第20話

 ここOUTLINEというゲーム世界に来てから、3年の年月が経った。その長い月日の中でも、いつも隣にいてくれる。いや、ずっと長谷則さんとは一緒だ。この先も将来も命が続く限り。未来が続く限り。ずっと……。


 去年から幸多田インダストリー社の支社での仕事も、サボりがちになってきた。あまり出勤していないのだ。欠勤の理由はプレイヤー達はなかなかこのゲーム世界にはやって来ないのだ。


 それも年に一回か二回の割合で、数人のグループが来たらラッキーな方だった。去年なんて、一回だけプレイヤー達は来たことがあるが、そのままこちらが何もしてないというのに、ゴールを見つけて帰って行ってしまった。プレイヤー達が来ても仕事にならない日もあるのだ。


「長谷則さん。ね、聞いてる? OUTLINEで釣りができそうよ」

「うん? え? そうかい」

「ほら、ここ」


 散歩をしていたのだが、新宿駅前でポスター掲示板の下に落ちていたパンフレットを長谷則さんと見ていた。


「ほんとだ。なんで今まで気がつかなかったんだろう。いいところ見つけたね。ねえ、そのお店。きっと、昔は割烹だったと思うんだよ。ここんところが、池だったんだ」

「ふーん……あ、でも。私には、そうは思えないんだけど」


 確かに、パンフレットに写っているお店。『ストレート・フィッシュ』は割烹か日本料理を作るお店か何かを改造したかのようだった。


 だが、『ストレート・フィッシュ』のような。日本人向けの釣り専門のお店が、庭に池と小橋がこじんまりと集中した作りだからと言って、割烹に似ているのだろうか?


 ホームから、どこからともなく電気の流れている電車に乗って、西新宿駅で降りた。


 長谷則さんが昔は割烹だったんだよ。と、言い張る『ストレート・フィッシュ』の暖簾をくぐり、誰もいない受付でお金を置いて、案内のない部屋へと歩いて行った。

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