と言って二人は奥の部屋に消える。
「あの声は母です。今、夕食の準備をしてくれているので、あとでちゃんと紹介しますね」
「わかった」
「じゃあわたしもお手伝いしてきますので、マヒト様は御寛ぎ下さい」
「シウファ。また、敬語になってるよ。俺達は恋人同士っていう設定なんだからおかしいだろ」俺は意地悪っぽくシウファに囁く。
「そ、そうでした。こ、恋人という設定でした。気をつけます」
シウファはまた頬を赤らめる。
「じゃ、じゃあ行ってくるから。歩いて疲れているだろうから、マヒトはゆっくり休んでて」
「シウファは、またドジして皿を割らないようにね」
「だ、大丈夫。たぶん・・・・・・」と恥ずかしそうに言って母親の手伝いに台所へ入って行った。
部屋に俺は残された。
一人ではなく、あの大きく豪快に笑うなぜか関西弁の親父さんと。
「どないしたんや婿殿。そんなとこにボケーっと突っ立ってんと、こっちきて座んなはれ」
「ではお言葉に甘えて」そう言って、今の体に一番合いそうな椅子に座る。
「うちの母ちゃんの料理は美味いでぇ。魔族一や!もうちょっと待ったって。先に酒でもどないや婿殿」
体と声の圧に気圧される。
「い、いえ。み、未成年なもので」
「未成年?」カイラムの表情が険しくなる。
「じょ、冗談ですよ。俺は酒が飲めなくて、お断りする時、いつも未成年なんでって言うんでつい」
カイラムはそうかいなと言って破顔する。
「婿殿。冗談を言う時はもっと自信を持って言わな。スベッてまうで」
「そうですよね。ちょっと緊張してまして」
「緊張なんか置きなはれ。いずれは家族になるんやから。ガハガハ」
「ハハハハハ・・・・・・」
父親の存在を知らずに、母さんと二人で暮らしだった俺は、大人の男と会話をすることに慣れておらず、それに苦手で、学校の担任との接し方もぎこちなく上手く距離感が取れなかった。
相手が人間ではなく魔族とはいえ、シウファの父親ともそれは変わらなかった。
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