第25話 シウファの実家へようこそ

 「ねぇシウファ」


 「ひゃい。何で御座いましゅか」


 「その・・・・・・。まだ緊張してる」

 シウファは少しビクッとする。


 「ひゃい。魔王族の方と御一緒ですと緊張しましゅ・・・・・・。それに任務が任務でしゅし」


 「俺はそんな大層な者ではないよ。向こうの世界ではただの高校生だし、任務は大変かもしれないけど、もっとリラックスしてよ。でないと疲れていざという時、力が出ないよ」


 俺はシウファに笑いかける。


 「そう言って頂けると幸いでしゅ・・・・・・」


 「アルトスの前だとビシッとしているのにね」


 「それは慣れといいましゅか。緊張より集中が勝つと言いましゅか」


 「俺の前ではシウファらしくしてもらえると嬉しいな」


 「ひゃっ、ひゃい。頑張りましゅ」


 俺はまだまだ打ち解けるには時間がかかるのかなと、シウファに気付かれないように苦笑いを浮かべた。


 街並みを抜け田園地帯を歩いた。


 日が暮れ始めた頃、小さな村落にたどり着く。


 「御疲れ様でごじゃいました。ここがわたしの生まれ育った村で御座いましゅ」


 通っている高校の恒例となっている10キロマラソンより疲れた。多分、生まれてから最長の距離を歩いたに違いない。


 俺はゴールを前に一息ついた。


 「家はもうすぐで御座いましゅ」


 残りの体力を振り絞って歩を進める。


 村に入ると、「久しぶりだなシウファ。元気だったか」と、会う者会う者にシウファは声を掛けられている。


 シウファは緊張が解れた表情で噛むことなく「元気、元気」と応えている。


 俺は少し離れた場所に立ってその様子を見ていた。


 自然に振舞うシウファを目にし、俺にもこんな風に接してくれる日が来ればいいなと、独り言ちた。


 「申し訳御座いません。なにせ久しぶりの里帰りなものですから」


 「今のシウファがいいな・・・・・・」

 

 「何か仰いましたか?」


 「別になにも」

 俺はシウファに微笑みかけた。


 「あの大きな木の下にあるのがわたしの家です」


 シウファは少し小走りになる。


 遅れないように俺も残されたスタミナを使って後を追う。


 「ただいまぁ」とシウファはハッキリと大きな声で玄関の扉を開く。


 小さな影が二つシウファめがけて飛びついた。


 「ねぇちゃんおかえり」

 「ねえさまおかえりなさい」


 シウファはその場にかがみ込み、二つの影を抱きしめる。


 「ただいま。ノクス。ネクタ」


 続いて大きな影が一つ扉を屈むようにして現れ、腹に響く超低音の声で「シウファおかえり」とシウファの頭に16オンスのボクシンググローブ程の大きな手を乗せた。


 「お父さん。ただいま」


 「こんなところではなんだ。早く中へ入りなさい。母さんもお待ちかねだ」


 「その前に手紙にも書いたマヒトさ・・・・・・。いや違うマヒトを紹介するね」


 シウファが慌ててこちらに走って来る。


 そして、耳元で「申し訳御座いませんマヒト様。わたしうっかり御説明するのを忘れておりました」と囁く。


 「えっ。何が?何かまずいの」


 「アルトス様からマヒト様の身分を隠すように言われておりました」


 「わかった。シウファに合わせればいいんだね」


 シウファはもっと小声で囁く。


 「それがその申し上げにくいのですが・・・・・・」


 「どうしたの?」


 「マヒト様をどう説明すれば良いか分からず。見栄を張って、その・・・・・・」

 ここにきてシウファが言い淀む。


 ピンときて俺は言う。


 「彼氏を連れて行くって言ったの」

 

 シウファの真っ白な頬が夕日よりも赤く染まる。


 「そっ、そっ、その通りでごじゃいましゅ。申し訳御座いましぇん。申し訳御座いましぇん」とシウファ何度も頭を下げる。


 「だ、大丈夫だから、俺はシウファの彼氏の振りするから。ね。怪しまれるから、頭下げるのやめて」


 父親と弟妹を見ると明らかに怪しそうな目でこっちを見ている。


 「シウファ。とりあえず紹介して」


 「ひゃっひゃい。りょ了解致しましたぁ」


 「シウファ。また緊張して話し方が戻ってる。怪しまれないように落ち着いて」


 シウファは目を瞑り、「ふぅーぅ。ふぅーぅ」と大きく二回深呼吸し、目を大きく開き、「では行きましょう」と、俺の手をめいいっぱいの力で引いて行った。

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