【短編】人生を賭けてやり込んだVRMMOの世界に転生した不遇テイマー、死ぬ気でテイムした最強モンスター娘に死ぬほど愛される
風遊ひばり
ヤンデレを育てていたのは、俺自身だったらしい
まえがき
なんとなく思いついて、特に深く詰めもせずに殴り書きしたものです。ヤンデレモンスター娘を書きたくて……。
今のところこれだけしか考えられていないので一話完結の短編としていますが、反応が良ければ続きを書こうかと思います。(他の作品を完結させたらになりますが)
————————————————————
『テイムに失敗しました』
「くそがっ……!」
そのポップアップを見た瞬間、俺は悪態をつきながら一目散に撤退を選択する。ちょっとでも迷えば、間違いなく死ぬからだ。
直後、目の前にいるこの世の者とは思えないほど邪悪な姿をしたモンスターから放たれた攻撃が地面を貫き、底が見えないほど深い奈落を作り出す。
一瞬前まで俺が居た場所を貫いたその攻撃に巻き込まれなかったことに安堵しつつ、迷わず俺はバトルエリアから撤退した。
「はぁ……またダメだったか、これで何回目だ?」
街に戻って来た俺は、誰に言うでもなくそんな言葉を漏らす。
ここはVRMMORPG『
いや、
そこまで人生を費やして来たからこそ、俺は先ほどのモンスターがどうしても諦められなかった。
『神や魔王、プレイヤーによって生み出された恐怖や悪意が行き場を失い、具現化した存在』……それが先ほどのモンスターだ。名前すらない……が、プレイヤー達からは『
初期状態では、マリスは非常に美しい女性の姿だ。色素が抜けたかのような真っ白の肌に、宇宙の瞬く星を散りばめた黒紫の髪。
輝く銀河のような瞳には、誰もが言葉を失い、見惚れてしまうだろう。
しかし、その性能は凶悪極まるものだ。
全ステータスはストーリー上のラスボスである魔王を遥かに凌ぎ、DPSチェックによる強制全滅はもちろん、回復不可のデバフやスキル封じ、ダメージ反射すら使用してくる。
さらにはHP50%以降、10%減る度に姿が変化していき、徐々に人間の姿からかけ離れていくのだ。
最終的には、もはや言葉では言い表せないような……なんというか、見ただけで正気度が削られそうな姿となる。強いて言うなら、巨乳とくびれたお腹周りだけが人間味を残している部分だ。
俺がマリスを求める理由はいくつもある。
『不遇』と言われるテイマーで見返してやりたいこと。
モンスター娘がこの上なく好きだということ。
人生を賭けているのだから、途中で投げ出したくないこと。
マリスを諦めたら人生が終わると本気で思っている俺は、再びマリスへと挑んでいく———
♢♢♢♢
———挑戦回数、212863回。ついにその時が来た。
「うっ、おらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
崩壊する地面を蹴り、荒れ狂う数えきれないほどの触手の殴打を掻い潜り、空気を焼く無数のレーザーをアイテムで躱しながら右手をマリスの胸元に叩きつけ、『テイム』を発動する。
一瞬の沈黙。
カクンッと脱力して行動を止めたマリスを見て、俺は瞬時に距離を取って次の攻撃に備えていた。
通常なら、超重力による広範囲吸引からの空間ごと次元の狭間に閉じ込める即死攻撃のはず。一瞬でも迷えば死ぬからこそ、何度も何度も……それこそ数えるのも諦めたほど繰り返して来た回避行動だった。
視界の端に、ポップアップが現れる。
それを確認するよりも早く、俺はマリスの背後へと回り———
「はっ……?」
思わず足を止めた俺は、あまりにも間抜けな声を出していただろう。何せ、5段階の形態変化を終え形容しがたい姿になっていたマリスが突然人間の姿へと戻り、俺に向かって片膝を着いたのだから。
身体の震えを抑えながら視線を動かせば、そこには『テイムに成功しました』の文字が。そして———
「この身を貴方に捧げます、ご主人様」
それからのことは、良く覚えていない。
かろうじて一番近くの街に戻り、宿屋でリスポーン地点を更新し、『召喚可能モンスター』の欄に名前が空欄のまま追加されていたそのモンスターに、『マリス』と名前を付けたところでようやく実感が湧き、俺は歓喜の咆哮を上げたのだった。
来た……来た来た来たっ!
ついにやってやったぞ! あのマリスを……俺がテイムしてやった! 誰も倒せない最強のモンスターを、ついに手に入れたのだ!
もう誰にも『テイマーは不遇』だなんて言わせない! 勝てるものなら勝ってみろ! ラスボスだろうがランキング1位だろうが、誰もマリスに敵うわけがない!
