第5話
そして、それとほぼ同時期に王妃教育も始まり、マナーだけでなく国についての勉強。それ加えて、魔法についても勉強が始まった。
この頃には殿下の婚約者という事でドレスなどは新しい物を買ってもらえる様になっていたのだが、これはいわゆる父親なりの「見栄」だったのだろうとリリーは察していた。
それは殿下の婚約者の条件が「貴族であればいい」というかなり緩いものだったからに他ならない。
公爵家当主。いや、貴族としてはこの「王族と関りを持つ」という事がかなり重要な意味を持つ。
その為、少しでもつけ入る隙があれば……と考える輩は多い。
それに加えてエミル殿下はプライドが高く、見栄えもかなり気にするタイプだった事もあり、さすがに着古したドレスのままではまずいと思ったのだろう。
「……ふぅ」
そんな父親の考えがリリーにも分かってしまう時点でかなり考えだと浅はかだと思うが、エミル殿下は気づいていなかった様なので黙っておいた。
そうこうしている内に魔法学園に通う年齢になり、殿下と共に入学試験を難なく突破し、入学した。
「ふふふ、さすが私だ」
「はい、首席でご入学。おめでとうございます」
「しかし……お前と同点とはな。まぁ、私の婚約者としてよくやったのではないか?」
「……ありがとうございます」
これは照れ隠し……では決してないだろう。その証拠に、殿下はどことなく不貞腐れている様に見える。
そもそも、入学試験があるにも関わらず勉強を疎かにし、近づいてきたら「どうにかしろ」と殿下に命令され、勉強を教えたのだ。
試験本番は本来であればもっと点を取れたのだが、殿下よりも点を取ってしまうと機嫌が悪くなる事は分かり切っていたので手を抜いたつもりだったのだが……まさか同点になるとは思ってもいなかった。
そして魔法学園での生活が始まったのだが、授業自体はそう難しいとは感じなかったが課題は膨大で、そこに加えて定期テストや王妃教育も加わり、リリーは多忙を極めた。
しかも、最終学年には生徒会にも所属し、殿下は生徒会長。リリーは副会長になった事によりさらに多忙になってしまい、その頃には殿下とお茶会の時間を取る事も難しくなっていた。
そもそも、生徒会長にも関わらず殿下は生徒会の仕事をほとんどやらず、それに加えて書記や会計である生徒は殿下の腰巾着で、いつも殿下のご機嫌を窺っているだけで全然仕事をしない。
本当であれば「自分の仕事は責任を持ってするべき!」とでも言うべきところだろう。
「はぁ、なんで私が……」
何度そう思ったのか分からない。しかし、リリーがしなければ困るのは自分たちだけでなく他の生徒たちだ。
仕方がないので仕事をしないのでリリーが殿下たちに代わって生徒会の仕事をせざる負えなかった。
毎日そんな日々を送れば当然疲れもたまって来る。リリーの専属メイドであるアンナにも心配をかけてばかりの日々を送っていたそんなある日の事だった。
「えー、本当ですか?」
「ああ、いつも愛想笑いで可愛げもなければ何を考えているのか全く分からん」
学園の中庭から聞こえる可愛らしそうな女子生徒の声……と共に聞こえるのはエミル殿下の声。
「でもでも、本当に楽しいだけかも知れませんよ?」
「だとしても……だ。それならばそう言えば良いだろう? あれでは人形と変わらん」
立ち聞きなんてはしたない。そう頭では分かっていたが「二人が密会している」という事実を知り、リリーの中で「何か」がプツリと切れた様に感じた。
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