第4話 エピローグ
501号室のカップル……最近は忙しく過ごしていた。
互いの家に挨拶をして、結婚の日取りを決めた。そんなとき、以前働いていたダンボール会社から忙しくなったので働いてくれと連絡があった。
男の出勤を見送った女は公園に向かう。そこにはラジオ体操をしている老人の姿。
「おじいちゃん、体は大丈夫? 癌なら辛いでしょうに」
「桃香ちゃん、それが癌細胞がほとんどなくなってね。痛み止めも飲んでないのだよ」
「ええ?! 奇跡ね。医学の進歩かしら」
医学のおかげではなかった。
女は上の階、601号室の老人と仲良くなった。自分のことを孫の桃香に似てると言って、色目を使っていた気持ち悪い老人……。
本当はエッチな配信をしている桃香ちゃんのことだと知り、逆に腑に落ちたのだ。なので彼氏が買い込んだDVDを全てもらってもらったのだ。
ついでにセクシードールも一緒に。
なんだか彼氏を人形に取られそうで怖かったのだ。それくらい精巧な人形。彼にはリサイクルショップに出したと嘘をついた。
「よかった。気に入ってもらって」
「ありがとう。最近は人形に、話し相手になってもらっておる」
(本当はわしが注文したのだが……日本中を恐怖とパニックに陥し入れたあのQ社。階を間違えただけでもよしとするか)
老人は昼夜セクシードールと愛し合い、疲れると桃香ちゃんのDVDを見た。残りわずかの人生、エロ生活を思う存分楽しんでいた。
一ヶ月後、病院行くと、なんと……癌はほとんど消えていた。
*****
あれから一ヶ月……世間を震撼させる事件が人々の話題の中心になっていた。
Q社があっという間に倒産したのだ。
理由は、信じられない誤配が続いたため。文房具や本を注文したら、生きた蛇やトカゲ、蜘蛛、ゴキブリなどが届く。
ぬいぐるみを注文したのに、本物の猫が届き、猫アレルギーの子供が発作を起こした。そしてついに、目の前に蛇が現れてショック死した女性……。
一日でこんなことが100件近く発生したのだ。
もちろん悪魔のQ助の仕業だった。
体の不調を訴えても、契約だからと働かされ辞めさせてもらえない。悪魔だから死なないだろと言う。
「ううぅ、こいつらの方が悪魔だ!」
悪魔は思い出した。7階に住む殺人犯が、大きな蜘蛛を見てショック死したセンセーショナルなニュースを……。
****
101号室に住んでいた自殺願望の男はまだ生きていた。あれから引越しをした。
世界は捨てたもんじゃないと思った。
死のうと思った日に、綺麗な女性の命を救った。これはきっと意味がある。
僕が死にたいと思っていた一日は、君が必死で生きたいと願った一日だった。
小説かなにかに出てきた言葉……自分が身をもって体験するなんて。
ベランダから落ちてきた女性。あれから何回か彼女と会っている。うまくいくかいかないかはわからない。
でも人生はそれだけじゃない。
うまくいかなくたっていい。それでも彼女は特別な人だ。僕に生きる意味を教えてくれた人。
空から降ってきた天使に違いないのだから。
おわり
なにかの誤配 うみたたん @motodaaa212
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