身体が震え、これ以上ない多幸感に包まれる。
脳内に直接麻薬をぶちまけたかのような快楽が全身を包み、なんでもできそうな万能感と優越感に満たされる。
と同時に、俺はどこか満足していた。
それこそ、時間をかけてプレイしていたゲームをクリアしたかのような感覚だ。
何だかすべてがどうでもよくなった俺は、ひとまず休憩しようとログアウトすることにした———
のだが。
「っ……あれ……?」
意識が現実に戻り、ヘッドギアを外した瞬間、激しい眩暈に襲われた俺はそのままベッドに倒れ込んだ。
頭を金づちで叩かれてるかのような激しい頭痛と吐き気、心臓がギュゥッと握りしめられているかのような苦しさに、息すらできない。
意思に反して手足はピクリとも動かず、VRから戻ったはずの視界は再び暗闇に閉ざされ———
そして俺は、27年の人生を終えた。
♢♢♢♢
「———ま」
遠くから、呼びかけるような声が聞こえてくる。
「ごしゅ……ま———」
「んっ……」
「ご主人様、起きてください」
「えっ、あれ……?」
ふと目を覚ますと、視界を埋めるのは白と青のコントラスト。ぼやける目を擦りよく目を凝らす。
「どうかしましたか? ご主人様」
視界の半分を占める白色から現れたのは、銀河のような美しい瞳。その瞳を、俺が見間違えるはずもない。
間違いない。マリスの瞳だ。
どうやら俺は、マリスに膝枕されているようだ。
ふむ……視界の半分はマリスの下乳だったか……じゃなくて。
あれ?
俺は確かログアウトしたはずで……なぜマリスがここに!?
俺は彼女の膝から跳ね起き、辺りを見渡す。
透き通る程の晴天と、どこまでも続く草原。
遠くには荘厳な山脈が並んでおり、何より空にいくつも浮いている島と明らかに地球の者ではない巨大なドラゴンのような生物が飛んでいる。
今まで、親の顔より見た光景……間違いなく、ここは『
……確か俺はログアウトして……あぁ、そうだ。急に苦しくなってそのまま意識を失ったんだ。あんな経験は初めてだけど、俺で生きていられるとは思えない。
かといって、こんなはっきりした夢なんてのもないだろう。
俺は、一つの考えにたどり着く。それは即ち———
「俺は『
おいおいおい……なんだそれ最高じゃねぇか!
俺の人生の半分は……いや、9割は『
現実世界では何も無い俺が、ここでは培ってきたスキルも、技術も、そしてテイムしたマリスもいる!
もう現実を見る必要もない!
いや、ここが
「あぁ、素敵な笑顔ですご主人様♡」
「おっ……?」
ムニィッと極上の感触が背中に押し付けられる。どうやら背中からマリスに抱き着かれたようだ。ゲーム内最強モンスターとはいえ、マリスの見た目は超絶美人である。慣れていない俺にはなかなか刺激だ。
「すごい……まさかマリスがこんなにスムーズに喋れるなんて……。しかも、最初から好感度が高いじゃねぇか」
「変なことを仰いますね。私がご主人様を愛するのは当然のことかと」
「愛するって———っ!?」
肩越しにマリスへと振り返り目が合った瞬間、俺は底知れぬ恐怖に身体を硬直させた。銀河のように輝く彼女の瞳の奥に、狂気的な何かを感じたからだ。
テイムできてない?
いや、そんなはずはない。じゃないと、彼女がバトルエリアの外に居ることの説明ができないのだから。
なんだ……?
マリスは何を抱えている……?
「マリス、教えてくれ。お前の内心を」
「何を仰るのですか? 私はご主人様と同じ気持ちです♡」
「同じ気持ち、だと……?」
「212863回」
「えっ……?」
「ご主人様が私を求め、私を殺しにかかった回数です。私の身体と心にハッキリと刻まれたそれは、当然全て覚えていますよ♡」
「っ!?」
「私を瀕死になるまで痛め付け、そして自分の物にせんと手を伸ばし……あぁ! 思い出しただけでゾクゾクしてしまいます! 私はよく理解しました……これがご主人様の愛の形なのだと! あれだけ必死に私を求めてきたご主人様が愛おしくて堪りません♡」
「そ、そんなつもりじゃ───」
「『そんなつもりじゃない』とは言わせません。私の身体には、もう戻れないほどはっきりと刻まれてしまったのですから……♡」
「 」
「ですから、私もご主人様を心の底から愛します。212863回に渡ってご主人様から刻み付けられた愛を全て返せるように、更なる愛を頂けるように……ご主人様、これからもずっと私と
ズン───と物理的な重さを感じるほどのプレッシャーが放たれ、マリスの姿が変化していく。
頬を染め、恍惚の表情で真っ直ぐに見つめてくるマリスに、俺は人生で初めてはっきりとした命の危機を感じた。どうやら第二の人生は、初めからクライマックスのようだ。
【短編】人生を賭けてやり込んだVRMMOの世界に転生した不遇テイマー、死ぬ気でテイムした最強モンスター娘に死ぬほど愛される 風遊ひばり @Fuyuhibari
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