第14話 ミ~こそ久遠華怜でぇ~す!
「いや、俺たちはこの階のボスに用があってね」
親指でボスの扉を差し、槇原に答えた。
槇原は、ボスの扉の方へ視線をやり、目を見開き驚いた様子で、
「お前、めちゃくちゃ強かったんだな。いや、俺の『蒼煙の翼』――あの最高の飛行機――の仕組みをすぐに見抜くだけはある」
なんかモンスター釣り用の飛行機にめちゃくちゃ格好いい名前付いてないか?
「うわっ、本物の貴族じゃねぇか」
少し驚いた様子の声が響いた。
控えめにしたつもりなのか、小声だったが、その声は俺の耳に届いた。
そちらに目をやると、そこにはマサシとタケシのコンビがいて、彼らの目線がこちらに向けられているのがわかった。
口ぶりから、どうやら俺に向けた言葉を発しているようだった。
「んん~ん?本物の貴族だって、やはりミーからあふれ出る貴族感に、ついにお前たちも感服した~のですね」
俺が独特の口調をする男に視線を移すと、二角帽子にナポレオンジャケットを纏い、片手に一輪の赤いバラを携えた姿が目に飛び込んできた。
その男を見た瞬間、思わず俺は口に出してしまった。
『うわっ、めっちゃおフランスだ』
「おお、ミーのことをご存じですか?やはりあふれる気品が、ミーの知名度をさらなる高みへ導いたのです」
えっ?と、俺は彼のその言葉に驚いた 。
「そうです。ミーこそ、あの名高き偉大なる古豪の貴族、オフラン・ドゥ・シャンパイン・ル・クラクルージュ十三世……の末裔なのです」
めっちゃ最後だけは小さな声だったな。
たぶん、聞き取られたくなかったんだろう。
でも、俺には、しっかり『末裔』って聞こえたぞ。
てか、名前がオフランって…、てっきりおフランスに反応したのかと思ったよ。
それにしても、めちゃくちゃ似非貴族っぽいな。
大人の俺は、紳士な態度で接することにしよう。
「うわ~、すごい。高貴な方なのですね。姿恰好、名前、自己紹介どれをとっても似非貴族っぽいのに!」
華怜さんの火の玉ストレートがさく裂してた。
「そっ、そうですよね。ミーから溢れ出す高貴さが、あまりにも際立つので、時には似非貴族に見えてしまう――それもまた、最高のほめ言葉として受け取っておきましょう。美しきマドモアゼル」
オフランは、かなり引きつった顔をしながら、肯定すべき部分だけを受け止めた。
それにもかかわらず、尚も貴族としての風格を失わず、華怜さんに対応していた。
「似非貴族にしては、態度を崩さずに頑張ってるな」
オフランの後ろで、マサシが小声で呟いた。
しまいには、他の人にも聞こえるよ?
「さすが、貴族だな。こんな人とパーティー組んで俺はやっていけるかな?」
隣の槇原がそう言って、不安そうな顔をしていた。
「槇原は、オフランとパーティー組んだのか?」
「そこにいる、マサシとタケシと組んだのだけど、オフランが加わってきたんだ」
ふ~ん貴族なのに、ソロだったのか…。
貴族なのに……とは、俺は思わないことにした。
だって俺、紳士だからね。
「まぁ、大丈夫だろ。華怜さんへの態度を見れば、プライドを傷つけられても高圧的な暴力に訴えることはなく、むしろ穏便に事態を収めようとしてる。オフランのプライドってのは、貴族であることを見せつけることに重きを置いてるんだ。つまり、無害な貴族ってわけだよ」
オフラン自身、周囲から「似非貴族」と呼ばれていることに、もう気づいているのだろう。彼は内心の劣等感に抗い、何よりも「自分こそが真の貴族である」と示すことにこだわっているようだ。
突然、オフランは俺たちに背を向けた。
「よし、みんな!これから狩りに出るぞ!何せ私のような高貴な存在が率いる以上、成功は約束されている。だが、君たちもちゃんと役に立ってもらうからな!共に私の輝かしい名を歴史に刻もうではないか!」
その時、彼の肩がかすかに震えているのが見えた。
大声で宣言してはいるが、どこかぎこちなく、不安げな響きにも似た、内面の自信のなさが伺えた。
すると、隣から一声が聞こえた。
「カナタさんの洞察力、さすがですね。感服致しました」
オフランの側にいた華怜さんが俺の方へ近づいてきて、感極まった表情を浮かべていた。
――あっ、これ、俺が槇原に話した内容が全部、オフランに聞こえてたってことか……。
「今から蒼煙の翼を使ってモンスターハウスから釣りをするのか?」
「興味あるのか?見せてはやりたいが…」
俺の問いに答えた槇原は、その返答を終えると、様子を窺うかのように、ちらりとマサシたちの方を見た。
少し考え込むような仕草を見せたマサシは、俺たちの同伴に同意してくれた。
「俺たちの稼ぎの邪魔にならないよう、少し離れてくれるなら問題ないぜ。なぁ、タケシ、お前もそれでいいだろ?」
「そうだな。むしろ、ボスを討伐するようなやつが近くにいる方が安全だ」
「マドモアゼル、ここで目を離してはなりませんよ。ミーである私、オフラン・ドゥ・シャンパイン・ル・クラクルージュ十三世が華麗に戦う姿を目に焼き付けるのです。剣を振るうこの瞬間、あなた方が私の優雅さに見惚れてしまっても、もちろん構いませんとも!」
「こいつ置いていこうかな」
マサシは小声で言った。
「末裔をつけ忘れてるね」
俺がボソッと言った。
その途端、オフランの肩がびくっと震えた。
俺の声だけ聞こえているね。
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