第21話

 その部屋は船になっていて、釣り具と餌も置いてある。部屋の仕切りの向こう側には釣り堀があった。 


「海水のようだね。ほら、水の中を泳ぐ魚も海水魚だ。潮の香りもするよ」

「ほんとねえ」 


 早速と、長谷則さんと一緒に釣りを楽しんだ。


 太刀魚、真鯛、マゴチ、シロギス、アジ、スズキなどが釣れ、全て料理は長谷則さんがやってくれた。勿論、食べきれない。


 夕食を済ませた後で、また散歩をする。けれども、私と長谷則さんは疲れたので新宿駅へと戻ってきてしまった。


「あそこのレンタルビデオショップへ行こうよ」


 長谷則さんが、急に立ち止まってダダをこねた風になる。長谷則さんはどうしても自分だけが行きたいところがあると、ダダをこねた風になるのだ。でも、断ってもさっぱりしとしていたので、別に本当にダダはこねていないようだ。


 なくて七癖とは言ったもので、長谷則さんの癖の一つに私はいつの間にか、気が付いていた。

 

 OUTLINEというゲーム世界にだけ、存在したレンタルビデオショップ。たまにこういうお店がある。きっと、ゲームマスターか幸多田インダストリー社の社員の誰かが、ここゲーム世界に勝手に造ったのだろう。何故そう感づいたのかというと、記憶は定かでないが、ここは確かに元はビルかそれか別のお店だったはずだ。


「たまに、部屋に篭って明かりを暗くして、映画浸りもいいんじゃないかな?」

「そうね。今日の散歩は終わりね」


 確かに、仕事をしないで毎日が散歩だけというのもあまり楽しくない。私と長谷則さんは、レンタルビデオショップに入って、しばらくお気に入りの映画をそれぞれ見つけあった。


 店内は、まるでホラー映画のワンシーンにお邪魔したかのように薄暗かった。


 けれども、私の目と右手はパニック映画を二つ見つけてきた。どうも、自分の境遇に似ている映画を勝手に取ってきてしまうらしい。

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