第10話 サウア村の決戦

 雪が降り積もるサウア村。ヨーデは自ら作り出した妖人たちを見渡し、冷たく笑った。「フッ、村人ごときでは、この程度か」

 その視線の先には、亡骸の女性の前に立ち尽くす少女がいた。ヨーデは術をかけようと手をかざす。「……フッ、私が生き返らせてやろう」


 その瞬間、鋭い声が響いた。「やめろ!!」

 ルーシスが剣を抜き、ヨーデに立ちはだかる。「罪? 意味が分からないな。私は、救ってやろうとしているのに」

 ルーシスは睨み返す。「何が救うだ! お前は間違っている! 忘れたのか!? お前が言ったことを!!」

 ヨーデは微笑んだ。「忘れたな。そんな昔のことなど」


 ルーシスの目が光る。「お前は、隣にいる息子のことも忘れたと言うのか!! 私は忘れたことはない……そして、今度こそ終わらせる!!」

 その声に割って入ったのは、夢時だった。「勝手なこと言ってんじゃねぇーよ!」

 振り向くと、ロゼナ、アーサー、ニナ、そしてデュランが立っていた。


「何故、ここへ来た!?」ルーシスは夢時に問う。

「決まってんだろ、父さんに死んでほしくないからだ」夢時は前に立ち、剣を鞘から抜いた。「ここは俺に任せろ」

 魔王の姿に変わった夢時の前で、ニナは叫ぶ。「ラーナリアお姉ちゃん!!」妖人化した姉が微笑みかけるが、ニナは動けなかった。


「意識は妖人だ。しっかりしろ!」アーサーが言うが、ニナの心には姉の優しい姿が映り、動けない。


 そこへスエントが襲いかかる。

「ちょうどいい! 皆殺しにしてやる!」

 夢時は立ちはだかり、笑った。

「そうか? 俺にはお前が苦しそうに見えるぞ」


 スエントは力を誇示する。

「私は苦しくない。力を手にしたのだからな!!」

「力だけじゃ何も解決しない……」夢時は剣を握った。


 スエントは禍々しい球体を投げたが、夢時は剣で弾き返す。「この世界など、消え去ればいい!!」

 その瞬間、ヨーデの背後から神人が現れ、ヨーデを刺す。「我が名はアロージャ。お前の体を借りる」神人はスエントを突き刺した。「無に帰れ」


 夢時は目の前に立つレナリを見る。「玲那……」

 スエントは血を吐きながらニナに襲いかかる。「ニナ!!」アーサーが叫ぶ。

 しかしニナの姉、妖人化したラーナリアは身を挺してニナを守る。

「ニナは、殺させない……」スエントに刺され倒れる。


「ラーナリアお姉ちゃん!?」涙を流し駆け寄るニナに、ラーナリアはかすれた声で言う。「私達は本当の姉妹じゃない……でも、大切な妹であることは変わらない」


 ニナは抱きしめ、泣き叫ぶ。「お姉ちゃん!!」

 スエントは笑いながら見つめるが、ルーシスが立ち上がり、剣でスエントを刺して力を封じた。


「終わりにしよう」

「力が……抜けて……」スエントは絶句し、そのまま倒れた。


 神人に乗っ取られたヨーデは、まだ意識を保っていた。目の前には魔人化したロゼナが立つ。

「お父様……お母様は死んでしまったけれど、私は生きている。だからこれ以上誰も傷つけないで……」ロゼナのペンダントが光り、母メリアの力を発揮する。


「我らの力を跳ね返すとは……」神人は消え、ヨーデは元の人間、ヨシュに戻った。涙を流しロゼナを抱きしめる。

「ごめん、アリア……」


「父さんが元に戻って良かった。でも、忘れないで、大勢の人々を殺したことは……」ロゼナは涙を流す。

 夢時はレナリを見る。

「俺が決めたことだ。俺が玲那を――」走り出した瞬間、神人化したメリアと共に、複数の神人がレナリを囲む。


 夢時は動けず、レナリは手を挙げ、夢時の剣で自らを突き刺した。「……ごめんね……」

 夢時の頬に血が飛び、頭が真っ白になる。「こんなのありかよ……」右横腹に痛みが走り、振り向くとメリアがいた。


 倒れた夢時を前に、ロゼナは叫ぶ。

「夢時ーー!!」ルーシスも駆け寄る。

「夢時!!」

 ヨシュはスエントの冥界王の力を用い、神人たちの力を封じ、夢時に治癒術をかける。「力を貸せと言うことか。いいだろう」

 ルーシスは涙を流し、夢時は暗闇の中で意識を取り戻す。「あれ……俺は……死んだのか……」


 目を開けるとルーシスの顔があった。

「私が話そう」ルーシスはこれまでの経緯を語る。

 ロゼナはボロボロのヨシュの手を握り涙を流す。「全ては私の過ちだ……我が最愛の娘、アリア……」

 ヨシュの力は力尽き、手は頬から落ちる。ロゼナは泣き叫ぶ。「お父様!?」


 雪の舞う村で、夢時、ルーシス、ロゼナ、仲間たちは、傷つきながらも互いを守り、再び立ち上がる覚悟を固めた。

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