第36話 交錯する現実と幻想
まえがき
山尾隆行視点です。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺とあおいは、数人のトップクラスの冒険者を従え、ダンジョンの20階層へと踏み込んだ。当時、この階層こそが攻略の限界地点——未踏の領域だった。
癒しの泉は、各階層に存在し、ダンジョンの重要な機能の一部として機能している。とくに10階層までは死のリスクがないとされているが、それは癒しの泉から供給されるエネルギーによるものらしい。
この泉の力を利用すれば、ダンジョンの外でもスキルを使用可能にできるかもしれない。しかし、あおいは問題を提起した。
「そのエネルギーを抽出すれば、10階層まで死のリスクがない仕組みに影響を与える可能性がある——それを崩したくはない」
彼の懸念はもっともだ。
だが、さらに調査を進めると、11階層以降も10階層と同じエネルギー供給元を使用していることが判明した。
20階層まで来ても結果は同じだった。
エネルギーの供給源はここの階層まで共通している。
10階層までの安全機構を維持しながら泉の力を活用する——その方法を探るべきなのかと思われた。
しかし、あおいは少し考え込んだあと、口を開いた。
「やっぱり25階層まで行く必要がありそうだな」
「何言ってるんだ?……それに、お前の口ぶりだと、25階層で何かが変わるってわかってるみたいじゃないか?」
「そりゃね。エンチャントワールドの熱狂的なファンだから」
そうか、エンチャントワールドでは25階層からエネルギー供給元が分離されるのか…。
あおいの話を聞いているうちに、だんだんと理解できてきた。今までの経験からして、おそらくこういうことなんだろう。
「ゲームと現実は違うだろ?」——もうそんな言葉は口にしない。
現実の世界観が、ゲームのそれとあまりにも酷似していることを俺は思い知らされている。いや、それどころか——もしかすると、本当にリンクしているのではないかとさえ思い始めている。
「ん?だとすれば俺たちは25階層まで攻略する必要があるのか?」
現在、最下層は20階層——それなのに、あと5階層も攻略しなければならないってことか? 予想外の展開に俺は息を飲む。ここまで来るのにどれほどの労力を費やしたか。 今の俺たちは、すでに十分トップ層と呼べる存在だ。だが、それだけでは終われない。 もしこの先へ進めば——俺たちは、世界のトップ層にだって間違いなくなれる。
それどころか、俺たちが挑もうとしているのは、ダンジョンの外でのスキル使用——そんなこと、これまで誰も成し遂げたことがない。まさしく、前代未聞だ。
◇◆◇◆◇◆
「やっぱり25階層で、今までの階層とエネルギーの供給元が分離してるね。……本当にゲームの通りだな。」 あおいは俺たちに向けてそう言った。まるで当然のことのように。
「ただ……公爵様がラスボスとして出てこないだけましかな?」
あおいは肩をすくめて、冗談めいた口調で続けた。
「それで、どうやって癒しの泉からエネルギーを抽出するんだ?」
俺の問いかけに、あおいは答えた。
「癒しの泉は、過去の記録を蓄積してる。縁のある故人と再会することもできるんだ」
癒しの泉は、強い想いによってその力を発揮する。そこに刻まれた記録は、単なる映像や幻影ではない。過去そのものが再現されるのだ。
故人への想いが強ければ、泉を通じてその姿を目にすることができる。彼らは夢のように儚く、その存在は幻のように揺らめくが、会話を交わすことは可能だ。そのため、泉は失われた者への再会の場として機能し、多くの者がこの奇跡に救われてきた。
しかし、この泉にはもう一つの側面がある。過去の記録は、犯罪者の特定や捜査にも利用されている。被害者やその家族の強い執念が泉に作用すれば、失われた過去が浮かび上がるだけでなく、捜査官の追求によっても再現されることがある。執念の強さや対象との関係性によって、映し出される映像の精度は変化するが、断片的であれ真実の一端が示されるのだ。
この機能はダンジョン内の犯罪抑止にも大きな影響を与えている。泉がすべてを記録し、いずれ明かされる可能性がある以上、悪事を働く者はそれを恐れずにはいられない。 そのため、ここでは陰謀や隠蔽が困難であり、泉が「見ている」という事実が、静かな抑止力として作用しているのだ。
「俺は、想いの強さでエネルギーを抽出できると考えてる」
あおいの言葉を聞いた俺は、思わず遮るように口を開いた。
「待て、それって本当にエネルギーを抽出してるのか?だって、過去の映像になっちまうだろ。いや…もしかして、これはすでに抽出されてるってことなのか? と、とにかく…エネルギーが変換されてるんじゃねぇか?」
「そうだ。抽出されたエネルギーは変換まで行われてしまう…。だが、10階層までのことを考えてみろ。そこでは死のリスクがない。それは単なる仕組みじゃない——俺たちの『死を恐れる想い』と、ダンジョンの意思が合致した結果なんじゃないか?」
そう言うと、あおいは少し考え込んだあと、俺たちを見渡しながら口を開いた。
「このダンジョンには、特殊な法則がある。10階層以下では死の概念が曖昧で、仮に命を落としても復活できる。これはただのゲーム的な仕様ってわけじゃない。おそらく、明確な仕組みがあるんだ。」
その言葉に俺は息をのむ。あおいはさらに続けた。
「鍵となるのは『癒しの泉』だ。あの泉は、過去の記録を映し出すだけじゃない——生命の痕跡すら保持している可能性がある。つまり、泉の力がダンジョン内の復活システムに関与しているんじゃないか、ってことさ。」
確かに、それなら理屈は通る。俺たちは考え込む。あおいはさらに言葉を重ねた。
「10階層以下では死のリスクがない。それって、俺たちの『死を恐れる想い』と、ダンジョンの意思が合致した結果なのかもしれない。もしそうなら、癒しの泉のエネルギーを抽出することは、この仕組みに直接干渉することになる——それが本当に可能なのか、慎重に試す必要があるだろうな」
あおいは息を整え、しばし沈黙した後、俺たちをまっすぐ見つめながら、はっきりとした声で言い切った。
「このエネルギーを抽出し、ダンジョンの外でスキルを使う……。そして、この方法は、ダンジョン内に限れば——人を生き返らせることもできる」
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あとがき
この作品は、まだ人目を忍び、死に体(しにたい)状態です……。
ぜひ、この物語・作品を生き返らせるために、皆さんの評価・ブックマークをお願いします!
私が喜んで生き返ります!
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