大魔王の気持ち



連日、成人ハイに調子乗って飲み過ぎた。


起きたのはもうお昼。

夕方、静香さんと博多で会う約束してるからいい加減起きなきゃ。



普段使われていない私の部屋には、麻衣ちゃんの夏服が置いてあったり、お父さんのスーツが掛かっていたり、すっかり荷物部屋にされている。

ドラマや漫画みたいに「そのままにしているわよ」ウフフ、なんてことはなかった。


ひやっとする廊下、階段。

リビングのドアを開けると暖かいかと思いきや寒かった。


「あらスズちゃんゆっくりだったわね」

お母さん窓全開で掃除してた。

「お父さんは?」

「たぶん寒いから避難した」

コーヒーでも飲もうかと湯を沸かし、粉を探した。

「お母さんコーヒーど…」



え…



キッチンからリビングを見ると、その途中のダイニングテーブルの上に




「これ…」




「あ、それ?

 いるんじゃないの?」クスクス




あの時捨てたはずの




「なんで…?」




コアラにカンガルー


倉敷で買ってもらったバッグ


黒いワンピと一緒に買ってくれたコートやカーディガン



「捨てれなかったの、お母さんが」



クリスマスコフレにキラキラの防犯ブザー



スイッチにメモ帳に手帳




「捨てなくてよかったわ」




光輝の字が埋め尽くされた問題集





私はフラれた日、光輝にもらった物を全部廊下に投げ捨てたの。


いらないって泣いて。




「すずちゃん、一生懸命恋してたから」




お母さんが懐かしそうにコアラを撫でた。




「お母さん…ありがと…!」




お母さんはあの日


どんな気持ちでこれ拾ったのかな。



ふられた理由も知っていたのに




「お、懐かしいな」



「お父さん…」



「なんだ、泣くほど懐かしいか?」




「酷いこと言って…ごめんなさい…」




フラれた日、お父さんの気持ちを考える余裕なんてなかった。





「お父さんが光輝の事反対したのは…」





「もう昔のことだ」





「朝霧さんは日本に留まるような人材じゃ無い

 つらい思いをするのは

 まだ子供なすずちゃんだからって

 お父さんは言っていたのよ」




光輝と付き合うのを反対した理由は私のためだった。



そうとも知らず


考えもせず



お父さんなんか大嫌い


何度そう思ったかわからない




「お父さん…ありがとう……」




「ほらすずちゃん、帰る支度しないと」

「ん…」




「お母さんコーヒー」

「はいはい」




「お父さんお母さん…」





「今まで…ありがと……

 お父さんとお母さんの子供で…よかった…!」




そんな深い意味じゃ無くて

なんていうかほら

大魔王の優しさに今気づけて、成人式だったし気持ち盛り上がっただけなの。




「嫁にいくなど早すぎる…」ボソッ




「「は?」」




「お父さんは許さん」



「ちょっとお父さん」

「今更なに言うの!」




「大体朝霧くんはブツブツブツ」プンスカプンスカ




光輝ゴメン


ユイノウとかドレスがなんとか言って昨日は盛り上がってたのに




大魔王復活しそうです。





成人式編おしまい!

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ハニーミルクホイップましまし甘甘チョコレートかけ yuki @yukisb

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