第28話 みんなお見舞いに来てくれるのに推しキャラだけが来てくれません

 入院生活というものはもっと、暇なものだと思っていた。

 というのもあのスターダストインパクトに込められた魔法の力は詳しく調べたところ天体魔法に似た何か別のもので、それで受けた傷はユーリに出来る限り処置してもらったにしても治りきらず数日間から長くて数週間の入院を余儀なくされた。

 数週間も学校を休むのは気が引けたけど、壊れた校舎は修繕が必要なこと、あまりにも危険な事件が次々起こっていることからも一旦学園は休校として生徒達には自宅への帰宅を勧めていた。

 それでもまぁ、寮に残る人たちは少なからずいたみたいだけど。

 だから勉強とか交遊関係とかそっちのほうは取りあえず問題ない。

 そして暇だと思っていた入院生活も決して悪いものではなかったし、何よりもみんなのかけてくれる声や笑顔が私に元気をくれた。

 真っ先に来てくれたのはアベル。

 たわいのない会話をして帰っていったけど、皇太子という身分もあって忙しい筈なのに私相手にしっかりとお見舞いに来る辺りあいつはやっぱりこういうところはマメだなと思った。

 その次はシグナ。

 こいつに関しては来ないだろうなーって勝手に思っていた、もしくは来てもユーリと一緒とかそういう感じだろうなって考えていたけど実際のところシグナは一人でこの病室を訪れた。

 しかもご丁寧に果物のバスケットまで持ってきたからマジかーなんて思っていると顔に出ていたのか凄く機嫌は悪くなったけど、どれがいいか聞いて果物剥いてまでくれたから意外な一面は見れたような気がする。

 もうショゲナって弄るのは止めてあげよう。

 ショゲナって弄るのは、だけど。

 その次はアニが来て、お前も来るんかい!って突っ込みたかったけど善意を無下にするのは躊躇われたから口に出すことはしなかった。

 アニはよく頭が回るキャラで、ユーリ誘拐イベントの一抹を担った彼はやはり諸々に疑問を持ってはいたようで君は人生何周目かだったりする?とおふざけで聞かれた時は内心少し焦りはした。

 それから暇だったらまた来るねオバサンと言われて生前ですらまだオバサンなんて年じゃなかったわ!ともおもったけど前世と今世足したら余裕でオバサンだったからしっかりと事実として重んじて受け止めることにした。

 だけどその他大勢にオバサン呼ばわりされても一向に構わないけどユーリに言われたら傷付く自信はある。

 そしてララお姉さまも忙しい身の上なのにわざわざ会いに来てくれた。

 しかもお父様を引き連れてやってきたのには度肝を抜かされたけど。

 毎日来る、むしろ一緒に入院すると駄々をこねるお父様には一度立場と年齢を思い出してほしい。

 一緒にお父様を説得しようとララお姉さまに助けを求めたのにお父様の肩を持つものだからもう収集がつかない。

 そんな折にセリムが病室を訪れて、二人の分も自分が見ているからと半ば強引に説得して二人を早々に病室から閉め出してしまった。

 そうして二人きりになった病室でセリムは近くの椅子に腰かけるとしばらく黙っていて、私のほうから切り出さないとと考えていれば一言だけ、ごめん、次は守るからと呟いて、その後からはまったくいつものセリムに戻っていた。

 また大切なところでセリムに助けてもらう形になってしまったが、セリムと仲直り出来たことは何よりも嬉しかったのが事実だった。

 そんなこんなで約二週間の間に一人だったり何人か一緒にだったりで訪れる来客のおかげで私の病室は大変明かったけど、ひとつだけ、ずっと気になることがあった。

 そう、それは、ユーリが全くどころか一回もお見舞いに来てくれていないことだった。

 他の男達が来る度に私はユーリは?としつこく聞いたけど、みんなあーとかえっと、とか忙しいみたいだぞとしか言わないし、理由はどうにしろ泣かせてしまった事実がある以上もしかして嫌われた、とか、やっぱりどこか怪我をしていて無理してたのか、とか嫌なことばかり考えてしまってどうしようもなかった。

 そしてそんな悶々とした日々を過ごしていれば気付けば退院を次の日に控えるまでに身体のほうはすっかり回復してきていた。

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