宇宙防衛隊 ~情熱の丘編~

クロノヒョウ

第1話




 月面に着陸した大きな宇宙船からおりてきたのは二人の男と巨大なロボットだった。

 一人は屈強なブルーの体に馬と魚を混ぜたような顔、もう一人はブルーの男の半分ほどの背丈しかないが丸々とした体に大きな耳が特徴の象のような顔をしていた。

「さっそく始めるか」

「ああ。えっと、何だったっけ」

 象のような男が腕につけていたタブレットを操作する。

「情熱の丘」

 すかさずブルーの男が言うと象のような男は耳をパタパタと動かしていた。

「それだ。ヒントは情熱の丘だったな」

 二人はゆっくりと月面を歩き始めた。


 宇宙防衛隊本部にSOSを発信してきたのは地球人だった。

 すぐに隊員たちが集められミーティングがおこなわれた。

「その昔、なんでも地球人にとって大切な物を月のどこかに置いてきたそうだ。それを今地球人が必要としているらしい」

 隊員たちは真剣に話を聞いていた。

「そこで地球人は我々に助けを求めてきた。任務は簡単だ。月からそれを回収して地球に運んでほしいそうだ」

 本部長が隊員たちの顔を見ながら話す。

「ただ、当時その計画にたずさわった地球人はすでに年老いてしまってはっきりとした隠し場所を思い出せないらしい」

 本部長の言葉に顔を見合わせざわつく隊員たち。

「情熱の丘。それだけしかわからないらしいが、誰か探してきてくれないか」

 そう言われて手をあげたのがこの二人だったのだ。



「でもどうやって探すんだよ。月に情熱の丘なんてないぞ」

 象のような男がブルーの男に聞いていた。

「そうだな。でも俺にはなんとなく目星はついている」

「本当か?」

 相変わらず耳を動かしている男。

「ああ。きっと月で一番大きな丘のことだ」

「ということは、あの高台か」

「ああ」

 二人は迷いなく月の高台へと向かった。

 しばらくして高台に到着すると、さっそく二人についてきていた巨大ロボットが何かを見つけたようだった。

「もう見つけたのか」

 巨大ロボットに近づく二人。

 二人の目の前にはこれまた巨大な箱が現れた。

「何なんだこれ」

「さあな。とにかく、さっさと済ませようぜ」

 巨大ロボットは何かの特殊な金属でできたようなその箱を宇宙船まで運んでいった。


 無事にその箱を地球に届けた二人。

 地球の日本という国の政府の人間は大喜びし、二人に巨額な報酬を渡そうとしたが二人は断わった。

「地球人らしいよな。金を渡そうとするなんてさ」

 帰りの宇宙船内で象のような男がつぶやいていた。

「まったくだ」

「宇宙防衛隊は金なんて要求しないのにさ。あ、そういえば、お前、何で情熱の丘があの高台だとわかったんだ?」

 象のような男が聞くとブルーの男はすぐに答えた。

「それこそ地球人らしいだろ? 地球人は物の名前や場所の名前、人の名前まで略したり呼び方を変えたりしている。通称とかいうやつが好きだからな」

「確かに、考えてみればそうかもな。あのホイヘンス山を『情熱の丘』と呼ぶほうが覚えやすかったのだろう」

「ああ。それより本部に連絡だ」

 ブルーの男が言うと象のような男が頷いた。

「宇宙防衛隊本部へ。ただいま任務を終え帰還中です。無事に発見、地球に届けてきました」

『了解。さきほど地球からも報告を受けた。ご苦労だった』

「あ、本部長、ひとつうかがってもよろしいでしょうか」

『なんだ』

「あの箱の中身って何だったのでしょうか」

『ああ、あれか。あれは大量の米だそうだ』

「米!?」

 二人は驚いたのか顔を見合わせていた。

「米って、地球人が主食としている物ですよね」

『地球人の中の日本人がな。日本では今米が不足して困っているらしい。そこで政府は思い出した。何十年か前に特殊な保存用の箱に大量の米を入れて月で保存していたことをな』

「それで慌てて宇宙防衛隊に」

『そういうことだ。とにかく米が値上がりして国民が困っていたらしいからな。日本のお偉いさんも喜んでいたよ』

「了解です」

『ご苦労様』

 通信を終えたブルーの男はいまひとつ浮かない顔をしていた。

「米が値上がりか。俺たちに渡す報酬があるのなら米の値上がりをおさえられるだろうに」

「まあまあ、俺たちには関係のない話さ」

「本当に、地球人っていうのは変わってるよな」

「ああ、まったく理解できないな」

 二人は地球の、日本の米不足が解消することをただ祈るしかなかった。



          完





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