切ない。これは切ないな、と読後に想いを馳せることになりました。
主人公である『僕』はゲームセンターで一人の少女と出会う。彼女はクレーンゲームがうまくやれないのを見兼ね、あっさりと目当てのぬいぐるみをゲットしてくれる。
彩沙という、「サバサバした」という言葉が似あいそうな少女。彼女は同じ学校の生徒であるはずだが、なぜか登校してきていない。内気な性格の『僕』は、快活な性格の彩沙に引っ張られ、気づけば心を惹かれ始める。
ここからは、「甘酸っぱい青春の物語」が始まってくれるのではないか。思春期の男子ならば、そんな期待もしたくなります。
普段は学校に来ない彩沙。そんな彼女と触れあえる場所を見つけ、これから誰にも邪魔されない、二人だけの時間を送れるんじゃないか。
ラブコメ作品なら定番と言えるシチュエーション。でも、その後は「ある変化」が起きて。
彩沙の素性はどんなものだったか。彼女が学校に来なかったそもそもの理由。彼女の身にそれから起こったこと。
全ては想像するしかない。でも、掘り下げない方がいいのかもしれない。
どこに手を伸ばせば、「あの時間」の続きがあるのか。そんな掴みどころのない感情がひしひしと伝わってきました。
主人公がその寂しさの代わりに行う「ちょっとした儀式」。辿り着く場所のないそんな努力と心情に、ただただ切なさを感じさせられました。